前回記事(2023/04/05「中央アフリカでのビットコイン法定通貨化(1)厳しい経済と内戦」)に引き続いて、中央アフリカ共和国のビットコインの法定通貨化について考えていきます。前回は、独立後の政治経済の混乱の中で、内戦が続いている状況をお伝えしました。その中で旧宗主国であるフランスの影響が低下し、ロシアなどの影響が強くなりつつある状況を述べました。

アフリカの国々は独立後も様々な影響を外国から受けています。フランスが中央アフリカ共和国を含めて、旧植民地に介入している状況は、独立後も続いていました。CFAフランの発行管理も同様な文脈で考えられるようです。

ビットコインの法定通貨化の意義を考えるうえで、このCFAフラン体制のしくみを説明したいと思います。

CFAフラン誕生

フランスの通貨は今では「ユーロ」ですが、以前1990年代までは「フラン」という通貨を使っていました。この「フラン」は、フランス、ベルギー、ルクセンブルグでつかわれていました。またその当時、フランはアフリカの海外植民地でも使われていました。これをフランスフランと呼ぶことにしましょう。

フランス本国は第二次大戦でドイツ軍に占領されるなどし、当然ですが、経済的にも大変な状況になりました。ブレトンウッズ協定によって米ドルとフランスフランのレートが定められましたが、フランスフランは弱くなってしまいました。このころにアフリカなど独立前の植民地において、フランスフランとは別の通貨を作る気運が高まったということです。

結果として、西アフリカで西アフリカ諸国中央銀行が発行する「CFAフラン(西)」と、中央アフリカで中部アフリカ諸国銀行が発行する「CFAフラン(中)」ができました。どちらもCFAフランであり、最初1948年は【1フランスフラン=0.5CFAフラン】という固定レートでした。

なお、CFAフラン発行時に、ニューカレドニア、ウォリス・フツナ、フランス領ポリネシアでも、CFPフラン(別名フレンチパシフィック・フラン)というものも作られました。

固定レートによる通貨の安定性

戦後のフランスの大変な経済状況で、フランス国民も貧しいことを反映させているということから、最初はフランスフランを安くするような形のレートになっていました。しかし、これを輸出の観点からみると、フランス本国から、アフリカCFAフラン使用国に対する輸出に有利ということになります。

フランス本国にとっては輸出に関する収支がプラスになるということであり、フランスの経済にとっては良いことですね。一方で、例えば中央アフリカ共和国の場合、輸出する産品がありましたから、これを輸出する際はCFAフランが高いと困ります。

日本も戦後は相当苦しい状況から、朝鮮戦争での特需で経済が復興したといわれています。形式は似ていませんが、どの国も生存するために厳しい時代だったと言わざるをえません。

その後時は流れて、世界経済はブレトンウッズ体制が崩壊し、変動相場体制へと移行しました。しかし、このままCFAフランはフランスフランとの固定レートを続けています。

1980年代後半になると、プラザ合意などでフランスフランの対ドルレートが高まっていきます。日本と同様にドルに対して自国通貨が高くなってしまうという状況です。

そうなると、CFAフランはフランスフランに対して固定されているので、CFAフランもまた対ドルで通貨高になります。これはアフリカの経済力を反映したものではないといわれています。

さらにEUによって通貨ユーロが誕生すると、CFAフランはユーロとペッグされるようになります。固定レートはそのまま続き、【1ユーロ=655.957CFAフラン】です。EUができてもアフリカとのCFAフラン体制は変わらなかったということです。

上で述べたことは普通とは異なり、おかしいのです。普通は発展途上国の通貨は安くなっているものなので、それで輸出などで自国の産業が伸びるというものなのです。しかし、当然ですが逆にアフリカの工場で作られたものがフランスなどに輸出する場合は、逆に厳しくなってしまいます。

これがある意味でアフリカの経済発展を阻害しているのではないかという指摘があります。新植民地主義などと厳しい批判もあります。

そんななか登場するのが、中国です。人民元のレートは比較的割安に設定され、アフリカ中国間の貿易が進んだ原因の一つと言われています。アフリカに中国企業の進出もありますが、逆に、広州など中国都市部にアフリカ系の貿易業者が多数集まるエリアもあります。相互の貿易が活発化しているようで、中央アフリカでもダイヤモンド鉱山などに中国系企業が関わっているようです。

外貨準備

中央アフリカだけではないですが、独立後のアフリカ諸国の政治経済が安定したとは言い難いです。自分たちの支持者や関係者に利益誘導したり、国庫の資産をつぎ込んで贅沢三昧する政治家・指導者がでてくることは残念ながらよくあることでした。

そうなれば、いくら固定レートといっても崩壊するのではないかと考えられます。しかし、そのようにならないようにする仕組みがあります。CFAフランのフランスフラン(ユーロ)に対する無制限交換をフランスが保証するという代わりに、中央銀行が保有する外貨準備金の一定割合をフランス国庫に入れなければならないということがあります。ある種の準備金のような形ですが、最低でも50%の資産を預けることになっていたとのことです(図を参照)。

このようなことでは、本来、中央アフリカ経済のために使われるお金が、フランスの国庫に貯められて、活用できないということになってしまいます。これもアジアなどの他の発展途上の国家とは違っており、経済成長において不利ですね。

さらに、各国の中央銀行の政策よりも、欧州中央銀行の政策の影響が大きくなり、中央アフリカ共和国の経済実態とは全く関係ないものとなってしまいます。

当然、現在は見直しが進められており、だいぶ状況が変わってきました。

産経新聞 西アフリカで新共通通貨 「フランス支配の名残」と決別へ

上の記事にあるように、西アフリカのUAMOAにカーボベルデを加えた国々では共通通貨「ECO」の発行が行われ、CFAフランの体制は崩壊しました。

以上のように、旧フランス植民地国での独立後においてもつづいていた、通貨制度における植民地的な体制はそろそろ終焉を迎えようとしています。この文脈でみれば、ビットコインの法定通貨化を目指すというのは一つの合理性があるように感じます。すなわち、上で述べたような旧宗主国フランスからの新植民地主義からの脱却ということです。

フランスのマクロン大統領も「もはやフランサフリック(フランスのアフリカ)は終わった」と述べ、アフリカ政策の転換が始まりました。彼と政治的に対立するような国民戦線のマリーヌ・ルペン氏などもアフリカへの介入にはCFAフラン体制の見直しを提案していました。

一方で、その分先進国と同様に財政規律は必要となりますし、ロシアや中国なども様々な形でかかわってくるので、政治の力というか責任も大切となるでしょう。しかし、このような流れはまさにアフリカ諸国の考え次第でどんどん進むように思います。

もともと、植民地化以前のアフリカでは、様々な形態の通貨や、ローカルな金融制度があちこちに存在し、とても活発な取引があったようです。これについても実に興味深いと思います。暗号資産を使ったサービスの展開についてもアフリカには可能性があるように感じます。