最近仕事の関連もあり、特にビットコインのフルノードの重要性や今後への示唆について考えています。

ビットコイン研究所ではいち早くラズベリーパイを使用して自作ノードの構築方法のチュートリアルなども出していましたし、自分もちょうど1年くらい前にフルノードの重要性について簡単にブログで記事にしたりもしていました。

https://coinandpeace.hatenablog.com/entry/importance-of-fullnode?fbclid=IwAR2F0yam4Ze0Ygr6-AI1uGR0VG7WwW2dRDtMZ38xNQzcPR1JM1Skx32L2XE

端的に言えば、

1. 自分でフルノードを持つことはプライバシー、デジタル主権などを築く上で重要
2. フルノードが今後身近になるソリューションがどんどん出てくるはず


というような話をしていたのですが、結局一年前と比べてその後結局どうなったのか、また上記に加えて自分の中でビットコイン、そしてLightningのノードを建てることの重要性が今後さらに増しそうだという予感があるので、現状のまとめと今後の展望について少し考えを述べます。

現在のフルノードソリューション概観

ビットコインフルノードをより簡単に構築、またフルノードを軸に据えた様々な機能の提供を目指すソリューションやサービスにはハードウェア型とソフトウェア型があります。


ハードウェア

ハードウェア型の強みはモノさえ買ってしまえば比較的誰でも簡単にフルノード環境を構築できることです。「Plug and play」呼ばれるようにとりあえず買って、電源を入れて、インターネットに接続しさえすれば必要なソフトウェアはプリインストールされており、スムーズにフルノードの利用が出来るというコンセプトです。

その他のメリットとして、ビットコインやLightningのノードだけでなく、ElectrumやBTCPayserverなど、フルノードの機能を補完するその他のツールも搭載されていたり、自動でアップデートやサポートも提供していたり、パワーユーザー、玄人にとっても満足できる「機能全部入れ」が出来ることでしょう。

他にもCasa NodeやHTCのブロックチェーンスマホ「Exodus」はノード機能だけでなくハードウェアウォレットとしてのセキュリティ機能も兼ね備えています。
一方、弱点としてはPlug and playとは言っても実際にはある程度の手間や技術力が必要とされる部分もあり、自分で本体ハードウェア以外にもケーブルやSDカードやその他部分を購入して組み立てたり、場合によっては最低限のプログラミング能力が要求されることもあります。
もう一つの問題はコストで、最も有名だったCasaは確か一台350ドルほど、HTCのExodusはスマホ代が300ドル程度に加えて追加でフルノードを保管する300GB以上の大容量SDカードの購入(150ドル程度)が別途必要です。加えて海外からの郵送費用や手間なども考えると初心者やホビーで使いたい人にとっては気軽に手をだせるものではないです。

実際Casaは今年に入ってからハードウェア事業をやめてセキュリティに特化すると発表しており、少なくとも現状の市場規模と価格設定では収益を上げていくのは難しいと判断したのでしょう。HTCのExodusも真偽は定かではないですが、数百台しか売れていないという噂を聞いたこともあります。

自分でもまだ試せてないのですが、Casaの後継者的存在として、最も機能性に優れていてエンスージアストから評価が高そうなのはMynodeです。こちらはフルセットをまとめて購入すると300ドルくらいしますが、100ドルくらいの有償サポート版オンリーの提供や、サポートなどはなしですがソフトウェア部分は全て無償公開しているので興味のある人にはこちらをおすすめしておきます。

myNode
Run Bitcoin, Lightning, and more!

ソフトウェア

ソフトウェアベースのフルノードサービスで最も有名なのはBTCPayserverです。BTCPayserverはその名がさす通り元々Bitpayからの乗り換えがしやすいようなAPI互換性を持つOSSの店舗やオンラインショップ向けのペイメントプロセッサーとしてスタートしました。また、その過程でビットコインのライトニングのフルノード構築環境を簡易化したこともあり、LN開発者にも広く使われています。それだけではなく、ハードウェアウォレットとつなげることでプライバシーの向上や、つい先日Payjoinというオンチェーン支払いの匿名性を向上させるミクシング技術の導入も発表しており、ただのペイメントプロセッサーというよりは他の重要なインフラ的機能の提供にも範囲が広がっています

もう一つソフトウェアベースのサービスで特徴的なのはABCoreです。これはAndroid Bitcoin Coreの略で、簡単に言えばAndroidのスマホでフルノード(Pruned node)を動かせるようにしよう、というプロジェクトです。

