マイニング排熱の活用事例 | 家庭用マイニングヒーターは採算が取れるのか?
先日、「アメリカで開催されたCES 2026というテクノロジー業界・家電製品業界で有名な展示会において、ビットコインマイニングできる給湯器がデモされている」という内容の投稿が日本のツイッターでバズっていました。
フィジカルAIブームの中突如現れた謎テクノロジー。
— 五十嵐 (@biz_fx50) January 10, 2026
CES 2026で話題。
“ビットコインを掘る給湯器”が登場。
・50ガロン給湯器にASICビットコインマイナーを内蔵
・消費電力は通常の電気給湯器と同等
・給湯しながらBTCを生成
・マイニング収益で給湯コストを相殺できる可能性… pic.twitter.com/mrCjxHrhjc
本稿の読者のみなさまは既にご存知かもしれませんが、実はマイニングの排熱活用はかなり昔から進んでいる分野であり、例えばカナダでは周辺地域の家庭用暖房や農家のハウス栽培に、アラブ首長国連邦では海水の淡水化に活用するプロジェクトが進行しています。


実際、日本ビットコイン産業のオフィスにもAvalon Mini 3というマイニング排熱を使ったヒーターが設置されています。「令和からのBTC相談所」チャンネルの動画で紹介されています。
今日はそんなマイニング排熱を活用した製品について紹介しつつ、果たして経済的合理性はあるのかを試算してみます。
- マイニング排熱の大規模活用事例
- 家庭用のマイニングヒーターも数多く存在
- 再生可能エネルギーとマイニングの相性の良さ
マイニング排熱の大規模活用事例
マイニングは大量の専用チップ(ASIC)に計算を行わせるため、多くの排熱を生みます。マイニング機材を見たことがある方は冷却ファンの存在感が印章に残っているかもしれません。同時に、このファンが回転する騒音も凄まじいものです。
日本で売電開始前の再生可能エネルギーを使ったマイニングを行っているアジャイルエナジーX社のサイトの取材動画です。
この排熱は厄介で、ASICを十分に冷却できなければ機材の寿命や性能にも影響してしまうため、多くの場合建屋のファンによって屋外へと放出されます。しかし、熱自体にも価値があることに注目し、マイニングの排熱を大規模に活用している事例もあります。
例えば冒頭で紹介したように、海水の淡水化プラントや農業用ハウスの熱源としての利用です。下の動画はオランダでチューリップの栽培にビットコインマイニングの排熱を使っている事例のものです。チューリップバブルに例えられることがあるのでユーモラスな取り組みでもあります。
ニューヨークの温浴施設では、アメリカで自宅のプールをマイニングの排熱で温水プールにした人がいることを知って、計算力2000TH/sほどのマイニング機材を購入し、施設の水温管理に活用しているそうです。これは設備投資した当初なら年間で1.5~2 BTCほど採掘できる規模でした。もちろん、施設の熱源すべてをマイニング機器に交換したわけではありませんが、光熱費も大きくは変わらなかったそうです。
2000TH/sというと、以前に紹介したBitaxe Supraなら3000台、冒頭で紹介した動画に出てくるAvalon Mini 3なら50台に相当します。しかも導入したのは2022年頃なので、当時の性能で言えばかなり大きいハッシュレートでした。
Bitaxeについては過去記事をどうぞ。

これらの施設は熱源としてビットコインマイニングを使う判断をしたわけですが、これは熱効率に注目すると必ずしも最善の選択肢ではありません。例えばヒートポンプが使えたり、安価な化石燃料が手に入る(電気以外の選択肢がある)などの条件があればそちらのほうがトータルで見てもコストが低い可能性だってあります。
しかし、マイニングの排熱活用によって得られるメリットもあります:
・事業活動を通してビットコインを積み立てることができる
(電気代のキャッシュバックをもらうような形でビットコインが得られる)
・マイニングの分散化に貢献し、ビットコインを強化できる
(創業者・経営者のやりがい、極端な話だとビットコインの安全保障につながる)
・ビットコイナー向けのマーケティングになり知名度が得られる
(ニュースに取り上げられ来客が増える、積極的に選ばれる施設になる)
マイニング以外でのビットコインの事業活用と同じく、広範な効果が期待できます。
家庭用のマイニングヒーターも数多く存在
もっとスケールを落として、800WのAvalon Mini 3のように個人宅に置けるようなプロダクトも多数存在します。型落ちのASICを買って、消音用の箱に入れて自宅で運用している人もいます。


