もうすぐビットコインは半減期を迎えますね。北米の現物ETFが認可されてから強気な相場が続いています。

本記事では、ビットコインマイニング会社のヘッジ売りポジションの解消が、ビットコインの価格上昇を加速させる可能性について考察します。

※ あくまでも個人的な観測に基づく記事ですので、くれぐれも考え方の参考程度にとどめておいてくださいね。

それでは、さっそく行ってみましょう!

5万ドルあたりからヘッジ売りが解消され始めている

ヘッジ売りとは、将来採掘される予定のビットコインの一部を、マイニング会社が先物市場で先に売却しておくことを指します。

ビットコインは価格の変動が大きいため、下落に振れると会社の収益は大きく減ってしまいます。

そこで、現在の価格で将来の販売量の一部を先物契約で売り、将来の価格下落リスクを和らげるんですね。

このような活動をとおして、マイニング会社は安定した収益の確保を目指します。

ところが北米でビットコインのETFが認可されたあたりから、このヘッジで建てられたポジションの一部が解消され始めているようなのです。

↑ 図①;マイニング業者と思われるヘッジ売りは35,000で建てられ、5万ドル~6万ドルで解消され始めている(2024年3月18日トレード通信から)

なぜいまヘッジ売りが解消されているのでしょう?先に筆者が考えている結論を書いてしまいますね。

北米でETFが認可されたことでビットコインへの資金流入が加速する一方、ヘッジ玉を抱えているマイニング会社の株価は低迷を続けています。

株主にしてみれば、ヘッジ売りの存在さえなければ、ビットコイン価格の上昇で株価もウハウハになっているはずの状況です。

そこで株主たちは、マイニング会社が抱えるヘッジ玉保有への解消圧力を強め、徐々に買戻しが始まり、ビットコインの上昇に寄与していく可能性がある・・・ということを考えています。

どこかで聞いたことがあると思われた方は、鋭いです。実はこれ、過去にゴールド市場で起きたことなんです。

2004年にゴールドは、現物ETFであるスパイダー社のGLDが認可されます。新しい資金の流入はゴールドを力強く上昇させ、ヘッジ玉を抱えた産金会社の株価はゴールドに対してアンダーパフォームすることとなりました。

そこで株主たちは、産金会社が保有しているヘッジ売りポジションの巻き戻しを迫ります。結果として買い戻しは実行され、ゴールドは壮大な価格上昇を演じることとなりました。

これについては、以下の記事に詳しいので、一読をおすすめします。

金相場の過去の歴史(池水雄一氏)

振り返ってビットコインを見てみれば、原資産は現物ETFの認可で価格上昇をする一方で、マイニング会社の株価はビットコインに対してアンダーパフォームを続けています。

なにやら当時のゴールド市場と、そっくりですね。

ではここからは、具体的に今のビットコイン市場が抱えている、ヘッジ玉の買戻し圧力を見ていくことにしましょう。

ゴールドで起きた買戻しの規模はどれほど?

まずビットコインに進む前に、ゴールドの産金会社が株主圧力で買い戻したヘッジ玉の推移を確認していきましょう。

以下は、株主向けの報告書であるForm 10-Kから、人工知能の力を借りて情報を抜き出してみたものです。

↑図②;主要な産金会社の売りヘッジ玉の残高推移(Claude 集計データをもとに筆者作成)

これを見ると、現物型のETFが投入される2年ほど前から、ゴールド市場ではヘッジ玉の買戻しが始まっていることがわかります。

これ、実は2002年に会計ルールの変更があったんですね。

EUが新たに設置した国際財務報告基準(IFRS)という規制があり、産金会社も新しく複雑で面倒な規制に準拠する必要が出てきました。

規制の要件を満たせない場合には、ヘッジ手段の価値変動を損益計算書に計上しなければならなくなったのです。

こうなると含み益・含み損まで都度で損益計算に計上することになるため、業績の変動率が高くなってしまいます。

さらに財務報告の規制で、保有するヘッジ玉の損益がガラス張りになってしまいます。すると株主やアナリストから、「その儲からないヘッジ玉は解消せいや」と言われてしまいます。

結果、株主には責められるわ、損益の安定には使えないわで、2007年から2010年の間に主要な産金会社は「もうヘッジ辞めますわ」とアナウンスを出し、ヘッジ玉は完全に解消されることとなりました。

この間、つまりゴールドの現物ETFが認可されてから、産金会社が売りポジションを回収し終わる2010年末までの価格推移は、、、

430ドルから1,415ドル近辺まで約1,000ドルの上昇となっています!