スマホのストレージ要領は200GB以上のビットコインの過去の全てのブロックデータを保管するのには向かないので、同期が完了した後に過去のデータは一部捨て去ることで必要容量を削減しつつ、最新トランザクションは自分できちんと検証してプライバシーの漏洩や第三者への依存を最小化出来ます。ABCoreはまだ広く使われてはいないですが、去年NayutaがABCoreをベースにビットコインとLightningのノードを建てられるウォレットをリリースしています。スマホの慣れたインターフェースで技術的知識がほぼない人でも簡単にノードを建てられるのが強みでしょう。

BTCPayなどのソフトウェアベースノードの課題としては、自分でノードを構築するので最低限のコンピュータ知識などが必要なことと、サーバーを運用するクラウドサービスなどの月額の運用コストなどがかかることです。

自分が把握している限りBTCPayserverを現状利用している多くは元々想定されているような一般の店舗などではなく、むしろ開発者が自社サービス、Lightningのアプリ構築の為に運用している場合が多く、ランニングコストの問題は無視できないでしょう。店舗の人はビットコイン支払いを受け入れる為だけに月々数千円以上の支払いをするくらいなら、無料のBitpayなどを使います、となるのは自然です。

スマホノードの方はAndroidをすでに持っている人には追加コストはかかりませんが、BTCPayなどに比べると機能性が乏しく、まだ出来ることはかなり限定的です。またスマホでフルノードとして自分のトランザクションの検証は出来ますが、他の人のTxのリレーをしたり過去のトランザクション情報を単独でチェックしたりすることは出来ないので、ビットコインネットワーク全体に貢献する部分はフルスペックノードよりは劣ります。

今後ビットコインフルノードエコシステムはどう進化していくか?

さてここまではある程度すでに知っている人もいたかもしれませんが、今後これらのフルノードの生態系はどのように進化していくのでしょうか?

まず一番想像がしやすいことは、今後もハードウェア、ソフトウェア両方でサービスの改善が進み、かなり簡単に安価に初心者でもビットコインやLightningのフルノードを運用できる状態は実現すると思います。今だと様々な理由でフルノードを運用する障壁がありますが、フルノードの利用が簡単になればユーザーからしてもフルノードに反対する特別な理由も特にありません。

フルノードをより多くの人が運用することでネットワーク全体の検閲耐性も向上しますし、ビットコイン利用時のプライバシーも大きく向上します。これはイーサリアムなどのその他の多くのチェーンでは実現がおそらく永久に難しく、ブロックチェーンの肥大化を出来る限り抑える方向性のビットコインならではの強みと言えます。

そしてもう一つ今後さらに重要になっていくと最近自分が考えているのは、フルノードを前提とした単純なペイメントを超えた様々な付加機能、エコシステムがビットコインを使って実現していくという側面です。

例えば、先日サロンで加藤さんが解説してくれていたWhatsatというLightningのルーティングネットワークを利用した暗号メッセージなどが一例です。

このような暗号化チャット、分散データストレージ、分散マーケットプレイス、デジタル権利の売買などの、ビットコインペイメントを軸としたツールや新しい構造のモデルが今後少しづつ姿を現してくと考えており、その新しい分散サービス群へのアクセスの入り口が上記のようなフルノードソリューションになると最近考えており、非常にワクワクしています。

今はまだその先の世界の技術やサービス、エコシステムがあまり明確に見えない部分も多いですが、Torブラウザからディープウェブに接続することで、表のインターネットではアクセスしえない情報やサービスにアクセス出来るように、フルノードを立てることで今のインターネットとは異なる信頼モデル、プライバシー、コスト構造を持った一連のプラットフォームが現れるのではないか、ということです。

当然ご存知の通りディープウェブの中身の一部~多くは旧シルクノードのような違法なものもありますが、それでもその世界は表のインターネットと比べても非常に巨大なもので、そこから新しいアイディアが生まれてきたり、インターネットへのアクセスが制限される特定の国や地域の人たちにとって自由を提供しているという側面もあります。

今の大部分の議論は表の規制された環境でどのように取引所やサービスを運用していくか、というものが多いですが、当然こちらも重要でこの「表」の世界でもSoV(デジタルゴールド)、国際送金やマイクロペイメントなどビットコインの優位性が存在する部分はありますが、少し先の世界ではビットコインのフルノードを入口とした新しい形の分散インターネットとも言えるエコシステムが今後少しづつ姿を現し始めるのかもしれません。若干期待と妄想ベースのところもありますが、いずれにせよ今の内からフルノードのソリューションに注意を払っておいて損はないでしょう。