DeFiトークンの現状と17年のICOバブル、ビットコインとの類似点
先週ICOと現在のDeFiトークンバブルは非常に似ている、という話をしました。昨日は大石さんが実際にDeFiトークン生成の仕組みや課題の解説をしました。このレポートでは各種統計などを見ながら、過去のICOの現象と比較しつつ、DeFiバブルの現状と将来的な展開について考えてみます。
DeFiにロックアップされる金額の急激な上昇
- DeFiトークンの出現により、DeFiサービスを使うことで新規トークンが入手できるスキーム(Farming or Liquidity mining)が人気に
- それにより、DeFiにロックアップされる価値も急増
- DeFi Pulseによれば、DeFiにロックアップされている価値はこの3か月で1000億円程度から4000億円近くまで跳ね上がっている
Dex取引高が集権的取引所を超え始める
- DeFiトークンの出現後Dexの取引高も急増。現状一日での取引高は300億円近くまで伸びて来ている。
- DexシェアトップのUniswapは、一日での取引高もすでに100億を超えている。
・ちなみに一番利用されている取引ペアはAMPL-ETH(AMPLはいわゆる草コインだが、後で紹介)
・Uniswapの取引高だけで日本のbitFlyerの現物と同程度と言えばイメージしやすいか。多くの集権的取引所の取引高を逆転する現象が起きている
- Dexの取引の主な用途はLiquidityマイニングで新しいDeFiトークンを生成する為、また集権的取引所では取引出来ないDeFiトークンをトレードする為
- DeFiブームが今後進行するにつれ、Dexでの取引高もさらに膨らんでいくはず
・ICOバブル時に、ICOによる調達額が伝統的なVC投資額を抜いた現象とある種近い感覚を覚える部分もある
DeFiブームは少数の人間により演出されている
- 取引高は急激に伸びている一方、DexやDeFiのオンチェーンでの利用者数は実はかなり少なく、DeFiブームというのは極一部のユーザーが人工的にロックアップ金額や取引高を作っている現実が見える。
- オンチェーン上のアドレスを追うと、1週間で約4000人しかUniswapを使っておらず、単純計算で一人当たり週平均約5,000万円ほど取引していることになる。これは集権的な取引所と比較しても明らかに少数のトレーダーに利用が偏っているのがわかる。
- Dex利用を含む今のLiquidityマイニングというのは、ルールをよく理解した少数の大口投資家やプロジェクトに近しい人たちがお金を拾って、それを仕組みをよくわかっていない通常の投資家にFTXやBinanceなどでノーリスクで売りつけ、それをひたすらに繰り返している、という構造がオンチェーンの取引高とユーザー数の大きな格差から見て取れる
17年~18年ICOバブル形成初期との感覚的類似点
- 感覚的には17年のICOバブルの様子と似ている部分がかなりあるが、Google検索トレンドを見るとまだまだICOバブルの頂点(18年1月)の10分の1程度。まだまだ17年のICOバブルの熱狂とは程遠いし、マスメディアでの紹介もまだほぼないし、一般の人は感覚的には入ってきていない
- ただし、かつての一時的なインフルエンサーが冬眠から目覚め始めたり、バブルの始まりてノーリスクで儲けようとする(悪徳)インフルエンサーが急激に煽り始めてからがバブル相場の本番を迎える可能性
・スキャムDeFiプロジェクトとインフルエンサーが直接結託し始めるはず
イーサリアムのオンチェーン手数料問題は17年のビットコインを超えていく
- DeFi利用などの増加をうけ、イーサリアムのトランザクション手数料は急激に上がってきており、推奨Gas Priceは100Gweiくらいまですでに高騰している
- これは感覚的にどれくらい高いかというと、通常の送金Txで50~100円、貸出など比較的シンプルなDeFiコントラクトの利用で400~500円、Kyberでのトークンスワップでなんと5000円程度手数料を要求された
