こんにちは。先週、DMMから約4,500 BTCが流出したニュースは、多くの人にとって衝撃的なできごとでした。取引所からのビットコイン流出は、暗号通貨への不安を招き、価格の下落は免れないと考える人もいるようです。

しかし、今回の記事では、少し違った視点から、DMMのハッキング事件がビットコイン価格の上昇につながる可能性を提示してみたいと思います。

先に結論を書いてしまえば、犯人がビットコインを現金化する速度よりも、DMM社がユーザーへの補填のために市場から買い付ける速度のほうが圧倒的に早いということです。

この考え方は、筆者の主観も含まれていますから、「こんな見方もあるのだな」くらいの気持ちで読んでいただければ幸いです。物事を多角的に見ることで、新しい発見が得られるかもしれません。

それでは、早速本題に入っていきましょう。

盗難ビットコインの現金化は難易度が高く時間もかかる ~ BitFinex事件からの学び

今回のDMMハッキング事件、特筆すべきは流出がビットコインである点でしょう。

おなじ流出をするとしても、アルトコインとビットコインとでは世界の注目度もまったく異なります。

ビットコインの動きを追跡するツールには洗練されたものがたくさんあり、犯人の挙動は世界中の誰もが簡単に監視することができてしまいます。

これらの影響が形となったのが、2016年に発生したBitFinex事件です。

約12万BTCがハッキングの被害にあった事件で、当時の価値は約7,100万ドルに相当します。Bitfinexは顧客に対し、盗難額の36%を自己資金で補償すると発表しました。

その後、犯人の追跡は難航しましたが、2022年2月に米国司法省は盗まれたビットコインのほとんどを押収。ロンダリングに関与したとしてイリヤ・リヒテンシュタインとヘザー・モーガンを逮捕しました。

以下のチャートは、米司法省が公開した図です。複雑な経路をたどり、最後に犯人自らのアカウントに紐づいている様子が見て取れます。

↑ 複数の中間経路を経て犯人名義のアカウントにBTCが還流する様子(米司法省)

stice.gov/opa/press-release/file/1470211/dl

これを見ても分かる通り、どれだけ犯人が足跡を消そうとしても、多額のビットコインを移動させる限り何らかの足跡は残ってしまうのです。

結局、ハッキングから6年後の2022年に司法省が押収した9.6万BTCは、盗んだ数量の8割に登ります。大部分が現金化できなかったということですね。

ハッキングで獲得されたビットコインの現金化は難易度が高く、長い時間が必要。それでも尻尾を掴まれてしまう可能性も大きいのです。

DMMで盗難されたビットコインは鎮座中

さて今回のDMMハッキング事件では、10のアドレスに分散してビットコインが送信されています。

そのうちの1アドレスは、こんな感じです。

↑ 犯人のウォレットに鎮座する500BTC(BitInfoCharts)

https://bitinfocharts.com/bitcoin/address/bc1q7p3atj3v95k4pd7qxnnqlhjwu843ty2hqn9gy0

犯行から日も浅いですが、そのまんま移動されずに残っていることがわかります。

この残高に変動があれば、私でさえメールでアラートを受け取ることができます。思いっきり世界中に監視されていますね。

また、まともな取引所であれば、このアドレスを上流に持つビットコインの預け入れは、即通報案件になるところです。

さらにチェーン動向の追跡を行う会社にすれば、犯人を特定することで技術力の証明にもなり、名を挙げるチャンスにもなります。

最初は取引所が犯人に狙われたわけですが、いまや犯人の保有するビットコインアドレスは、世界中の特定モチベーションにさらされているのです。

ビットコインに値上がり圧力が発生しやすい理由

さて、ここまで以下のようなポイントを確認してきました。

◯ 盗難されたビットコインは世界中から追跡される

◯ 追跡を逃れて現金化するためには、数年単位の時間が必要

◯ 犯人も人間なので、尻尾を出してしまう可能性が高い

上記から、DMMから盗難されたビットコインが現金化されるまでには、長い時間が必要となることが推測されます。

一方、DMM社は盗難されたビットコインをユーザーに補填すると言明しています。

「お客様の預りビットコイン(BTC)全量については、流出相当分のBTCを、グループ会社からの支援のもと調達を行い、全額保証いたしますのでご安心ください。」

DMM Bitcoinより

単純に考えれば、犯人がビットコインを現金化できずにいる間も、DMM社は市場からビットコインを買い付けることになります。

つまりDMM社の補填だけでも、4,500BTCの買い圧力を発生させる・・・ということですね。

もちろんビットコイン全体の発行総数に比べれば0.002%程度でしかありません。無視できる範囲とも言えますね。

ただ半減期を終えた今、ビットコインの採掘報酬は一日で450BTC程度となっています。つまり市場から10日分のマイニングによる売り圧力が消えたとも言えるのです。

取引所のハッキングは一見ネガティブに見えますが、場合によって値上がり圧力になるというのは、なんとも不思議な気もしますね。

まとめ

当記事では、DMMのハッキング事件が短期的にビットコイン価格の上昇圧力になる可能性を提起してみました。

盗まれた4,500BTCは、犯人が簡単に現金化できない一方で、DMMはユーザーへの補填のためにこの分を市場から調達しなければなりません。この買い付けは、一日の採掘報酬の10日分に相当しますから、無視するには大きすぎる量とも考えられます。

つまり、ハッキング事件という一見ネガティブな出来事が、皮肉にもビットコイン価格の上昇圧力になる可能性があるのです。

もちろん、これはあくまで一つの見方であり、市場は様々な要因をぶつけ合って今日も元気に動いています。

今回の記事が、同じ事件でも違う角度から見ると異なった見解が生まれるという点で、読者の皆様の参考になれば幸いです。

引き続き、ビットコインには頑張ってもらいたいですね。

ハッピー・ビットコイン!


ココスタ

佐々木徹