次期日銀総裁候補が考える暗号資産・FinTechの将来について調べてみた
現在の日銀総裁の黒田東彦氏は2023年4月8日で任期が終了し、続投はしないと明言されております(日経新聞記事2022/11/10)。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB102N30Q2A111C2000000/
前任の白川方明総裁は、任期終了の一か月前に退任していました。これは副総裁2名の任期が3月中に切れるからだそうです。今回もそうなるかもしれません。
コラム執筆時点ではまだ退任前ではありますのですが、すでに次の総裁候補という方が報道されております。過去の発言について、特に暗号資産や金融とテクノロジー全般の将来について、どのようなお考えをお持ちなのかを調べようと思います。
黒田総裁は2期で10年総裁をつとめられました。日銀総裁の考え方だけですべて決まるわけではないですが、向こう10年くらいの大まかな雰囲気がわかるかもしれないということですね。先走り過ぎているような気もしますが、就任前からやってしまおうと思います。
さて、候補者としてとりあえず今回は2名に注目しました。
1人は、日銀の現副総裁の雨宮正佳氏です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/雨宮正佳
もう一人は、前副総裁の中曽宏氏です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/中曽宏
彼ら2名は、岸田政権において重要な側近として知られる木原誠二官房副長官が候補者の一角とみているそうです。12月はじめの頃、Bloombergとのインタビューで明らかにしていました。
両名について過去の暗号資産に関する意見を調べ、それらについて筆者が独断と偏見でまとめたものです。

中曾氏
中曾氏は2016年に東大・日銀共催のカンファレンスで講演を行っています。
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2016/ko161118a.htm
そのカンファレンスのテーマは「フィンテックと貨幣の将来像」というテーマでしたので、それに沿った講演内容となっています。
2016年時点で、中曾氏は次のように述べていました。
中央銀行の性格を踏まえれば、ブロックチェーンや分散型元帳といった新しい分散型の技術が、中央銀行や通貨にどのような影響を及ぼすのかという関心が出てくることは当然といえます。このような関心は、「仮にビットコインのような仮想通貨が大きく拡大したらどうなるのか」といった具体的な質問にも繋がっています。
つまり、非常に関心があったようです。さらに、
このように考えていくと、十分に信頼された集中型のシステムと、ニーズや用途に応じて導入された分散型のシステムが共存していくことは十分可能であるし、また望ましいと考えられます。
といったように、分散型金融に対して受容的な態度に見えます。
ところが、2019年の講演(2019年11月19日110周年記念東短経済セミナー)の講演内容とPPT資料を見たところ、暗号資産に関することが出てきません。代わりに北欧スウェーデンのキャッシュレス化、銀行システムのオープンAPI化に興味関心が高まっているようでした。
雨宮氏
雨宮氏は2019年に日本金融学会の特別講演を行っています。日銀にその際の発表資料がありました。講演タイトルは「マネーの将来」でした。
そこで雨宮氏は暗号資産について次のような発言がありました。
第一に、発行者を持たず、ソブリン通貨単位を用いない暗号資産が、信用と使い勝手を備えたソブリン通貨を凌駕する形で、支払決済に広く使われていく可能性は低いように思います。
<中略>
暗号資産は、信用をゼロから築き上げるために、取引の検証 ― マイニング ― のための膨大な計算や、これに伴う大量の電力消費などのコストがかかります。このような制約を持つ暗号資産が支払決済に広く使われていく上でのハードルは、相当高いように思われます。現在、暗号資産が日常の支払決済手段としては殆ど使われず、専ら投機的な投資の対象となっている姿も、このことを裏付けているように思います。
以上のように、暗号資産が通貨として利用されるかについては非常に否定的でした。
一方でキャッシュレス化については進展していくとみており、中曾氏と同様、関心は多くあるようでした。一方、中央銀行が発行する、いわゆるデジタル通貨については、金融政策にどのような影響を及ぼすかを研究する必要があると考えているようです。
また、中央銀行が、現金の代替にとどまらず、預金まで代替し得るような汎用性の高いデジタル通貨を発行することについては、これが金融安定や金融仲介に及ぼす影響について、慎重な検討が必要です。
中曾氏より、雨宮氏のほうが少しテクノロジーの導入に対して慎重な姿勢なのかなという印象を受けました。
まとめ
次期日銀総裁は、ビットコインをはじめとする暗号資産の通貨として利用については、それほどポジティブな印象を持っていないように感じました。
逆に、中央銀行が発行するデジタル通貨やキャッシュレス化に関心が集中しています。
2016年から欧州中央銀行と推進している「Project Stella」が背景にあり、分散型の技術自体には研究を行う姿勢があるようです。
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