ライトニングノード運用代行サービスAmboss Railsはお得なのか?
先週の記事でライトニングのルーティングでこれまで考えられなかったような収益を上げている事業者がいることを紹介しました。もちろん、寝かせておけば勝手に増える性質のものではなく、戦略性とコミットメントがなければ勝てない分野であることは大前提ですが、ルーティングによるビットコインの運用が脚光を浴びているのも事実です。
そんな中、ライトニングネットワークのデータ可視化などを手掛けるAmboss.spaceがライトニングノードの運用を代行するAmboss Railsというサービスを発表しました。まだ先行登録の段階ですが、非公開のものを含め大量のデータを持つ彼らが提供するサービスに大きな関心が集まっています。

今日は公開されているAmboss Railsの詳細をもとに、批判的な視点でプロダクトとしての性質を見極めてみます。
・Ambossが提供できる価値とその対価
・得られるリターンはどれくらいか
・ノンカストディアルという表現は精査したい
Ambossが提供できる価値とその対価
Ambossはライトニング上の各ノードについてこれまでのチャネル開閉履歴、手数料の変更履歴をはじめとする様々なデータを取得してエクスプローラー(Space)の形で一般公開しているデータサイトです。
それ以外にもライトニング関連でプロダクトをいくつか持っています。中には以前紹介したことのあるAmboss Ghost Addressのように提供終了した実験的なものもあれば、チャネル開設の売買をするマーケットプレイスのMagma、物議を醸したコンプライアンスツールのReflexなどがあります。
それにとどまらず、参加するノードからよりプライベートなデータの提供を受ける仕組みも用意しています。ThunderHubというオープンソースのライトニングノード管理ツール内に、チャネルのバランス情報(残高の分布)をAmbossにアップロードする機能が実装されており、Ambossユーザーはデータを共有することで様々な分析を受け取ることができます。これはMagma AIというチャネル開設先レコメンドエンジンという形でも活用されています。
先週の記事でも触れたように、非公開のデータへのアクセスは情報の非対称性の最たるものの1つです。多くの非公開データを持っていて、それをもとにルーティングノード運用の判断を行えるAmbossが一般的なノードより有利なのは間違いないでしょう。そんなAmbossにノードの運用を委託したい気持ちもわかります。
Amboss Railsの募集要綱を見ると、金額は1 BTC~100 BTC、委託手数料は年間0.6%+月間$30とあります。運用内容に関しても、ユーザーがセルフホストしたライトニングノードにおいてAIのレコメンドに基づくチャネルの販売(リース)や送金の中継を自動化する、とあります。MagmaとMagma AIのレコメンドをさらに自動化させた、既存プロダクトの集大成のようなイメージでしょうか。
費用としては高くはないような印象があります。おそらくチャネルの販売(リース)がメインで、リースしたチャネル経由で実際に送金を受け取れるように他のAmboss Railsユーザーのノードからもチャネルが開設される(送金経路を作ってもらえる)イメージでしょうか。

得られるリターンはどれくらいか
さて、このスキームで期待されるリターンはどれくらいなのでしょうか?
Amboss自身はこれまで収集したデータを元に1~4%ほどをガイダンスとしていますが、もちろん保証しているわけではありません。これは確かに一般的なライトニングノード運用のパフォーマンスの数字と整合します。もし3.6%の粗利が得られて、そこから運用手数料0.6%が引かれるなら、ヘッジファンド等で一般的な80/20按分の手数料設定と同じになるので、そのあたりが想定している数字なのかもしれません。
ただし、Amboss Railsのようなノンカストディアルな仕組みでノードをたくさん立てるアプローチ自体が単一のノード運用と比べて非効率性をはらんだものなので、長い目で見るとより効率的な競争相手に敗れて収益性が低下するリスクがあります。また、そもそも多数の顧客を抱えたときに、どの顧客に「おいしいチャネル」を開設させるかの利益相反のような問題もありそうです。
類似のサービスが流行して流動性の供給が過剰になったときにネットワーク全体で収益性が低下することも想定されます。LNチャネルはうまく運用すればチャネル内資金の何倍もの送金を中継できます。したがって、リターンがどれくらい得られるかは未知数な部分があります。
ノンカストディアルという表現は精査したい
この記事ではここまで、Amboss Railsがノンカストディアルであるという主張について表面的に受け取っていますが、実際のところどうなのでしょうか?
まず、Amboss Railsではライトニングノードの運用を委託し自動化します。すなわち、チャネルの開設や閉鎖を行う必要があります。チャネルの開設や閉鎖だけの権限なら、実は問題ありません。(オンチェーンやライトニング上で送金できない権限をAmbossに渡しても、Ambossに悪意があっても資金を盗むことは困難です)
しかし、もし運用の一環としてチャネルのリバランスを行う場合は話が違います。リバランスには何通りか方法がありますが、一般的なのは以下の3つです:
1.スワップサービスを利用したリバランス(BoltzなどでLN↔オンチェーン間の交換、PeerswapでBTC↔Liquid BTC間の交換など)
2.自身の持つローカルバランス過多のチャネルから出て、最後に自身の持つリモートバランス過多のチャネルを経由した自分宛てへの送金(Circular Rebalanceといいます)
3.チャネルごとの手数料の調整、チャネルの開閉
もし1か2を行う場合はライトニングで送金する権限やリバランス先のビットコインアドレスの指定をAmboss渡す必要があり、それはノンカストディアルとは言えないと考えます。もしRailsが33のみを使ってリバランスするのであれば確かにノンカストディアルに実行できるかもしれませんが、選択肢が限られていることによって若干不利を強いられますが、その場合はノンカストディアルと表現できるかもしれません。
もし1や2が実行できる権限を渡しているなら、ウェブサイト上の表記にある「Access Yield on Bitcoin Without Giving Up Control」はちょっと不誠実な気がします。現にノードのコントロールをAmbossに渡すものなのですから。
評価したいのは、ユーザーがルーティングノードから引き出すことはいつでもできるという点でしょうか。
まとめ
・Amboss Railsはライトニングノードの運用をAmbossに自動化してもらうプロダクトで、主に既存プロダクトであるMagma・Magma AIの機能を利用したものと考えられる。Ambossが集めている多量のデータを元にしたレコメンド機能が肝となる。
・Magmaのチャネルリースの相場を見ていると、年1~4%ほどというAmboss側の期待リターンについてのガイダンスは妥当に見える。年間の運用代行費が残高の0.6%なのは成功報酬20%くらいを想定して設定した金額かもしれない。
・ノンカストディアルと表記されているが、具体的な仕組みは未公表。ノンカストディアルに運用代行すること自体は可能と考えられるが、運用に使えるテクニックが限られるため自力運用やカストディ型の運用と比べると不利を強いられることが予想される。また、そもそものコンセプト(多数のノードを運用代行)自体も非効率的ではある。
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