世界の金融市場におけるビットコイン上場商品まとめ
今月9日、ロンドンを拠点とするETC Groupがドイツ・フランクフルト証券取引所に今月中に上場するとの報道がありました。アメリカでETFが実現しないことばかりが注目されがちですが、既存の金融市場において取引できるビットコイン上場商品はここ数年で急増しました。また、去年からGBTCやSquareにおけるビットコインの購入量が市場に大きな影響を与えているということがデータにも表れています。
今日は技術解説ではありませんが、自分がかなり詳しいと自負している、現存する世界の金融市場におけるビットコイン上場商品について見ていきましょう。
米国
アメリカの金融市場におけるビットコイン商品といえば、GBTCとCMEの先物がメインになります。
GBTCは、Grayscaleが提供するビットコイン上場投信で、NasdaqのOTC Markets(旧 PINK)という取引システムに上場しています。当初は1口あたり0.001BTCでしたが、管理手数料が年間2.0%引かれるため現在はおよそ0.00096BTCとなっています。保有する365,000BTCのカストディはCoinbase Custodyが担います。
個人投資家は二次市場で売買するしかありませんが、アメリカの機関投資家や適格投資家は最低$50,000相当以上かつ1年間は売却禁止という条件で直接ビットコイン現物を拠出してGBTCを新しく設定(発行)することができます。
新規に設定しても1年間は売却できず、またOTC市場は空売りが難しいため、GBTCの価格は原資産の価値から上方乖離しやすく、最近ではビットコイン現物より恒常的に10~25%程度高くなっています。2017年にはプレミアムが100%を超えたこともありました。
上記のことから、FidelityなどにGBTCを貸し付けるとある程度の利回りが得られる可能性があります。(Jameson Loppも1月にツイートしてました)
Interactive Brokers証券によると、GBTCのプレミアムが大変大きかった2017年夏にはGBTCの貸出金利は年8.1%で、貸し出されている口数が少ないことから実際に借りることは困難だったそうです。
CME先物は2017年12月に登場して界隈を賑わせた、シカゴ・マーカンタイル取引所における先物商品です。
現物決済でないので、CME先物の存在が現物の需要を減らしているという批判をよく目にしますが、決済時の参照価格が複数の取引所における現物の価格なので、CMEの先物が買われると「先物売り・現物買い」のアービトラージの機会が生まれ、ある程度は現物の需要に貢献しています。
5月に有名な投資家であるPaul Tudor Jonesが「ビットコインは70年代の金」などとして投資する可能性を示したとき、実際はCMEにおけるビットコイン先物を保有する可能性を指していました。CMEにおける流動性は高く、現在の未決済建玉もBitMEXよりやや少なく、Huobiと同程度の5億ドル程度あります。CMEだけでの市場操作は難しいため、価格発見機能に貢献しているとされ、データの信頼性も高いです。また、CME先物を原資産とするオプション取引もあります。
番外編として、ARKWというETFには小さな割合ですがGBTCが組み込まれています。今後も他にGBTCやCME先物が組み込まれたETFが生まれる可能性があります。
また、アメリカに限った話ではありませんが、適格投資家やファミリーオフィス、機関投資家は他にも仮想通貨系のヘッジファンドに投資している場合があり、規模がかなり大きいものもあります。例えば今日の報道で、Three Arrows CapitalというヘッジファンドがGBTCの6.26%、およそ$2.59億ドル相当を保有しているとされました。
ビットコインではありませんが、GBTCと同じくGrayscaleが提供するETHEというイーサリアム上場投信は最近は1000%近いプレミアムがついており、このプレミアムがETH現物の需要を引き起こしているという説が噂されますが、出来高は少ないので市場自体への影響はそれほど大きくないかもしれません。いくら証券口座や退職金口座で買えるとはいえ、10倍の値段(時価総額がビットコインを超える水準)で買うほどのメリットとは到底言えないでしょう。
単位が0.1ETHなので、プレミアムがNAVの10倍近いのは単純に単位が1ETHだと勘違いして買っている個人投資家がいるという可能性があります。
カナダ
The Bitcoin Fund (QBTC.U)は数千万ドル集めたパブリック・オファリングを経て今年4月にトロント証券取引所に上場したクローズドエンド型上場投資信託です。クローズドエンド型というのは、最初に存在する口数しか存在しない(新規に設定されることがない)ということなので、ある意味GBTC以上にプレミアムが収束しにくい仕組みですが、5月以降はGBTCより低い水準に落ち着いています。管理費用は年間で1.95%+1口あたり0.24米ドルです。
また、手数料を払えば原資産価格で払い戻すことができる仕組みになっているので、市場価値に下限があると考えることができます。
カストディはGeminiが担っています。
スイス
スイス証券取引所には、かなりの数の暗号資産ETPが上場しています。21Shares (旧 Amun)とWisdomtreeの2社が運用しています。管理費用が安く、プレミアムが無いのが特徴です。
21Shares Bitcoin ETP (ABTC)は昨年10月に上場しました。1口あたりおよそ0.005BTC、管理費用は年間1.49%で、Coinbase Custodyがカストディを担います。
