引き続きDefi界隈をウォッチしています。

先週はSUSHIの運営者がすべての運営保有のSUSHIを売り払いExitをしたことが発覚しました。華麗なるExit Scamです。これをきっかけにSUSHIの値段が暴落し、1ドルをつけ高値からは1/10以下になりました。これに引きずられるようにすべてのコインが暴落し、まさにSUSHIショックともいうべき状況でした。

しかしながら、相場は少しもりかえしてきて、Defiブームも継続の機運があります。SUSHIは、取引所FTXのファウンダーに運営権を移譲し、それをきっかけに持ち直しています。

Defiブームが終わるとしたらどういうシナリオが考えられるかという話で、ひとつの可能性であった「大規模なExit Scamの発生」というのは、まさにそれがSHUSHIで発生したにもかかわらず、崩壊とまでいかなかったのです。

では、他にどのような崩壊の可能性がありえるのでしょうか?私は蓋然性の高いシナリオとして3つを考えています。インパクトの大きい順番から挙げて、それぞれを解説していきます。

1.ステーブルコインがトリガーとなる信用収縮連鎖

Defiでは、ファーミングをして、その預かり症を更にプールにいれて、その預かり症を更にステークすると貰えるトークンがあって・・・と何重にも仕組みがつみあがっています。まさに信用がパンパンにふくれあがっていて、2階建てどころか5階建て6階建てになっている例も珍しくありません。

その建物の土台になっているのは、ステーブルコインです。もしいくつかのコインのペグが外れ、そのおかげで精算がおこると、連鎖的に波及し、何段にもつみあがったDefiのバベルの塔は土台から崩れていってしまうでしょう。

信用が膨れ上がっている端的な例は、COMPのマキシマイズファーミングです。COMPはCompoundのガバナンストークンで、Compound上で貸し借りを行った額に比例して付与されます。これをマキシマイズさせる方法があります。

手法はこうです。

手許に10,000USDCがあるとします。これをCompoundに預け入れる(担保にする)と、他のステーブルコインを借りることができます。たとえば、DAIを担保上限(70%)まで、6666DAIまで借りることができます。こんどはその借りたDAIを更にコンパウンドに預入て、USDCを借ります(!)。6666DAIの66%つまり、4400USDCを借りるのです。そして、4400USDCを担保にもうちとDAIを借りて・・・・(以下無限ループ)

このようにして、Compound上での貸付・借り入れの額を自分でつくりだすのです。手元1万ドルををこのマキシマイズにかけると3万7000ドルほどの額をCompound上にポジションすることができます。なぜこんな無意味なことをするかというと、Compound上のポジションに比例してCOMPトークンがもらえるからです。

単純に1万ドルを貸し借りするより、3.7倍のレバレッジをかけることができます。このようにして、トークンのファーミングを目的として、大幅なレバレッジを掛けたポジションがあちらこちらで構築されています。

Compoundの例で、こんな危ないポジションを立てられるのは、ステーブルコインだからです。価格が変動しないといわれているため、担保いっぱいまで借り入れを起こしても安全なのです。しかし、もちろん、ステーブルコインのペグが仮に外れた場合は、一気にこのポジションが連鎖精算に追い込まれます。ギリギリまで借り入れしているので、たとえばペグが数%外れただけでも、精算されてしまいます。

今の所、ステーブルコインのペグが数%といったオーダーで外れることは久しく起きていませんが、過去にはそういうった事例がなかったわけではありません。すくなくとも、USDTとDAIは過去に大幅なペグの乖離を起こしています。

いまでは多くのステーブルコインが、多くのDefiの中に組み入れられており、さらにそのポジションが他のDefiに組み入れられるなど、何階建てにもなっている構造で、どこにどれだけのリスクエクスポージャーが存在するのか誰もわからない状態になっています。まさに、リーマンショックの時にCDOの中に不良債権がいくらあるのかわからなかったのと同様です。

ステーブルコインのペグ乖離によって、連鎖的に精算がおこり、流動性が不足し、信用が一気に収縮します。まさに、Defi版のリーマン・ショックです。一時的に流動性が不足するので更にステーブルコインに奇妙な値段がつき、それによって次の精算が引き起こされます。まさに爆弾です。最もインパクトの大きな崩壊です。