a.すでに手数料が超高騰してかなり苦しかった17年のビットコインの手数料を超えるレベルまで静かに来ている
- 仮想通貨価格の全体的な上昇に応じてTetherの利用も着実に増えてきている。市場全体がATHを目指して上がっていくと、Tetherの利用も爆発し、イーサリアムの手数料問題をさらに悪化させる
- Ethereumの手数料高騰は、DeFiトークン関連Tx増加、トレード関連のTetherの利用増加、先日紹介したスキャムDappsによるブロックチェーン汚染なども考えると、ここからさらに悪化していく可能性が非常に高い
・17年のビットコインでも経験していない領域まで一度は突き進む可能性がある
- Bitinfochartsによれば、まだビットコインの方がEthereumより平均手数料の中央値は高いが、自分で使っている体感的にはイーサリアム、特にDexやコントラクトの利用はビットコインよりすでに高くなってきている。
- 手数料高騰の影響で、DeFiトークンファーミングの大口投資家による独占の助長、DeFiトークン以外のNFTなどのユースケースが難しくなってきている
・似たような現象はビットコインの送金手数料が高騰した17年にも見られた
・その後「高手数料」を理由にユーザー利用が別の仮想通貨に一部移り、ビットコインの市場占有率が低下した。同じことは一部イーサリアムにも起きる可能性が高い
DeFiトークンの焼き畑農業現象
- DeFiトークンのユースケースは、長期での市場価値をあまり感じない「ガバナンストークン」が今のところ中心である
- CompoundのトークンCompのガバナンストークンが上手く行ったことで、似たようなDeFiトークンを組み込むコピーキャットプロジェクトが大量に生まれ始めている
- 元祖DeFiトークンのCOMPは、6月22日の4万円のATHから3分の1くらいまですでに価格がクラッシュし、取引高も減少してきている
- COMPの後に、AMPLやYearn Financeなどのその他のDeFiトークンのパンプが始まったが、それらのトークンもすでに取引高や価格上昇の陰りが見え始めている。おそらく2~3週間以内に価格と取引高が下がっていき、また別のトークンがパンプし始めるDeFiトークンの焼畑農業的なものがしばらく続くだろう。
・複数のICOをみんなが物色して、踊り続けていた現象と一緒
・つまりもしこういうトークンで投機で儲けることを考えるなら、長期で持たないでどんどんその瞬間にホットなプロジェクトにどんどん鞍替えしていった方が多分良い
その他ブロックチェーンに一部のDeFiは移行し始める
- TRONはご存知の通りEthereumのトレンドやプロジェクトを堂々とパクっていく戦略を取っているが、JUSTという名前の元、Uniswap、Stablecoin、Chainlink(オラクル)などをパクって8月中旬にリリースを予定。
a.Ethereumの手数料高騰もあり、中国投資家などの需要を一部獲得して利用は多少は出てくるだろう
b.ただし、過去のパクリ戦略の出来などを考えても、イーサリアムから大量のユーザーを奪うことにはおそらくならない
2.もう一つ非常に重要な動きとして、イーサリアム上のDeFiに好意的な態度を見せていたと思われたFTXは、突如Serumという独自のブロックチェーン/DeFiプラットフォームのローンチを発表
a.イーサリアムに対する手数料やスピード面での優位性などを強調
3.こちらもすぐにはイーサリアムからユーザーを奪う可能性は低いと見ているが、今後イーサリアムの手数料の更なる高騰、イーサリアム2.0のローンチの遅れなども重なると、半年~1年くらいのスパンで考えると、DeFiのその他プラットフォームへの移行は確実に進むだろう
4.これは17年にビットコインの手数料高騰やブロックサイズ議論の泥沼化などを背景に、トークンやICO、開発コミュニティがイーサリアムに移行し、ビットコインの市場価値のドミナンス(占有率)が一年で30%程度まで落ち込んだ過去のパターンに近い動き
結論
DeFiトークンはICO2.0と言えるか?
