ビットコインとプライバシーの基本
ビットコインは、ブロックチェーンが誰にでも見えるためにチェーン解析による追跡が可能です。個々のコインの移動を追うだけでなく、クラスタリングといって特定の特徴をもったトランザクションを統計的に見ていくことで、真の保有者を明らかにしたり、アドレスとアドレスの関係性を暴いたりといった手法もあります。
一方で、Zcashや、Moneroなどの匿名性をプロトコルに直接ビルトインしたコインが開発されましたが、匿名性が仇となって日本の取引所では扱えないなど、広がりに難点があります。
という背景がある上で、現在の開発者のプライバシーに関する考えというのは、「ビットコインには最終的にプライバシーが必要である」
というものだといえます。となると、規制などとの落とし所はどこになるのでしょうか?
現在は、3つの策が中心になっています。
1. ライトニングネットワーク
ライトニングネットワークの送金は、全体を記録するような機構はなく、当事者同士でのデータやり取りによってのみ残高を管理しています。そのため、送金が行われても第三者がそれをモニターするということは難しいでしょう。仮にチャネルの精算が行われても、得られる情報は精算後の残高であり、その間に何処とどのような送金が行われたかを知る由はありません。
"ライトニングの中継ノードは送金の内容を検閲できてしまう" という主張がよくありますが、正しくもあり間違ってもいます。正確には自分が中継した前後だけはわかるが、そもそも他人が中継したものはわかりようがないし、また中継が2つのノードを経由する場合、次のノードより先に関しては情報を得られません。全てのライトニング中継を検閲することは不可能です。
つまり、ライトニングはプライバシーに優れた支払い方法であるといえます。
もともと少額支払いのための技術です。コーヒー1杯300円の支払いといったものに対して、マネーロンダリングだとかそういう追及をしてもしかたなので、ライトニングであればプライバシーを認めてもOKというのは合理性があります。
2. サイドチェーン
次は、サイドチェーンです。サイドチェーンでは、本物のビットコインをペグという技術により、別のブロックチェーンに移すことができます。Liquidは代表的なサイドチェーンです。
Liquidは加盟20社以上の取引所が共同運営するコンソーシアム型のコンセンサスチェーンです。このチェーン上では、送った数量を完全に秘匿するトランザクションを使うことができます。取引所間の業務送金をサポートするにあたり、その内容(数量)がバレてしまうと使いにくい。そこでこうしたプライバシーが配慮されています。
こうしたサイドチェーンでは仮に大きな問題が起きたとしても、ビットコインの本体チェーンには影響をあたえません。サイドチェーンの運営が失敗し、チェーンが運営停止ということに仮になったとしても、ビットコイン本体に影響はおよばないのです。いわゆるサンドボックス的にチェーンの利用者のニーズにあわせてプライバシーの度合いを設定することができるといえましょう。
3. シュノア署名+Taproot
1と2はいわゆるセカンドレイヤーでの話しでした。3は本体でのアップデートの話になります。
現在開発が最終段階にあるシュノア署名とTaprootでは、トランザクションの見た目をすべて統一できるというプライバシーが実現されます。数量やアドレスといったものはいままで通りに見えますが、フォーマットが同じにみえます。
送金のタイプというのはいろいろあります。たとえば、マルチシグによって複数のひとが署名するようなものからの送金であったり、またはライトニングのチャネルの開閉であったり、または他のチェーンのコインとの交換(アトミックスワップ)の結果だったりです。
現在ではアウトプットの情報から、そのトランザクションで何が行われたかについて多くを知ることが可能です。
シュノア署名+Taproot形式では、異なるタイプのトランザクションを、見た目では識別できなくなります。これにより、いわゆるクラスタリングなどの手法で、トランザクションの特徴からプライバシーを詮索する手法が使いづらくなります。実に地味な改良ではありますが、ブロックチェーンの公明正大さをたもちつつ、開示部分を可能な限り少なくするという点で、優れたプライバシー方策といえます。
結論
ビットコインのプライバシー確保は、これひとつですべて行うというものはなく、複数の方法をとりいれています。またダイレクトに数量やアドレスを秘匿するものではありません。
基本はライトニングやサイドチェーンといったレイヤー2技術によって、ビットコイン本体に影響を与えることなく、当事者同士で必要なプライバシーを確保するという設計です。
一方で本体チェーンにおいては、トランザクションの見た目を同じにする技術により、公明正大さとプライバシーの開示の妥協点を探っています。(大石)
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