中央アフリカ共和国は、2022年4月22日にビットコインを法定通貨に加える法律案が全会一致で議会で可決され、4月27日に大統領府が承認したと発表しました(記事ロイター)。

中央アフリカ はエルサルバドルに次ぐ2番目にビットコインの法定通貨化を行ったとされています。今回は、日本人にとってはあまり馴染みのない中央アフリカ共和国という国の政治経済の歴史を調べながら、ビットコイン法定通貨化の意味をいくつかの視点で多角的にみていこうというものです。

<中央アフリカ概略>

中央アフリカ共和国は、その名の通りアフリカの中央に位置する内陸国です。面積は約62万5000平方キロメートルで、国土の大部分はサバンナや熱帯雨林、サバンナと熱帯雨林の混合地帯で占められています。人口は約492万人で、首都はバンギです。

中央アフリカは、フランスの植民地でしたが1960年(いわゆるアフリカの年)に独立しました。政治的には、複数のクーデター、内戦、反政府勢力の活動によって不安定な状況が続いています。

初代大統領ダヴィド・ダッコは一党独裁の政治を進めていましたが、1965年に、軍によるクーデターで政権を奪取されました。このときクーデターを行ったボカサ中佐は2代目大統領になり、のちに独裁色を強め、「中央アフリカ帝国初代皇帝ボカサ一世」などを称するなどしていました。自分のことをナポレオンになぞらえていたようです。彼の戴冠式には、国家予算の1/4に相当する国費をつぎこんだそうです。

そんな暴政をしていれば当然だとは思いますが、市民の反政府デモが起き、フランス軍が介入してボカサ一世は追放・コートジボワールに亡命しました。そして、初代のダッコが再び大統領になりました。

復帰したダッコは新憲法の制定や複数政党制の導入などを行ったそうですが、それが原因なのか、民主化デモが各地で起きるようになりました。ダッコはそれらを抑えるために強権的になり、またクーデターが起きて、ダッコはカメルーンに亡命しました。

そのあとは財政難と軍人への給与未払いが続くようになり、クーデターが繰り返されるようになりました。また、民主化デモも各地で起き続けていました。何度か大統領も変わったのですが、2012年からは複数の民族や宗教を背景としたグループによって内戦になってしまいました。

そんな中、2016年から現在の大統領であるトゥアデラ氏(第8代大統領)が就任しました。このトゥアデラ大統領が、今回のテーマであるビットコイン法定通貨を打ち出したわけです。

<CFAフランと輸出経済>

内戦は現在も続いている状況ですので、当然ですが国土のインフラは整備されていません。都市部であっても未舗装の道路です。国際空港が首都のバンギにあるようで、主にカメルーンのドゥアラやケニアのナイロビなどに就航しているようです。エールフランスもシャルルドゴール空港への定期便があるようです。首都の空港はさすがに滑走路は舗装されているようですが、そのほかの空港では滑走路も未舗装です。

また、経済的にも貧困が深刻であり、医療や教育の質も低いなど、多くの課題を抱えた国とされています。インターネットどころか電力も不安定であるということです。これでどうやって決済を行おうというのかはわかりませんが、国際送金に利用としているのであるのかもしれません。

主要な産業は、ダイヤモンドやゴールドなどを輸出するというものです。日本も自動車や機械の輸出を行うので我々はよく知っていますが、輸出産業にとっては為替レートが重要です。実は、中央アフリカは「CFAフラン」という通貨を法定通貨として使用しています。このCFAフランというのは、旧宗主国フランスの通貨であった「フラン」と固定レートになっていたという歴史があり、現在ではユーロと固定されています。(このCFAフランと、アフリカの通貨統合政策については次回コラムで解説しようと思います)。

CFAフランを使用している国:緑色は西アフリカ諸国中央銀行が管理発行、赤色は中部アフリカ諸国銀行が管理発行 wikipediaより

ユーロと連動してしまうので、例えばユーロ高になってしまうと、中央アフリカの輸出産品は競争力を失ってしまうという構造があります。本来であれば中央アフリカの経済の実勢にあったレートであるべきだと思うのですが、そうなっていない問題があります。実はこのような問題は、中央アフリカ共和国に限ったものではありません。CFAフランを採用している国はほかにも多数あります。(図参照)

<フランスが引き、ロシアが来た>

2013年にフランスのオランド大統領は、中央アフリカ内戦による民間人殺害などを防ぐため軍事介入を行うと発表しました。さらに国連安保理でのフランスの武力行使を認める決議もなされました。これについては色々な賛否が議論されているようです。その後、時は流れて、フランスのアフリカに関与する政策が変わり、2022年12月にフランス軍は中央アフリカから撤退しました。

トゥアデラ大統領は、内戦を抑えつつ治安を自前で維持しなければならないという重大なタスクを負うこととなりました。政府軍だけでは難しい状況に手を差し伸べたのがロシアでした。ロシアは「軍事顧問」と呼ばれる人を派遣し、治安維持の指導をしているようです。また、一部にはロシアの民間軍事会社ワグネルもいるといわれています。これらの事実関係は不明確なこともありますが、様々なレポートがあります。 朝日新聞の記事では、ナンバーの内ピックアップトラックに乗ってマシンガンを持った白人集団の写真があります。

長い内戦による治安を改善してくれるなら誰であっても歓迎するということは本音なんだろうと思います。中央アフリカはロシアに配慮するようになり、2022年3月のウクライナ戦争におけるロシアを非難する国連決議を「棄権」しました。

ビットコイン法定通貨化は、このようなフランスの影響下からの真の意味での独立を目指すという他のアフリカ諸国と同様な歴史的文脈で語れるもののように感じます。内戦の終結や経済発展などのためであれば、頼れるものは何でも頼ってやってみようという思想があると思われます。CFAフランが植民地支配の名残と批判される問題も関連しています。

しかし強引に進めるのではなく、既存のシステムとも調和をとりながら行おうとしているようです。中部アフリカ地域の銀行規制当局とも連携しているようです。詳細は次回にまとめます。

<サンゴコイン??>

2022年7月に、中央アフリカ共和国は独自の「サンゴコイン」をトークンとして発行すると発表しました。これはトゥアデラ大統領の取り巻きが、お金儲け目当てで行ったという未確認情報があります。もしそうだったとしても、実際は目標どおり売れなかったようです。これはなんか上述のビットコインの話とは次元が違うのかなと思います。ただビットコインの法定通貨化自体も、大統領周辺による利益誘導に関連するとみなされてしまえば、結局反発を招いてしまうかもしれません。