さてビットコインを中心にマーケットがまた大きく盛り上がり始めていますが、そうすると同時に、似たようなビットコインに関する批判を繰り返し見ることも増えます。個人的に直接そのような質問をされることもありますし、よくわからない批判や勘違い理論を言う人がSNSなどでも増えますね。
正直そういうものに対して毎回つっこむのも面倒なのですが、Fidelityがこの件に関して中々よくまとまった回答記事みたいなものを書いていたので、それをベースにビットコインに関するよくある勘違いとそれへの反論/回答をまとめておきます。Fidelityの記事↓https://www.fidelitydigitalassets.com/.../addressing...

ビットコインは価格が不安定過ぎてSOVにはなれない

価格が安定してないので使えない、という批判は長く存在しますね。それに対する回答としては、
・ビットコインの価格の不安定性は、外部からの介入への耐性を保つための固定供給スケジュールとのトレードオフである

・なので自由に供給を調整できる法定通貨などと比べて、市場価格が安定しないのは設計やコンセプト上ある程度は仕方ない部分がある(批判は一部正当であるといえる)

・ただし、ビットコインのボラティリティは歴史的にすでに下がってきており、今後保有者の多様化、市場規模が増加していくにつれ、さらに下がっていく可能性が高い

・また、確かにボラティリティは高いかもしれないが、ボラティリティは基本的に上昇方向のボラティリティ(Fiatに対してのビットコイン高)であり、Fiatに対してビットコインは長期的に価値を上げていくシナリオを描いている限り、価値の保存先として有用である

ビットコインは実需がない

これはなぜか特に日本で良く見ることが多い批判?の一つと思います。ビットコインはトレード用のアセットとしての価値しかない、とか、アプリケーションが作れないから実需がないとか、そもそも「実需」とは何だと思ってるんですか?とつっこみたいことが多いのですが、それに対する回答としては、

・Fiatの価値下落に対する「価値の保存」(SoV)というのは非常に大きなユースケース(実需)と言える。

・仮にビットコインが存在せず、他のコインしかなかったら、Fiat通貨の価値下落に対して希少性や不変性を確実に維持できると断言できるものは存在しない。つまり、SoVはビットコインにしか提供できない重要な需要であり、その点ではビットコインが何より大きな「実需」を持っている

・また、例えばイーサリアムのようにブロックチェーン上でアプリケーションを構築できることを「実需」があるというが、DeFiやICOなども含めてそれは広義のギャンブル/投機需要で、ビットコインは投機的価値しかない、という批判とそもそも矛盾している

・もしアプリケーションの構築などを志向する場合、それはLightning Network上での実用的なアプリケーション層などがすでに少しづつ構築されつつある


ビットコインは支払い手段として失敗した

これはビットコインキャッシュの支持派などが長く批判していたことですね。興味深いことに失敗/崩壊したのはむしろ結局ビットコインキャッシュの方だったのですが、確かに初期に期待されていたビットコインの支払い手段としての利用は、あまり普及していないのも事実と言えると思います。また、ビットコイン、特にオンチェーンの処理性能は秒間最大7txまでとよく言われており、Visaなどと比べてスケーラビリティの不足を指摘する人もいます
それに対する回答は、

・そもそもビットコインは元々店舗決済の為に適した設計になっておらず、支払い手段として使われているかどうかが必ずしも重要な焦点ではない(SoVとしての信頼度の方が当面は重要)

・ビットコインのオンチェーンの処理性能の不足は、ベースレイヤーを最大限分散化し、シンプルで強固なものとして維持するのに必要な意識的なトレードオフである

・処理性能についてはベースレイヤーではなく、セカンドレイヤー技術、特にLightning Networkなどが課題を解決していくだろう(単純な処理性能で集権的なVisaなどを超える可能性もある)

・ビットコインが支払いとして上手く機能するのは、イメージしやすい店舗での決済やECサイトでの利用ではなく、国際送金の一部や今まで存在してなかった領域でのマイクロペイメントのやりとりになるだろう(つまり、今すでに存在している市場の支払い手段の置き換えを想定するのがそもそも間違い)

ビットコインのマイニングは無駄だ

これも非常によく聞く批判ですね。特にこういう批判は一般の人だけでなく、業界内で今もよく聞く論調の一つではあります。ビットコインのProof of Workのマイニングは無駄が多いから、Proof of Stakeの方が優れている/エコだ、とか、ビットコインのマイニングの無駄を減らす別のアルゴリズムを考えるべきだ、などです。何か聞こえはいいんですが、非常に短絡的な批判だと個人的には思います。
回答
・CoinSharesのリサーチによれば、ビットコインのマイニングの70%以上がはすでに水力などの自然エネルギーなどで賄われている。つまりビットコインのマイニング⇒電力の消費⇒二酸化炭素の排出⇒環境破壊のようなイメージはそもそも明確に間違いである

・他にもStranded Gasなど今まで無駄になっていたエネルギーをビットコインで再利用するようなトレンドもあり、ビットコインマイニング=環境破壊という単純な図式ではない

