ブロックスペースを資源として考えてみると…
最近、こんなツイートを見かけて、とてもいい整理の仕方かもしれないという気づきがありました。https://twitter.com/Mario_Gibney/status/1526361206885388288
「ビットコインの将来的なセキュリティを考える上で、ビットコインネットワークが生産するコモディティは2種類あるということを認識する必要がある。半減期を重ねて2100万枚まで発行されるBTCというアセットと、約10分毎に4MWU (1M vbyte)生産されるブロックスペースだ。※」
BTCの価値にばかり目が行きがちですが、手数料の話にはブロックスペースの価値が密接に関係してきます。トランザクション手数料はブロックスペースの対価として支払うものだからです。したがって、長期的なビットコインの持続可能性を論ずる際はその両方の価値が別々であることを念頭に置く必要があります。
※…ビットコインのブロックサイズは1MBブロックなどと言われますが、2017年のSegwit導入時にトランザクションサイズの計算方法が複雑化し"4MWU" (WU = weight units)ブロックとなりました。署名データは1byte = 1WU、それ以外のデータは1byte = 4WUで計算されます。したがって実際には1.8~1.9MB程度のブロックも珍しくありません。
また、ブロックスペースやトランザクションサイズの表現としてよく使われる1vbyte = 4WUです。
ブロックスペースの価値
現在、マイナーは1ブロック採掘するたびに6.25 BTCの新規発行分と、ブロック内のトランザクション手数料の合計を受け取ることができます。
マイナーは新規発行のトランザクション(コインベーストランザクション)以外には空っぽのブロックでも新規発行分のBTCを得ることができますが、トランザクション手数料はまさにブロックスペースの対価です。
このブロックスペース、生産ペースは約10分間に4MWUと決まっており、非常に非弾力的なものです。需要の大小に関わらず生産されるため、価格のボラティリティが大きくなってしまいます。
近年のビットコインは多くの時間は1 sat/vbyteという最低限の手数料率でもすぐにトランザクションが取り込まれる状態になっており、その状況下のブロックスペースの価値は1 sat/vbyte以下ということになります。
ブロックスペースにはトランザクションしか含めることができず、また使われなかったブロックスペースを保管して後に使うこともできないため、約10分に1度のオークションで値付けされ、購入した瞬間に消費される財だと考えられそうです。
持続可能性と手数料
ビットコインは誰もプロトコル変更を容易に通すことができないことが強みですが、よく挙げられる将来的な懸念点に「BTCの新規発行が非常に少なくなった頃に、トランザクション手数料だけで安定した送金が行えるのか」という問題があります。
これを今回のテーマを使って言い換えると「ブロックスペースの需要だけでブロックチェーンの安定に十分なハッシュレートが得られるのか?」になります。すなわち、ブロックスペースの対価が足りるのか問題です。特にオンチェーンで様々な取引が行われトランザクションの効用が大きい(「今すぐなら儲かる・儲かりうる」トランザクションがあるので手数料が高騰しやすい)イーサリアム界隈から出てきがちな指摘です。
ちなみに2017年は取引所間の価格差が大きく、これらのアービトラージで「儲かる」ビットコイントランザクションが多かったことが当時の手数料高騰につながっていました。コインチェックの入出金が停止すると、膨れ上がっていたメモリプールが一気に解消されました。
この問題を分解すると、ブロックスペース価格(需要)のボラティリティの問題、決済速度の問題などの側面に分けられます。ブロックスペースを財と見なすことで議論の内容が整理しやすくなりそうです。
ちなみに個人的にはトランザクションの承認まで現在1~2ブロックで満足しているのを状況に応じて25ブロック、100ブロックなど必要なだけ待てば問題ないと考えています(決済速度の問題に収束)。オンチェーンの取引には時間がかかってしまいますが、レイヤー2では即時決済ができます。
さて、ブロックスペースの価値を考えることは、なぜかこの問題の解決策として提案されることがあるブロックサイズ拡張の問題点も明らかにします。
この提案をする人たちはブロックサイズを大きくすることによってトランザクション数が倍増し、手数料収入が倍増すると主張します。しかし、ブロックスペースの供給増=価格低下圧力は、むしろ需要<供給となる期間の増加につながり1 sat/vbyteに張り付く期間が長くなるだけのように思います。弊害としてビットコインノードの運用負担が大きくなることも考えると悪手でしょう。
ビットコインはその重要さゆえ変化が遅いですが、数十年のスパンで見れば柔軟に必要な機能を取り入れていくでしょう。変化しないことが目的ではなく、通貨として存在し続けることが目的だからです。
ブロックスペースの先物
ブロックスペースのボラティリティが長期的に問題となる可能性があるならば、これを抑えるための機構の誕生が望まれます。金融商品で言えばブロックスペース先物に当たるものです。
ブロックスペース(手数料)を安いときに確保して手数料が高いときに使用できれば、供給を需要にある程度合わせることができ、ブロックスペースの価格安定に寄与するでしょう。
実現する方法を考えてみましょう。ブロックに含めたトランザクションに、後に任意の「意味付け」を行うことができれば、任意のタイミングでその意味づけを当初のトランザクション手数料で実現できます。これは例えば「あらかじめ手数料が安いときにライトニングチャネルを開設するが、いつ誰と開設したのかは後でブロックスペースが高いときに決める」ような仕組みです。現時点でそのような仕組みはまだありません。
レイヤー2やTaprootなどを活用して、ブロックスペースの先物という概念を使う仕組みがこれからたくさん出てくることに期待しています。
まとめ
・ビットコインネットワークが生産する財は2つある(BTCとブロックスペース)と整理すると、トランザクション手数料に関係する論理が組み立てやすくなる
・ブロックスペースは供給が非弾力的なため、需要が低いときは供給過多、需要が高まると供給不足で価値のボラティリティが大きい
・ブロックスペース先物が実現すればこのボラティリティがある程度緩和される
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