本稿でも2021年夏に紹介したFedimintはその後も着々と支持を集めており、特にフェデレーション型ではない通常のカストディによるChaumian eCashエコシステムが成長し続けています。カストディと引き換えにプライバシーとスケーラビリティを実現するFedimint及びChaumian eCashについては下記の記事をご覧ください。

Federated Chaumian Mintsで分散カストディアル・ライトニングウォレット
ビットコインのレイヤー2はライトニングネットワーク以外にもいくつか出てきていたり、提案されています。そのうちの1つとして、Federated Chaumian Mintsというものが少し話題になっていたので、それがどういうもので、何ができるのかを調べてみました。 https://fedimint.org CHAUMIAN MINTとは ビットコインが誕生する前にも、いわゆる仮想通貨というものは実験されていました。新しいものから遡ると、代表的なものではE-gold、Liberty Reserve、Digicash (Ecash)などが挙げられます。特に、公開鍵暗号による電子署名によって使…

現在の盛り上がりの中心にはCashuというオープンソースのChaumian Mint実装があります。Cashuを使うことで誰でも簡単にChaumian Mintを立ち上げることができるほか、Cashu.meやNutstashといったブラウザで動くウォレットアプリケーションを作ることもできます。

Cashu - ecash for Bitcoin

LNBitsへの統合により一層Mintの立ち上げが容易になった結果、Lnbitsのデモ用サーバー(legend.lnbits.com)だけでも339ものMintが実行されているようです。(個人的にはUIを試してみる用途以外ではおすすめしません)

今日はそんなCashu、Nutstashの近況をお伝えします。

使い捨ての公開鍵でNostr経由での送受金

2021年時点では無名だったNostrは最近ではCoinjoinや非同期のPayjoinを実現するための匿名コミュニケーションレイヤーとしても注目されており、これはプライバシーを最重視するChaumian Mintの世界でも同様です。

送金・受信側ともに使い捨ての鍵ペアを生成し、同じRelayに接続することで匿名性の高い送金が実現できるほか、公表しているNostrアカウントを使って投げ銭やメッセージの要領で送受金することもできます。

この機能はNutstashウォレットで使えるようですが、とてもイマドキで自由にアカウントを生成・放棄・運用できるNostrを上手に活用できていて好感が持てます。

ライトニングのインボイスを支払える

ビットコイン上のChaumian eCashが発行する証明書トークンは基本的には預かったsatoshiに対応するものです。したがって、Mintの協力さえあれば証明書トークンを出金と同じ要領でビットコイン建ての支払いに使用できます。

Mintがライトニングノードを運用している場合、Mintに対してインボイスの支払いと引き換えに証明書トークンを送りつけることができます。Cashu, Nutstashともに対応していますが、それに加えて利用するMint自体が対応している必要があります。

ライトニング経由で異なるMint間の送金も可能に

FedimintやChaumian Mintに共通の問題として、カストディアンへの信用が前提となっている点が挙げられます。送金したいAさんが利用するMintのカストディアンをBさんが信用するとは限りません。規制リスク等を考えて(正式には)匿名のカストディアンを利用している場合はなおさらです。(実際に匿名のカストディアンを信用する人は非常に少ないと思われますが。)

そこでここ最近注目されているのがMintの運用者らがライトニングノードを運用し、Mint間ではライトニングネットワークを使って送金(ブリッジ)を可能にする方法です。Mint Xからsatsを引き出し、Mint Yに振り込むことで自分のアカウントの資産を他のMint内の口座に送金することができます。

ただし、もしMintが預かり資産を横領するなどして取り付け騒ぎを起こしている場合はライトニングでの出金は事態を急速に悪化させかねません。突き詰めるとこれはカストディが必要なChaumian eCashの仕組み自体の問題であり、取り付け騒ぎを起こしているMintの運営者はライトニング経由の出金をストップすることが合理的と思われます。

Umbrelアプリも用意中

さて、現在UmbrelでChaumian eCashを利用するには前述のLNbitsをセルフホスト(インストール)し、拡張機能でCashuを有効にするほかありません。そこで、Nutstash WalletがUmbrelアプリを開発しているようです。

LNbitsの拡張機能がどれくらいのペースで開発されていくかにもよりますが、Nutstash WalletはeCash専用なのでライトニングインボイスの支払いなど、現在および将来的に実現するすべての機能に対応していくと考えられるでしょう。

ただし、Chaumian eCashはあくまで資産のカストディをMintに依存しており、ウォレットアプリをUmbrel上で動作させることでブラウザ内で実行するより優位にSelf-sovereignになるわけではないので、特別Umbrelと相性がいいのはライトニングとの統合面に限ります。

まとめ

・一昨年からFedimintというコンセプトが開発されているが、フェデレーション型でない単独のカストディアンが運用するChaumian Mintが一部で流行している

・ライトニングとの統合が魅力で、Mint間のブリッジやライトニングインボイスの支払いに使われている

・Nostrの統合が非常にイケていて、公開しているアカウントを使った支払いのほか、使い捨てのアカウントを使ってプライバシーを守ることもできる

・あくまでカストディを前提とした仕組みなので、利用する場合はそこに注意する必要がある