新世代のDefi、Curve.fiのガバナンストークンとして鳴り物入りで先週に主要取引所に上場したのもつかの間、大口の間で奇妙な綱引きが行われています。

特に物議を醸しているのは、報酬のブーストという機能です。

CRVでは、他のDefiプロダクトと同様に、流動性を提供すること(LP)により、その額に応じてインセンティブとしてCRVトークンが配られるという設計になっていました。このあたりの配布の方法はスタンダードでした。配布は長期にわたって行われ、長期のインセンティブをもたらします。

さて、では手に入れたCRVトークンは何につかうのでしょうか?大概のガバナンストークンは、なにかプロダクトの変更などの意思決定の際に投票できるといったくらいしか使いみちがないため、その価値づけをめぐって議論が起こっているのはご存知のとおりです。CRVでは、単なる投票券のほかに、報酬をブーストするためトークンとしての性質を付与しました。

来週より、Curveでは、新規に発行されるCRVの割当が、なんと60%もカットされます。つまり、いきなり報酬が60%減ります。

そのかわり、この60%は、CRVトークンの「現保有者」の間で配分されるという配布方法に移行します。

「現保有者」と書きましたが、単に保有しているだけではだめで、コントラクトにトークンを「ロック」する必要が有ります。その期間が1年とか2年とか長期です。擬似的なPOSですね(バリデータなどはありません)

しかし新しく立ち上がったコインですから、一般の参加者はトークンを余り持っていません。大量のトークンを保持しているのは、当然ながら運営です。

そして、昨日、物議を醸したのは、このロックのシェアのうち運営が7割以上になっているということです。つまり、一般の報酬を6割減らした上、その6割の新規割当を運営が7割持っていくわけです。

ひどい話です。

ブーストという名を借りた一般ユーザー報酬カット

これが実態なのですが、運営側としては、このしくみを「報酬のブースト」だと言っています。

CRVをロックすることで、最大2.5倍に報酬が増えるしくみだと宣伝していて、みんなそれによってたかっています。

どういうことでしょうか?普通のひとは流動性の報酬を6割をへらされますが、CRVトークンロックに参加すると最大でその減った6割分を稼ぐこともできます。ロックをしていないひとからみると、差し引き2.5倍に報酬が増えるチャンスがあるようにみえるというわけです。

「増える」と表現しているのですが、実際は流動性報酬のカットにすぎず、CRVトークンロックという別のチキンゲームに参加を強制させられているわけです。そしてそのトークンロックゲームは、すでに大量のトークンを保有している大口(開発者)が圧倒的に有利で、ほとんどの報酬をかっさらっていくという。

ガバナンストークンの「蛇足」

他にも、Curveは、いくつかのプールにわかれているのですが、そのプールの間で報酬を配分する比率も、CRVトークンの投票できめる仕組みが導入されました。DAIなどを提供しているCompaundプールに大口がいて、ここに大量に投票したため、このプールだけが異常な利率を稼ぐことになりました。

ということで、CRVのガバナンストークンは、2つの使いみちが(ロック報酬を得る、プールの配分比率を投票する)が出来たので、無用のトークンではなくなっったのですが、このトークンをつかった大口の糞の投げ合いは、本来のCurveのプロダクトとはまったく関係ないレイヤーで行われています。

Curveは多様で、流動性のあるステーブルコインの交換市場を提供したというのが成長の理由だったとおもうのですが、トークンの登場のおかげで、本来のインセンティブが上書きされてしまい、おかしなこと(資金が偏ったり、いきなり変動したり)といったことがおきてしまっています。

完全にガバナンストークンが蛇足になっている事例です。なおCurveを利用するにも運営するにも本来ガバナンストークンは不要です。

いわゆるPOSのブロックチェーンとちがいイーサリアムのDefiのセキュリティはイーサリアムのマイナーが担っています。各Defiプロダクトはそのうえで展開されています。POSチェーンは自前のトークンを、バリデータにロックすることで、ネットワークのセキュリティをブロックの生成をおこなっているため意味がありますが、Defiにおけるトークンロックはそういう意味もなく、全くのチキン・ゲームでしかありません。

裏の意図を貴方はよみほどけるか?

まとめると、CRVからの学びは2つです。

i. 本来不要のガバナンストークンの導入により、本来のプロダクトの意図が歪められてしまうという失敗。よくあることですが、CRVでは顕著です。

ii. ユーザーにむけたインセンティブの提供と見せかけて、うまい具合に大口や運営側に有利なようになっている配布の設計

この2つは、この手のトークンでは「あるある」なので、良く見極められるようになりましょう。

とくに後者ですが、あからさまに大口や運営にトークンを割り当てたりするとバレてしまうので、こうした巧妙な方法が取られます。またSEC対策的な意味で最近はICOもできませんので、このように継続的にガバナンス目的のトークンを配ることで証券でないという言い訳をしています。

しかし、普通に配ったのではおいしくないので、巧妙に自分たちに有利なルールを設定しています。その裏の意図をちゃんとよめるかどうか。乗せられて損をするのは誰か?そう、小口のユーザーや、取引所でトークンを買ったひとたちですね。

なお、このトークンロックは複雑なコントラクトにアクセスしているのか異常にGas代がかかります。私がやってみたところ、100GWeiで30ドル、20Gweiのときは60ドルもかかりました。アホみたいな額ですね。

これでは小口は全く参戦できず、大口の思うように「ガバナンスw」がされるというわけです。イーサリアムの手数料の高騰で、小口ホルダーがガバナンスから排除されてしまっています。当然、手数料を気にしないでよい大口は、手数料の高騰をむしろ喜んでいます(大石)