・一方、ビットコインのネットワークが常に大量のエネルギーの利用を必要とし続けるのは事実ではある。ただし、そのエネルギーを利用して、分散化されたデジタル上の希少なアセットネットワーク(ビットコイン)を実現するのは使用するエネルギーに対してベネフィットの方が大きいと主張することができる

・反対に、法定通貨の価格安定とシステムを維持するのに、中央銀行、銀行、納税、軍事力、政治などビットコインよりむしろより大量のリソースやエネルギーを消費しているわけで、エネルギー転換効率という点では、ビットコインの方がより効率よく安上がりに機能的なグローバル貨幣ネットワークを実現しているとも言える

・また、ビットコインはエネルギーを「無駄」にしていると批判できる一方、MicroStrategy社の社長のSaylorなども主張するように、「ビットコインは純粋な貨幣エネルギーネットワーク」であるという視点も興味深い。つまりマイニングの仕組みは無駄ではなく、エネルギーという不変的に真に希少な資源をデジタルネットワーク上で保存。移転可能な形に変換するプロセスである、という主張もある。つまりビットコインはある意味「エネルギーを詰めた電池」のネットワークのようなもので、エネルギーは無駄になっているというよりは、単純に違う形に変換されているだけ、という見方。

ビットコインは違法な用途で使われる

これもずっと前から言われ続けていることの一つですね。ビットコインはマネロンに使われるとか、違法薬物の売買に使われるから良くない、という主張ですね。正直に言えばこれに関しては色んなところですでに論破されているのですが、それでもよくやり玉に上がるのは単に金融端の人のポジトークでしかないのでは、と思っています。
回答
・ビットコインのオンチェーンの匿名性は一般に考えられるほど高くなく誰でも参照可能で、違法な利用は一般的な銀行や現金を利用したものの方が追跡しづらいことが多い

・ブロックチェーン解析企業の調査によれば、ビットコインの違法な利用や悪用は全体の1%ほどという試算が出ている

・また、すでにマネロンや違法な用途での推定金額調査は複数出ており、ビットコインの違法な利用の全体での割合は非常に小さい。大部分はやはりドルなどの現金を使ったものである(だが、だから現金が悪い、という人はいない)

・一方今後ビットコインの匿名技術が発展していくことで、違法な利用の割合は増えるかもしれない(増えるがそもそも何が起きているか見づらくなるので、追跡が困難になる可能性)

ビットコインには裏付けがない

もしかしたらこれは最もよく聞く批判かもしれません。正直裏付けがないと言われると、そもそも何か物理的な裏付け資産などが貨幣には必要なのか?という質問を自分は返したくなってしまうのですが、業界外の一般の人からよく言われることが多いでしょう。

回答

・そもそも裏付けがないことを批判する人たちは、その他の資産も何か明確な裏付けが必ずしもないことを見落としている気がする。

・例えばゴールドには産業利用の価値がある、という反論があるが、ゴールドの産業利用は全体の7%程度の価値しかなく、ゴールドの価値の大部分はSoVとしての歴史や「信頼感」というだけで、何か明確な裏付けや実態があるわけでもない

・一方Fiat通貨の価値は、単純に言えば政府の信頼度や徴税、軍事能力、国の運営能力などにより裏付けがあると言えるが、これも「政府や中央銀行への信頼」ということで、最終的には「信頼」という曖昧なもので何か明確な裏付けがあるとも言えない。そして世界の多くの国ではこの政府の信頼という裏付けは機能していない(ベネズエラやアルゼンチンなど)し、日本などの先進国ではこの信頼が濫用されて通貨の大量発行などが進行している。

・そう考えると、ビットコインには裏付けがないからダメだ、という批判は、その他の価値を認められている資産や法定通貨にも似たような主張が出来る。また、単純に実績や歴史の問題を指摘しているのであれば、ビットコインも今後長く実績を積んで行けば、裏付けがないから価値がない、という主張自体消えていく可能性が高い

・一方、具体的にビットコインの価値の裏付けや源泉になるものは何か、と言えば、上記すでに説明した通り、マイニングというエネルギーを変換させるプロセスと消費したエネルギーの価値の裏付け、またFiatと相反する「政府への不信感」である、と自分は思っている。アルゼンチンなどFiatが機能していない大部分の国では、ビットコインのような政府への信頼に基づかない貨幣システムは、それだけで需要/裏付けが存在すると言える。

ビットコインは仮想通貨界隈の「マイスペース」で、より新しいコインとの競争で負ける

これも業界外の人だけではなく、業界内の人もまことしやかに言うことの一つです。

それへの回答としては、
・ビットコインは仮想通貨の中で最大のネットワーク効果を誇っており、むしろその効果は最近の企業のビットコインの購入トレンドなどもありどんどん強化されていっている

・技術をコピーするのは簡単だが、上記のネットワーク効果や文化、ネームブランド、ユーザー、マイナー、企業、開発者が構成する絶妙なバランスの上での強固さを再現することは非常に難しい

・ビットコイン以外の新しいコインやネットワークはそもそも分散性、希少性の維持などの点でビットコインとは比べ物にならず、SoVとしてそもそも適切な比較対象になっていない(別物と言える)