今回は質問コーナーから頂いたお題です。

質問: 日常的に見ている統計データがあれば教えてほしいです。
>今のところ1億ほどしか存在しないUTXOセット
これは自分のノードから得た情報なのでしょうか。

おそらくダストリミットに関する記事を読んでいただいたことがきっかけのご質問です。記事内でUTXOセットの肥大について触れた部分を引用してくださっています。

ダストリミットはポリシーによる制限なのに比較的守られている理由
ここ半年の間、ビットコイナーの間で(何の生産性もない)議論を巻き起こしているOP_Returnに関するポリシールール緩和ですが、緩和する理由としてもはやポリシールールの既定値に関わらず迂回されてしまっていること、迂回のためのインフラがビットコインの公平性を歪めたり(マイニングの中央集権化につながる)使い勝手を悪くする(手数料推定の正確性を毀損する)ことが挙げられます。これを元に緩和してしまったほうが良いというのがBitcoin Core開発陣の多数の判断です。 💡実際に緩和したところで、大きなデータの記録にはOP_Returnを使うより安い方法があるので大した影響はないと予想されます。そういう意味でも本当に不毛な議論です。 さて、ポリシールールには色々ありますが、その中の1つにダストリミットがあります。これはトランザクション出力について、アドレスタイプごとに「最小金額」を決めています。前提として、「使うのに必要な手数料より少ない金額のUTXOは非経済的であり、正当な使い道はない」という発想があります。(使おうとするとむしろマイナスになる!) アドレス形式 ダストリミット(

確かに、ビットコインの状況を正しく理解するにはネットワークや市場のデータをある程度把握しておくに越したことはありません。ここ最近では、本稿で他にもデータをベースにした記事をいくつか掲載しています。例えばデータから見たライトニングネットワークの全体像です:

データから見るLNのパブリックノードの全体図
ライトニングネットワークの可視化を行ってくれる「ライトニングエクスプローラー」と呼ばれる種類のサービスには数社あり、老舗の1ML.comや最大手のAmboss.space、さらには人気ブロックチェーンエクスプローラーのmempool.spaceなどが参入しています。大量のデータを集めてユーザーに見つけやすくすることで価値を提供しているこれらのサービスですが、実はブロックチェーンエクスプローラー同様、彼らが収集しているデータの多くは一般的なライトニングユーザーにも収集可能なものです。 というわけで、ライトニングネットワークを流れてくるゴシップ情報を保存する仕組みを構築してみました。今回は自分のノードが受信した約10日分のライトニングネットワークのゴシップデータをもとに気づいたことを取り上げてみます。 💡ちなみにAmbossなどで提供されているすべてのデータがライトニングノードから取得できるわけではなく、例えば外部からノードのアップタイムを監視したり、ノードから自主的に提供を受けたり、あるいはエクスプローラーへのアクセス解析のようなメタデータを活用するなど、エクスプローラーによって真

というわけで、今日はオンチェーン・ライトニング・市場の3つの観点から、定期的に確認すると状況が見えてきやすい信頼性の高いデータの手に入れ方について書かせていただきます。

・オンチェーンはデータサイトが充実している

・LNはデータと肌感覚が一致しにくく、一次情報の取得が望ましい

・技術だけでなく、市場についての情報も重要である

オンチェーンはデータサイトが充実している

ビットコインの長い歴史とオープンなP2Pネットワークという特徴から、オンチェーンデータについては探しにいけるサイトが非常に充実しています。

例えばブロックチェーンエクスプローラーという1つの用途をとっても何十というサイトが思い浮かびます。私は使いやすさから人気が高いmempool.spaceをメインで使用していますが、データの絞り込み検索が優秀なBlockchairもおすすめです。なんとデータベースのダンプも提供してくれたりします。(と思いつつBlockchairに行ったらエラーが出ていたのでリンクは外しました)

Walletexplorer.comのように、取引所など有名なウォレットを見ることができるサイトもありますが、ラベリングがあまり正確ではないことが多いです。ビットコインはアドレスを使い回さずに利用できるので、ある程度のプライバシーが実現できる証拠ですね。