ただ、おそらくドル建てなのにスイスフラン決済なのが少し使いづらく感じます。(自分が誤解してるようなら教えて下さい。)
Wisdomtree Bitcoin (BTCW)は1口当たりおよそ0.01BTC、管理費用は年間0.95%で、カストディはSwissquote BankがCoinbase Custodyと協力して担います。ABTCよりこっちのほうが出来高があります。
また、21Sharesはスイス証券取引所にインバース型のETPも上場させています。21Shares Short Bitcoin ETP (SBTC)は、21Sharesがビットコインをレンディング業者から毎日借りて売り、1日の終わりに買い戻して返却するという投資商品です。したがって、1日単位での損益はビットコインを1倍ショートしたのと同じになりますが、長期的には(1日の変動の積算になるので)異なります。
管理費用は年間2.5%で、これに加えてビットコインの借用金利を実費で引かれるので、かなり費用が高い商品となります。
スウェーデン
Coinshares傘下のXBT Providerという会社は2018年から複数の仮想通貨ETNを運営しています。Nasdaq Swedenに上場しているビットコインETNのBitcoin Tracker OneとBitcoin Tracker Euroはスウェーデンクローナ建てとユーロ建てですが、彼らの主張をトラストするなら両方合わせてビットコインは6億ドル相当保有しているそうです。
他の上場商品についてもトラストの件は同じでは?と思われがちですが、Bitcoin TrackerシリーズはETN(発行体の信用リスクを伴う、原則として裏付け資産のない債権)であり、要するにCoinshares相手の賭けという構造になっているからです。Coinsharesが万が一現物を持っていない状況で破綻すればゼロになります。
ETF Streamに掲載されているインタビューでは、構造上はETNだが実務上はETFと同様のプロセスでちゃんと100%現物で裏付けしていると主張しているので、過剰に回避する必要があるかはわかりません。(他のETPもちゃんと現物に裏付けられているか確認するのは難しいです)
ドイツ
21Sharesによるインバース型ビットコインETPはスイス証券取引所に上場する前にシュトゥットガルト取引所に上場していますが、少なくとも日本からアクセスできなさそうなので省略します。
また、今月話題になっているフランクフルト証券取引所に上場する商品であるBTCetc - Bitcoin Exchange Traded Crypto - (BTCE)は現物に裏付けされた商品で、1口あたり0.001BTC、管理費用は年間2.0%、カストディはBitGoが担うことになるとプレスリリースで発表されています。
日本から買えるのか
この記事で紹介した商品の多くは、日本で使える海外の証券会社にてオンラインで、もしくは海外株に強い日本の証券会社の店頭で買えます。実際に触りたい場合はトレードオフを参考にしてください。
また、プロ向けということになっている商品もあるので、必ずしも口座を作っただけで買えるとは限りません。(特に日本の証券会社からの取引は手数料が高いため、試していません。)
トレードオフ
個人が通常の金融市場でビットコイン商品を取引するメリットとして、ユーザー側のセキュリティリスクの削減、(日本など国によって)税制面での優遇、仮想通貨自体の知識や取引所の口座が不要なことなどがあります。
一方で、デメリットとしては:
・流動性が低い商品が多い
但し、常時マーケットメイカーがいる商品はスプレッドの0.5%程度を支払えば常にある程度の規模で取引ができるので意外と良心的とも言えます。
急変時はスプレッドが開いて数分間使い物になりませんので、長期投資向けと割り切りましょう
・取引時間が限られている
残念ながら24時間いつでも売買できる自由はないです
・保有中もカストディを任せるためカウンターパーティーリスクがある
カストディ業者が取引所よりマシかどうかは不透明でしょう。また、実際に100%現物に裏付けられているか確認する方法が現時点ではありません
・規制リスクがある
例えばCMEビットコイン先物は既に日本在住のトレーダーには提供できませんが、上記のような商品も規制対象となる可能性があります
・ハードフォーク対応方針などによって価格が乖離するリスク
自分の使っているカストディ事業者が自分と同じ対応方針とは限らない上に、フォークコインを受け取るかどうかや売却タイミングを決める自由はないです
まとめ
おそらく今年に入ってからのビットコインの需要のうち、金融商品としてのビットコインへの資金流入は小さくない割合だと思われます。流入した資金の数%が毎年管理手数料として入ってくるため、ビットコインETPは今後も増加していき、差別化のため様々な工夫がなされると考えられます。
当然これに伴ってビットコイン自体のステークホルダーの性質も変わっていくことになるので、両手を挙げて喜ぶべきことかはわかりませんが、興味はあるけど到底理解できず、セルフGOXしかねない親戚や友人などにビットコイン投資について聞かれたら、場合によってはこういうのを勧めるというのも優しさかもしれないなと思います。
(間違って変な草コインを買ったり詐欺に巻き込まれるリスクが減るのも証券口座で買うことのメリットかもしれませんね。クソ株もありますが…)
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