消音用のキットを販売しているサイトの例
特に日本では家庭用電力の料金がかなり高め(30円/kWh前後)なので、最新のマシンを使っていても初期投資はおろか電気代の回収すらできませんが、趣味の言い訳としては冬に多少の暖がとれます。(逆に夏は稼働させられないでしょう)
例えばAvalon Mini 3を例に取ると…
1ヶ月の電気代:800W×24時間×1ヶ月×30円/kWh = 17,280円
1ヶ月の採掘BTC:約43,000 sats(0.00043000 BTC)=6,490円
ただし、仮に同じ性能の電気ヒーターを24時間つけっぱなしにしてもよいと考えていたら、その分の電気代が浮いたという見方もできます。
エアコンの電気効率はヒートポンプによって400%前後といわれるので、実質的に電熱線(100%)であるAvalon Mini 3と同等の暖房効果を得ようと思うとエアコンの消費電力200Wに相当するといえます。
Avalon Mini 3の暖房効果に相当するエアコン200Wの電気代:4,320円
したがって実質的にAvalon Mini 3の赤字は月に6,470円といえるでしょう。
また、同じく実質的に電熱線であるセラミックファンヒーターを24時間稼働させている人はいないと思いますが、もしいたら熱量あたりの電気代はAvalon Mini 3と同じになると予想されるので、追加負担なしで月に0.00043 BTCが丸ごともらえる計算になります。
もちろん、マイニング機材のほうが初期投資としては高くついてしまうことと、暖房器具としての設計の違いから、専用の暖房器具のほうが体感として暖かい可能性はありますが…。
再生可能エネルギーとマイニングの相性の良さ
再生可能エネルギーとマイニングの相性の良さはかねてから言われていることです。
ご存じない方のために説明すると、再生可能エネルギーの多くは自然現象によるもので、発電量が激しく上下します。再エネの比率が高まるほど発電量のコントロールは難しくなってしまいますが、電力系統に過剰な電気を供給しても供給が不足しても停電が起こってしまいます。
そこで、常に余剰な電力を発電しておいて、マイニングで柔軟に余剰分を消費すれば、本来売れなかった電気でビットコインという形で収入が得られる、というモデルが提案され、実際に世界中で稼働しています。
※より抽象的にいえば、再エネでなくても「貯蔵できない余剰エネルギーが存在する」同じ図式が成り立ちます。この話は以下の3つの過去記事でおさらいしていただけます。


マイニングによる余剰エネルギーの消費は電力需要の応答という側面が注目されがちで、実際に上場しているビットコインマイニング企業などを見ても売上の大半が「節電に応じた報酬」となっていたりしますが、もしマイニング機材からの排熱を活用できればこのモデルはさらに収益性が高まるでしょう。
ただし、電力需要に応じて電源を切ることがあるので、農業用ハウスのようなナマモノを扱う活用方法は向いていないかもしれません。「不定期にオンオフされるマイニング機器の排熱」の活用方法を思いつくことができれば新しいビジネスモデルの発見につながるかもしれません。
まとめ
・ヒートポンプには電気効率で劣るが、単純な電気ヒーターと比べればマイニング機材は同等に暖房効果があり、経済性の面でメリットがある。ただし、初期投資は高い。
・農業用ハウス、温浴施設、淡水化プラントなど、熱を必要とする業態との相性がとてもよい。
・再生可能エネルギーの欠点を補うマイニング事業の新たな収益源となる可能性も秘めている。
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