皆さんはご自身のビットコインノード、ライトニングノードを持っていらっしゃるでしょうか。ノードの管理や、ビットコイン関連の様々なオープンソースソフトウェアの利用は敷居が高いイメージがあるかもしれません。しかし、そこにUmbrelというソリューションが昨年の夏頃に登場し、急速に人気を集めています。今日はUmbrelについての紹介と、業界にどのような影響を与える可能性があるかについて触れていきます。Umbrel: https://getumbrel.com/

UMBRELとは

Umbrelはラズベリーパイや古いPC、NUCなどに簡単にインストールできる、ビットコインノードとライトニングノードおよび周辺機能をまとめたソフトウェアです。Umbrel自体もオープンソースで無料なので、必要なのは動かすためのハードウェア (PCやラズベリーパイなど)だけです。UIがわかりやすく、設定が一箇所にまとまっているUmbrelを使うことで、ユーザーはビットコインウォレットを自分自身のノードに接続して使ったり、ノンカストディアルなライトニングウォレットを使用することがこれまで以上に簡単にできます。また、Umbrelはすべての接続にTorを使用するため、外部からの接続を受け入れるために難しいネットワークの設定も特に必要ありません。これは個人的に高評価です。

Torについては対検閲性やプライバシーの文脈で今後の普及に期待しています。余談になるのでまた機会があれば話したいと思っています。

私自身は最近までUmbrelを使っていませんでしたが、後述するUmbrel App Storeにアプリを公開したいので、遅ればせながら使いはじめました。UIが本当に明快なので、その人気に納得してしまいます。ちなみにラズベリーパイを購入してノードの使う人が多いようで、セットアップもかなり単純化されているため、ラズベリーパイなどを触った経験がなくてもハードルは低いでしょう。ただし注意点として、ブロックチェーンデータもTor経由でダウンロードするため、デバイスのスペックに関わらずビットコインノードの初回同期にはけっこうな時間がかかります。ラズベリーパイなら非力なのでなおさらです。気長に待ちましょう。

※Umbrelは主に家庭のネットワークで動かす前提で作られているため、クラウドやVPS上で動かすとセキュリティ上問題があるかもしれませんのでご注意ください。また、自宅ネットワークのアクセス管理はしっかりしましょう。
UMBREL APP STORE

さて、Umbrelの一番の目玉機能はUmbrel App Storeだと私は思います。App Storeとはいっても、掲載されているアプリはすべて無料でオープンソースのものなので、ユーザーからすればオプション機能をインストールするようなイメージです。インストールボタンを押すだけで導入でき、特に難しい設定などが必要ない点が素晴らしいです。現在入れられるアプリで代表的なものをいくつか挙げると:・BTCPay Server-オンラインストアやクラウドファンディングを作れる。・Bluewallet Lightning-Bluewalletのサーバーを動かすことで、通常はカストディアルなBluewalletのライトニングウォレットをノンカストディアルに使える。家族などにサービス提供もできる。Specter Desktop-使いやすいマルチシグ機能を重視したウォレット。・Samourai Server-プライバシー向上のためにミキシングを実行できる。界隈の代表的なオープンソースソフトウェアプロダクトの多くがすでにUmbrel App Storeに登場していることがわかると思います。Umbrel普及の勢いが持続すれば、今後もその数は増えていき、ユーザーにとって使いやすくなると考えられます。ノードに同梱という特長によって、エンドユーザーがサーバー系 (常駐)のアプリを簡単に動かせるのが特にいいですね。

どう分散化に貢献するのか

さて、Umbrelの普及が分散化に貢献するのかを考えます。もちろんビットコインノードの数が増えたり、自身のライトニングノードを使う人が増えることもネットワークレベルでの分散性にはプラスですが、Umbrelの普及はもっと広くエコシステムにとってプラスになりうると感じています。例えばこれまでBTCPay Serverのセットアップや運用にはある程度のIT知識が必要でしたし、このハードルによってビットコイン支払いの導入に二の足を踏んだり、最善とは言えない第三者サービスを利用する場合がありました。この難しさを改善することで、ビットコインノードの運用コストが安いという長所がこれまで以上に活きてくると思います。同様に、親戚のためにライトニングウォレットをホスティングしたり、町内会でオークションを開催したり、オンラインで賞金付きのレースゲーム大会を開催したりと、Umbrelはエンジニア以外にもビットコインを使って周囲に影響をもたらす助けになるかもしれません。草の根のアダプションですね。ビットコインはブロックチェーンとアプリケーション層が分かれているため、イーサリアム型のdAppsよりは、ダークウェブマーケットのように雑草のように生えてくるサービスと親和性が高いと私は思います。例えば、オンチェーンでオプション取引ができなくても、オプション取引をDeribitなどに取り次いでくれる

ヤミ事業者がたくさん現れて競争するような環境です。そこにはカストディアルなサービスもたくさんあるでしょうし、それを使うかどうかはリスクベースで判断するような世界です。Umbrelがどの程度その未来に貢献していくかは未知数ですが、そのような環境を実現する地ならしになりうると感じています。サービス開発者はもちろん大抵の場合エンジニアですが、インフラの維持が簡単であればあるほど開発に集中しやすいですし、ユーザーもUmbrelでサーバーを動かす前提で実現できる面白いサービスもあるでしょう。Torの普及という意味でも、プライバシーを重視する「事業者」にとってはプラスです。これからUmbrelにどんなアプリが登場するのかワクワクしながら、自分でもできることをしていこうと考えています。