さて、今回からEthereum界隈で今大きく話題になっているEIP1559という変更提案について少しづつ説明します。

EIP1559とか、イーサリアムの手数料計算の方式が変わる、という話はおそらく耳に挟んだ人も多いと思いますが、詳細を理解している人はそこまで多くはないと思います。

自分自身も当然存在自体は結構前から知っていましたし、漠然とどんなものか理解はしていましたが、いままでそこまでちゃんと調べてはいませんでした。

イーサリアム関連のこういう技術提案は周辺のノイズやポジトークも結構多く、中々重要な論点にたどり着くのが難しいことが少なからずあるので正直調べる気持ちが中々でなかったのですが、この件はイーサリアムだけでなくビットコイン、また市場全体に与える影響も少なからずあるので、ビットコインやビットコイン保有者に関係あるところを中心に必要十分な情報をさらっていこうと思います。

なお、このEIP1559は現在進行形で色々新しい提案が起きていたり、開発者やマイナーの新しい動きがあったり、論点も多いので、複数回に分けて少しづつ重要なポイントを3月~4月中に解説していく予定です。

そもそもEIP1559が解決しようとしている問題とは?

EIP1559についてはビットコイナーとして外部から見ていると、「めちゃくちゃやばい!大きな変更!ガス代もこれで下がる!!」「Etherの供給量が漸減していくようになって、ビットコインよりさらにUltra sound moneyになる!」とかそういうちょっと大げさな主張も良く見られて、そもそもどこまでが本当でどこまでがポジトークなのか自分もちょっとわかりづらかったのですが、そもそも今の手数料の仕組みの何が問題なんでしょうか?

ここに参加している人の多くはすでに知っている通り、ビットコインやイーサリアムでトランザクションを生成する時は、自分でマイナーに支払いたい手数料のレートを決定し(ウォレット上で異なる優先順位を選択することが多い)マイナーへ送金リクエストを投げるような仕組みです。

ブロックが空いている(トランザクションが少ない)時は、この手数料は非常に安くても問題なくすぐにTxは承認されるのですが、自分以外にも競合するトランザクションが増えてしまうと、高い手数料を支払わないと中々自分のトランザクションをマイナーが優先して承認してくれないわけです。この仕組みは一種のオークション方式になっており、基本的にはその他のユーザーと比較した時に高い手数料を提示した人からブロックへのアクセス権限を入手できる(競り落とせる)というような仕組みになっています。

このように自分が設定した金額(手数料)がそのまま最終的な支払い価格になるオークションをFirst price auctionと呼んだりしますが、このような仕組みは一般的な経済学の考えでは「払いすぎ」(Overbidding)問題を起こすことが多いと指摘されることがあります。

例えばシンプル化した例を出すとすると、自分が次のトランザクションを急いで次のブロックに入れたいとして、自分の心の中では最大1000円まで手数料を払ってもいいと思っているとしましょう。ただしもし他のユーザーは全員全く急いでおらず、みんな10円程度くらいまでしか手数料を支払う気がない場合、本来自分はせいぜい20円くらいの手数料を入札すればすぐに次のブロックに入るはずです。ただし、他の人の入札をきちんと観察していないと本来手数料20円で十分なところを1000円と過剰にマイナーに支払ってしまう可能性がある、というような話です(マイナーにとってはおいしい話ですが)

実際こういう問題は現在ガス代の高騰に苦しんでいるイーサリアムだけではなくビットコインでもよくある話で、ウォレットが提示する手数料の通りに高い手数料を払ったらたしかに一瞬で承認されたが、マニュアルに低い手数料を入れても案外すんなり承認された(手数料を払い過ぎていた)なんて経験をしたことがある人も結構いるのではないでしょうか?今の設計で確実に次の何ブロック以内に承認される手数料を決める、というのは案外複雑で、その他のユーザーのリアルタイムの行動にも影響される中々難しい問題なのです。

他にもこのような手数料の仕組みは、手数料の水準の大きなぶれ(Volatility)を引き起こしやすく、ユーザーの視点から言うと特定のタイミングでの手数料が予想しづらい、などのユーザー体験の面での問題なども引き起こします。

EIP1559の元々の狙いはこのユーザー体験を改善し、手数料の仕組みを最適化することで現状の手数料高騰問題やUXの悪さを軽減することだったようです。EIP1559はイーサリアムの手数料マーケットに関する変更提案ですが、共通の課題はビットコインにも当てはまるのでここら辺の課題は理解しておいた方がいいでしょう。

EIP1559とは何か?

上記の課題を解決するために提案されたEIP1559の仕組みの要点は以下のようなものです。

1.ガスリミット(ブロックサイズ)を最大2倍へ引き上げ可能に
2.現状の完全変動手数料から、ブロックごとの固定のBase fee(基準値)を設定し、基本的にはユーザーはこの手数料を支払うような形に変更

3.Base feeはブロックごとのトランザクションの状況に応じて自動的に調整され、ブロックの利用度が長期的にキャップの50%に収束するように設定されている

(例えばトランザクション数が増えてくるとこのBase feeが引き上げられ、利用トランザクションは理論上は減っていき、ブロックが空き始めるとBase feeはどんどん引き下げられていく。一種の可変ブロックサイズ制のようなものとも見なせる)


3、Base feeに加えて、ユーザーは追加でマイナーに対して「Tip」を支払うことで、優先的にトランザクションを取り込んでもらうことが出来る(ここの仕組みは現状と同じ

4.ブロックごとに設定されるこの固定のBase fee(基準値)はマイナーに支払われるのではなく、Burn(使用不能)にされ全体のEtherの供給量が減っていく上記のような仕組みがETH1559です。このような仕組みがもたらすメリットとして、

・手数料の計算(特にBase fee)が予測しやすくなるブロックがフルになった場合、次のブロックのBase feeは1.125倍化されるような仕組みになっているので、「フルブロックが3回続いたらBase feeはいくら」など手数料計算が簡素化、予測しやすくなる

・理論上はFirst price auctionの払い過ぎ問題を軽減するので、現状と同じトランザクションやトランザクション数を払う場合にも、若干支払う手数料が安くなる可能性がある(ブロックの混雑度などによるが、次回以降もう少し詳しく説明)

・手数料のBase feeの部分はマイナーに行くのではなく、Burnされるので、マイナーが自らトランザクションを大量に発行して手数料の水準を引き上げる、というような攻撃がしづらくなる。

などが考えられます。

冒頭で少し触れた「EIP1559でEtherの供給量は漸減化していってよりSound moneyになる!」という主張も、このBase feeと呼ばれるブロックごとの固定の手数料がBurnされるから出てきた副次的な効果のようです(ただしこれについては自分は全く妥当な主張とは思わないのですが、後で触れます)

さて、というわけでこれがEIP1559が提案された背景とコンセプトの要点です。ビットコインとも共通する問題もあるため、全体を理解しておいて損はないでしょう。

では実際このEIP1559がアクティベートされたら、上記のようなガスプライス/手数料問題が軽減され、またFeeの一部がBurnされることでEtherの資産性が増し、価格もにもポジティブな材料になる重要な変更なのでしょうか?本当にそんないいことばかりで、何か落とし穴はないのでしょうか?またこの提案についてマイナーが反対しているというニュースが出ていますが、それはなぜか、これからどうなりそうか、マイナーからの大体提案などについて次回以降また少しづつ説明していきます。