2. 養分がいなくなる

Defiのファーミングはポンジ・スキームです。トークンを直接ファーミングする資金や知識、技術のあるひとがトークンを掘り、それを取引所に供給しています。取引所のローリテラシーユーザーは、トークンの値動きが良いことに飛びつき、SUSHIのようなExitScamと分かっているコインですら売買します。

ファーミングの仕組みは、一部の大口ファーマーが無リスクに近い形でコインを掘り、それを小口のローリテラシーユーザーに売りつけているということです。Defiのプロダクトの中身は違えど、この構図はどれも一緒で、その部分だけ聞けば、ポンジにしか見えません。

つまり、養分がいるから成り立っている仕組みなのです。しかし、もし、養分がファーミングする側にまわってしまうと、掘られたコインを買うひとがだれもいなってしまうため、価格がつかなくなり、市場は崩壊してしまうでしょう。

ゲームチェンジャーはVaultという仕組みです。Vaultとは、Yearn.financeの目玉プロダクトで、端的にいうと、自動投資プログラムです。yETHのValutというプロダクトでは、ETHをあずけておくだけで、最も利率のよいファーミングを自動的におこなってくれます。ユーザーはETHを預けるだけでよいのです。

あまりに簡単な仕組みなので、だれでも使えるようになれば、みんながETHを預けるようになります。すると、みんなそれで儲けるようになり、養分がどんどん減少していきます。

さらにいうと、これらのValutも、メタマスクなどを使い自分でトークンを管理する必要があるので、それでもハードルが高いところがあります。

しかし、Binanceが、このValutへの預入を代行するサービスをはじめました。この場合は、Bainanceでポチっとするだけで良いので、最もリテラシーの低いユーザーですら、ファーミングする側に回ることができます。

ユーザーすべてがファーミングする側にまわってしまえば、もはや養分はいなくなります。

最もリテラシーが低い層がDefiトークンを手に入れられるようになったときに、彼らはそれを売りつける相手がいないのです。そのままDefiトークンを握りしめて、無限の塩漬けということになるでしょう。

3. ハッキング、コントラクトのバグ

最後はハッキングやコントラクトのバグにより大量の資金喪失です。前述のyETH Valutというプロダクトは、あまりに簡単なため、開始されるやいなや大量のETHをあつめました。もし、たったひとつのこのコントラクトに、ETHの10%とか20%、へたして30%とかが預けられてしまったらどうなるでしょうか?

当然そこは狙われます。

yETH Valutは複雑なコントラクトであり、バグが潜んでいる可能性も高いです。単純なバグの可能性から、コントラクトの動作の癖などを逆手にとった攻撃など、あらゆる攻撃をうけるでしょう。

そうした攻撃に長期間耐えられるのかは、非常に疑問があります。歴史的なTHE DAO事件が、再び起こってしまうかも知れないのです。

(なおyETH Valutは上記の理由で現在預かり額に上限をもうけて運用されています)

yearn.financeというDefi界をリードするイノベーターといわれるものによって、崩壊がもたらされるかもしれないというのは、本当に歴史の教科書どおりです。

まとめ。

簡潔に3つのシナリオをまとめます

i. ステーブルコインのペグ乖離から、連鎖精算、流動性不足、価格乖離、信用収縮が連鎖的に起こる、爆弾シナリオ。

ii. 自動ファーミングツールの普及により、養分がすべてファーミングに回ってしまい、Defiトークンマーケットが消えてしまうシナリオiii. 自動ファーミングツールに集まった大量のコインに、攻撃がされて、第二のTHE DAOインパクトが起きてしまうシナリオ。

いずれのシナリオも十分に可能性があります。とくに、iとiiiは、起きた時には手遅れで、逃げることすらできない状態になります。願わくはiiのシナリオですすみ、潮時を迎える前に賢い人はExitしましょう。Exitのタイミングはもうおわかりですよね、床屋に言ったら、床屋がBinanceでファーミングを始めた話をした時です。

それでは、Happy Farming !(大石)