BitVMはビットコインのインターオペラビリティを飛躍的に向上させる起爆剤となるか
2023年秋にビットコイン開発者の間でにわかに話題された新しい発明がありました。BitVMです。
This is probably the most exciting discovery in the history of bitcoin script. It seems to knock down practically every door, and gives us access to covenants, sidechains, and powers similar to Liquid or the EVM, all at once with no forks required. I can't wait to publish my demo https://t.co/lYhZvBg8DS
— Super Testnet (@super_testnet) October 9, 2023
ビットコイン上で任意の計算を検証できるという触れ込みのBitVMはその後一部の開発者を魅了し、現在も開発が進んでいる模様です。
様々な計算をビットコイン上で検証できるとなると、チェーン間のトラストレス・ブリッジや新しいカタチのレイヤー2などに応用できるかもしれません。今日はBitVMについての概要と、どのように活用されるかという展望を実際の例と合わせて見ていきます。
・BitVMの概要
・BitVMで新しく実現できるインターオペラビリティ
・2024年中に注目を集める可能性も
BitVMの概要
ビットコイン上のスマートコントラクト(スクリプト)で表現できる内容は限られています。数少ないオペコード(関数)を使って表現できて、1つのトランザクション内で完結する(状態を持ち越さない)という制限のもと、アトミックスワップやハッシュタイムロックコントラクト(HTLC)を編み出し、ライトニングなどの技術が実現しています。
ところが、BitVMはビットコイン上でなんでも任意の計算を検証できる!と豪語しています。もし事実なら革命的なことではありませんか!
実は過去の記事で小さく取り上げています:
BitVMは既存のオペコードとTaprootによって大量の使用条件を木構造にできることを逆手に、「木構造になった計算回路(プログラム)」にコミットすることでその回路を実行した計算結果について合意を形成できるというものです。もう少しわかりやすい言葉に直すなら、特定のプログラムの実行結果を二者間で確認し、誤った結果を主張できないようにするテクニックです。
Taptreeは本来は計算回路として実行されるものではないため、あくまでチャレンジレスポンス形式で実行内容の途中段階を検証するような設計になります。
BitVMの動作原理について詳しくはチェイントープの安土さんやデジタルガレージの桑原さんが解説している記事をご覧ください。

もちろん少しでも複雑なプログラムを組もうものなら回路は膨大なものになり、保存や共有すらも大変かもしれません。また、現状では二者間でのみ実行できるプロトコルが考案されているのみで、一対多や多対多には対応していないなど、実用上の課題としてこれから取り組まれていく部分も多く残っています。
しかしながら、任意のプログラムの実行結果をビットコイン上で確認できることで、ビットコインブロックチェーン自体のユースケースが爆発的に増えます。
BitVMで新しく実現できるインターオペラビリティ
特に期待されているのはインターオペラビリティの改善によるビットコインと他チェーンや新たなレイヤー2の接続です。
現状ではビットコイン上のレイヤー2はビットコイントランザクションのオフチェーンの持ち合いによって実現されています。(トラストレスな出金ができないサイドチェーンであるLiquidなどは別です。)
そこでもしビットコイン上でサイドチェーン側の状態を検証したり、サイドチェーン側での計算結果を利用できるようになったら、ゼロ知識証明の検証によってロールアップと呼ばれる種類のレイヤー2技術を利用できたり、あるいはいずれのチェーンにも適用できるトラストレスWBTC(BTCステーブルコイン)のようなものも作れるかもしれません。ライトニングなど既存の技術を改善するアイデアも生まれてくるでしょう。
2024年中に注目を集める可能性も
ビットコインマキシマリストのコミュニティではほとんど話題になっていませんが、Stacksなど(独自トークンがあったりマーケティング先行な部分がありビットコイナーに拒否されがちな)サイドチェーン界隈でBitVMへの関心は続いており、BitVMの応用を目指しているプロジェクトが数十も存在するそうです。ポジショントークという側面もありますが、BitVMはまだ非常に早い段階とはいえ実際にある程度注目されているのは事実でしょう。
アメリカでBitcoin, not Cryptoの区別が進む中、他の仮想通貨プロジェクトが自身をBitcoinに絡める方法として取り組みたくなるように、ナラティブ面で注目を集めやすいのは間違いなさそうです。さらにBRC20に関連してメタマスクを使ってビットコイン・ブロックチェーンに触れるというこれまでは比較的珍しかった使い方が増えたため、web3系の開発者がビットコイン上でのプロダクト開発に取り組みやすくなっているという環境面での変化もあります。(ただしビットコインで常識とされてきたベストプラクティスが無視されている負の側面もあります。)
またビットコイン開発はこれまで収益を上げるプロダクト開発が困難でしたが、(その倫理観の是非は別として)トークン発行による売上がそのまま利益となる草コインのビジネスモデルが大規模な開発者の流入を促す可能性はあるでしょう。
早ければ年内にデモ版で使えるプロダクトが出てくるかもしれませんが、本格的に(安心して)使えるものになるにはまだしばらくかかるでしょう。いわゆる草コイン界隈のカルチャーをもつユーザーのビットコインへの殺到や、さらなる手数料相場の高騰をもたらす技術となる可能性は十分にあり得ると思います。
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