- 現状のDeFiトークンブームはICO2.0と言えると思う。
- 技術の性質、過去のICOの教訓などを考えると17年のICOバブルほどの盛り上がりは見せないと思うが、ある程度の規模のバブルの始まりを今感じている
- ICOとの主な共通点は、
a.各プロジェクトのトークン設計は長期的な持続性はないものがほとんど
b.今後多くのコピペプロジェクト、低レベルなプロジェクトが大量に出現
c.一部の人が簡単に大金を手にする一方、最終的に多くは養分にされ焼かれることになる
4.また、利用の増加による手数料高騰とスケーラビリティ問題の深刻化など、現状のイーサリアムが直面する課題は17年のビットコインが通ってきた道をなぞる可能性が高いと見ている。DeFiブームの盛り上がりはイーサリアムにとって諸刃の剣と言える
a.手数料の更なる増加によるユーザビリティの低下
b.イーサリアム2.0のローンチの遅れによる内紛
c.その他プラットフォームへのユーザーや開発者の一部移行
5.DeFiの利用も増加しているが、これは無価値のDeFiトークンによる人工的に作られたもので、持続的とは思えない
a.そもそも「DeFi」と「DeFiトークン」は本来別物で、現在起きているのは正確には「DeFiブーム」ではなく、投機商品としての「DeFiトークンブーム」と言える
b.一方一過性のバブルであってもUniswapなどのDexの利用が進むのは好意的に見れる部分もある
6.今後DeFiバブルも17年のICOバブルが通った道を最終的になぞっていくとすると、取引高や注目はさらに増していくが、最終的には詐欺的プロジェクトの大量発生、コントラクトのバグやレバレッジ枯渇による大量ロスカット現象の発生(ユーザー被害)、それによる規制強化リスクなどが1年~2年単位で起きると予想する
a.その過程で有望なDeFiプロジェクトが一部出てきたり、UniswapなどDexの利用や有用性がさらに磨かれるという正のインパクトもありえる
私たちは何をすべきか?
7.17~18年のICOバブルのように参入とExitのタイミングさえ間違えなければ、Liquidityマイニングやアービトラージなど多くの投資的機会も出てくると思うが、上記の中長期のリスクも意識した方が良い
a.一つのDeFiトークンにこだわりすぎるべきではない(焼き畑農業)
b.特に流動性枯渇によるDeFi版リーマンショック、The DAOのようなコントラクトのバグによる資金が閉じ込められたりするリスク、がいつ起きてもおかしくない
8.イーサリアムでNFTゲームを開発しているプロジェクトなどは、手数料増加ですでに苦しい状況に追い込まれていると思うが、今後この状態はさらに悪化し、そもそものブロックチェーンゲームのコンセプトが機能しなくなる可能性が非常に高い。もし本当にゲーム部分で勝負するなら今のうちに別チェーンへの対応などを準備した方が良い。
9.過去に下火になってしまっていたプロジェクトがDeFiを匂わせてDeFiトークンを発行することで収益化しようとするケースがすでに出てきている。個人的にはこういうことは推奨しないが、事業を伸ばす為にDeFi成分に一部便乗する事業者は日本でも出てくるはず。(NFTゲームのはずが、気付いたら「DeFiサービス」とかになっていたり…)
10.いつまでこのバブルが続くかはわからないが、感覚的にはまだ初動。何か大きな事件があるまであと半年、最低でも今年一杯くらいは続くのではないか。ただなんとなくの勘だが17~18年のICOバブル程は長く続かない気がしている。
おまけ ~お金が勝手に増えるAMPLとDeFiバブル~
今回DeFiのバブルが来てるな、と個人的に確信したのは、AMPLというプロジェクトが一部の界隈で注目、本気で期待されている現象を見た時です。
このコインはコインの市場価格に応じてウォレットに入っているコインの所有枚数を自動でコントラクトで調整する、というものです。価格が上がったら希釈化する為にコインの発行量が増え、価格が下がったらコインの発行量を減らす、という比較的シンプルなアイディアです。
ただし、これは基本的には無からコインが生まれて、投機で上下する価格に応じて一律に枚数を希釈化させたり、絞ったりして、ウォレットの数字の上でのデノミの変更、幻想を見せているだけのものです。価格が1ドル以上の時はトークンの枚数が増えていくのでホルダーは心理的に得をしているように思い買い増ししたりするかもしれませんが、逆に一度価格が崩れ始めてアンカーとなる1ドルを下回り、トークンの保有枚数も減少していくと、突然投げ売りが始まって、最終的にはコインの価格は急激にゼロに近づいて崩壊するんじゃないかと思っています。本質的には分散型のポンジスキーム、詐欺Dappsと大差ない印象です。
このプロジェクト自体はその点では非常にお粗末である種かわいいものですが、こういうちょっと考えればおかしいことを大げさに煽ったり大言壮語をすると一部の人が本当に信じてお金が集まったり、という現象は確かにICOにそっくりです。今後も似たようなプロジェクトや一種の騙し案件もたくさん出てくると思うので、当然何でもかんでもあまり色んなプロジェクトをあてにしない方がいいでしょう(Exitタイミングさえ間違えなければ儲かるかもしれませんが、個人的にはあまり推奨しません)
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