↑図③;ETF認可から産金会社のヘッジ玉回収で価格が激しく上昇したゴールド

産金会社が最大にヘッジ玉を積んでいたのは、2001年の3,400万オンスとなります。これがどのくらいの規模かというと、、、

大手3社が2021年に産出したゴールドの合計量は、1,280万オンスです。つまりヘッジ玉は鉱山会社の2年以上にわたる生産予定量に匹敵するほど積まれていたことになります。

そりゃ激しい上昇にもなりますね。

ビットコイン・マイニング会社のヘッジ玉が巻き戻されたら?

さてゴールド市場の振り返りはこのくらいにして、ビットコインのマイニング会社が保有しているヘッジ玉の規模を確認しておきましょう。

公開情報は限られているため、あくまで推計であること、また単位も50の倍数とざっくりしていることを、ご了承ください。

↑図④;ビットコイン・マイニング各社によるヘッジ玉の推定値(Claude 集計データをもとに筆者作成)

あくまで推定値ではありますが、、、2023年の時点で12,250ビットコインの売り残高が積み上げられています。これが買い戻されたときの影響は、どの程度なのでしょう?

仮にCMEの先物市場で考えるなら、12,250ビットコインは先物契約2,450枚にあたります。

参考までに、マイナーも含まれる商業筋が持ち高を2,500枚を減らした時のチャートを掲載してみます。

↑図⑤; 商業筋(マイナーを含む)が売り残高を2,500枚減らした時のビットコイン値動き

値段だけを見るのであれば、26,000ドル → 43,000ドルへと、およそ7割の上昇効果ですから、大したことはないようにも見えます。

でも、やはりマイナーの買戻しは市場への影響が強いんですよね。

逆を考えるとわかりやすいのですが、投機市場の参加者が買ってきたところで、結局はペーパーマネーです。今の買い圧力は将来の売り圧力でしかなく、ゼロサムです。

ところがマイナーの買戻しは違います。過去に売っている契約を買い戻して「終わり」にするわけですから、その「買い」圧力は一方通行となります。

だから、マイナーが買い戻した後は反動による売り圧力がなく、新規資金が入ってきたときには売り手不在となってしまいます。結果的に今回は、7万ドルまでぶっ飛んで行きました。

ビットコインには、まだ強力かつ潜在的な買戻し圧力が積まれていることは、知っておいてよいかもしれません。

半減期ボーナスが終わっても下がらない??

ところで半減期を翌月に控えたいま、市場参加者のの共通認識は、こんな感じではないでしょうか?

「ビットコインは半減期を挟んで前後1年くらいは上がるよね。でも、その期間が終わったら崩れ落ちるから、保有している現物も、2025年の3月までには全量売却してしまおう」

相場って、全員が同じことを織り込んでしまうと、もう「そう」ならないんですよね。

2025年にマイニング会社がヘッジ売りを巻き戻し始めることになれば、終わるはずの上昇相場も下支えされてしまい、また新たな資金を呼び込んでしまうかもしれません。

値段のことは分からないですが、それでも今の市場は、下の条件を当然のものと考えています。

  • マイニング会社はデリバティブを使ってヘッジ売りをする
  • ビットコインは半減期ボーナス期終了後に下がる 

もし市場が「これら」を常識と認識してしまっているなら、そこからは適切な距離をとっておくという選択肢も、残しておきたいですね。

ということで、今回の記事では「ビットコインマイニング会社のヘッジ売りポジションの解消が、今後のビットコイン価格に大きな影響を与える可能性がある」について考察してみました。

今週は以上です。引き続き、ハッピー・ビットコイン!

ココスタ

佐々木徹