今回の記事では、ちょうどツイッターで話題になっているのを見かけたので、私が最近の寄稿でテーマにしている「カストディやオフチェーンで十分な場合」を念頭に、NFTについて考えます。

現在のビットコインのレイヤー1、レイヤー2でのNFTの利用を踏まえて、NFTの将来性はどこにあるのか考えていきましょう。

便宜上、この記事でNFTとは1つ1つが分割不可能で発行枚数に上限のある、レア度や性能など何らかの性質を表すデータを持つトークンと定義します。また、前提として主にゲーム向けのNFTの話をしたいと思います。
LIQUID上のNFT

ライトニングを使ったゲームとして開発中のLightniteというものがあります。ゲーム自体は大人気のバトルロワイヤルゲーム「Fortnite」に似せてあり、相手プレイヤーを倒すとsatoshiがもらえるというものですが、今週こちらのゲームのスキン(強さには影響しない、キャラクターの衣装)をLiquid上のLiquid Assetsという仕組みでNFTとして発行したことで話題に上がりました。

ゲームとしての楽しさとして、satoshiを勝ち取ったり失ったりできるモードではスキンも勝ち取ったり失ったりすることができ、またこのモードで失われたが他のプレイヤーに拾われなかったスキンはバーンされ、残ったものの希少性が上がる、というシステムがあるようです。
現時点で、ユーザーが独自にスキンを作る仕組みはありません。

Liquidは現状ではほとんど利用されていませんが、それはすなわち利用コストの安さにつながるので、Liquid Assetsの仕組みでLiquid上でステーブルコインやNFTを発行する流れはしばらくは続くでしょう。

ちなみに現状のLiquidで捌けるトランザクション量はビットコインのレイヤー1とほぼ同数なので、何かLiquid上のものが非常に流行した場合に送金コストが高くなり、単価の低いNFTには逆風となることが考えられます。
LN上のNFT

LN上でNFT・カラードコインを取引できるようにすることが目的のプロジェクトはRGBやInazmaなどいくつかありますが、厳密にはオンチェーン(ビットコインまたはイーサリアム)で発行・決済してLN(のようなネットワーク)上で取引するという分担になっており、オンチェーンのNFTと同様の制約を受けます。Multi-asset channelsの仕組み自体がそうなっています。(Liquidと違い取引記録を当事者しか持たないので、ブロックチェーンへの記録なしでは実現できない)

オンチェーンのNFT

ビットコイン上では、有名どころではカウンターパーティーを利用したRare PepeというNFTが2016年頃に登場しましたが、最近ではビットコインブロックチェーン上のNFTはコスト面であまり使われなくなっています。
この変化は、よほど価値のあるNFTの取引でなければ1回数百円以上払ってNFTを配布したりトレードしたりすることは非経済的だということが1つの理由でした。

Rare PepeやPepecashの歴史については東さんの記事「さらばPepecash~Pepecashの歴史を振り返る in 2020~」が詳しくて面白いのでぜひご覧ください。Rare Pepe・Pepecashコミュニティがどのような文化を持ち、流行りだしてどう変化していったのかなど、貴重な証言だと思います。

オンチェーントランザクションのコストによって、非常に高額のユースケースはまだしも、ゲームのNFTなどがビットコインブロックチェーン上で直接扱われることはおそらく今後ないでしょう。

ブロックチェーンではないゲームアイテムのRMT

ゲームに限った話で言えば、ブロックチェーンではないがゲームアイテムの所有権を取引できる(Real Money Trading = RMT)プラットフォームは多くあります。大抵は非公式で規約違反または非合法ですが、ゲームプラットフォームのSteamでは公式のCommunity Marketという場所で活発に対応ゲームのアイテムが取引されています。

ここで取引しているユーザーは、プロフィール画面を飾ったり、ゲーム内でガチャを引いたり、特別なスキンを得るため、あるいはゲームをプレイしていて得られたアイテムを現金化するために使用しているようです。

レイヤー2でのNFTの課題

そもそもゲームアイテムなどを表すNFTをブロックチェーンに乗せることは多くの場合、「クロスプラットフォーム対応」(1つのNFTを複数のゲーム等で使える)、「ゲームアイテムの取引の自由化」(二次市場での売買)、「希少性の検証」の3つを目的として行われます。

クロスプラットフォーム対応・アイテム取引自由化について一番の課題は「ゲーム制作側にとって美味しくない(インセンティブがない)」ことと言われています。他のゲームのアイテムを使い回せる・売買できるように作ることで生み出せる付加価値が何なのか、失われる売上がどれくらいか、という問題で、これらの点に関しては今後も実験が続けられることでしょう。

一方、希少性の検証ができることはまさにLightniteのコンセプトに合致しているユースケースだと思います。しかし、よほど価値のあるアイテムでなければ、使用にかなりコストがかかってしまう金銭価値の移転に使われるブロックチェーン上での取引は難しいと考えています。

また、そもそもNFTはゲームアセット自体ではなく、ゲーム内で特定のゲームアセットとして表現される識別子の所有権なので、ゲームのアカウントが凍結されたりアセット自体が変更・廃止される可能性があるため、耐検閲性とトラストレス性は限定的です。(「NFT自体」に耐検閲性・トラストレス性があっても、それが表すもの自体にないため。トークンを持っていても裏付けのドルが消えたり凍結されてしまう可能性のあるUSDTと似ていますね。)

独断:NFTの最適解

ゲーム用NFTこそ、ここ数回の寄稿で説明させていただいたような「コスト面からオフチェーン・カストディアルに流れていく」部類のものだと考えています。特に希少性の検証という付加価値は、ゲームアセットという中央集権的な資産に関してできる限りのトラストミニマルな仕組みが実現していると言えるでしょう。

極端な話、金銭的価値によらず全ての場合においてオンチェーンでやるべきというのはまさにビッグブロッキズムに他ならないです。

したがって、USDTがコスト面からビットコイン、イーサリアムを追われ、トロン上で発行されるてきているように、ゲーム用NFTも違うブロックチェーン上、あるいはブロックチェーンとは全く無関係のデータベース上に落ち着いていくのではないかと思います。Steamの運営元であるValveが独自のブロックチェーンを発表するのも、あながちありえない話ではないでしょう。

Steamエコノミー 公式ドキュメント (ゲーム制作側向け)