当然ですが、ブロックチェーンエクスプローラーは「探したいものがすでにわかっている人」のためのツールで、ビットコインを俯瞰するためのツールではありません。ここからはその役割のツールを紹介します。

テキストベースのダッシュボード:Clark Moody Bitcoin

まず、一箇所にまとまっているサイトがほしければClark Moody Bitcoinというダッシュボードが至高です。様々なテーマについて、ビットコインの最新状況がすぐにわかります。冒頭の例でいえば、自分はUTXOセットの大きさをおよそ1億と記憶していましたが、Clark Moody Bitcoinによると1.66億ほどだそうです。

Dashboard
The entire Bitcoin economy at a glance

自分のノードで確かめることもできます。Bitcoin Coreであればbitcion-cli gettxoutsetinfoでUTXOセットについての情報を出力できます。実行には多少時間がかかりますが(デバイスにもよりますが、ミニPCで10分程度)、以下のような出力を得られます:

bitcoin-cli gettxoutsetinfoの出力

また、UTXOセットに限ればutxo.liveというサイトがきれいなビジュアリゼーションをしています:

UTXO.live
Bitcoin Transaction Heatmaps

なお、ビットコインノードは「ネットワーク全体のデータ」を把握するために作られてはおらず、むしろTXIDでしかトランザクションを検索できない(ブロック高やアドレスなどから検索できない)など、データ取得元としては使いにくいです。

時系列データ:Statoshi, CryptoQuant, Bitcoin Magazine Pro

時系列での変遷が見れるタイプのサイト、いわゆるダッシュボードですがStatoshiCryptoQuantが優秀です。特に後者は有料版もありますが、かなり色んなデータを網羅しています。GlassnodeもCryptoQuant同様のサービスですが、最近は押されている気がします。そういえばBitcoin MagazineもLookintobitcoinというサービスを買収してBitcoin Magazine Proとしてダッシュボードを提供しています。

手数料:Johoe's Mempool Statistics、Mempool.observer

いまの手数料水準が知りたいだけならmempool.spaceで事足りますが、過去の変遷が知りたければJohoe's Mempool StatisticsMempool.observerも選択肢に入ります。ただ、最近増えてきた1 sat/vbyte未満のトランザクションにはどちらも未対応なようで、過去データとして振り返れるように早急な対応が求められます。

mempoolの現況であれば、やはりノードから取得することもできます。これを解釈するのゲキムズですが…
オンチェーンの送金手数料がさらに安くなった理由とその影響は?
最近mempool.spaceをご覧になった方は気づいているかもしれませんが、ビットコインの手数料相場がこれまでより1桁安くなっていることが出てきました。従来であればトランザクション手数料の下限は1 sat/vbyteだったので、どれだけトランザクション需要が少ないタイミングでもそれだけ手数料を払う必要がありました。しかし、最近では0.1 sat/vbyteのトランザクションすら見られます! 今日はこの変更がどういう経緯で行われたのか、そしてどういう影響が見込まれるかを解説します。 ・Bitcoin Core 30において規定値が変更予定。それに先立ち対応するマイナーも ・1 sat/vbyteが手数料相場の「下限」だった理由と、制限緩和のメリットデメリット ・前もって対応しているマイナーは損をしているのではないか?

マイニング:Braiins Bitcoin Mining Dashboard

Braiinsは前身がSlush Poolという世界初のマイニングプールで、今もカスタムのファームウェアを提供するなど様々な工夫をしています。彼らが提供しているBraiins Bitcoin Mining Dashbaordはマイニングの状況を見るのにうってつけです。また、Luxor社が提供するHashrate Indexというサイトも、中古ASICの相場やハッシュプライスなど、より実践的なデータが集まっています:

Hashrate Index - Your Definitive Proof-of-Work Source
Bitcoin mining data, metrics, and analysis for bitcoin miners to unlock a better understanding of hashrate and the bitcoin mining market.

LNはデータと肌感覚が一致しにくく、一次情報の取得が望ましい

Amboss一強だが…

ライトニングについてデータを取得するときはAmboss.space一択に近い状況が続いています。しかし、注意が必要です。個人的にはAmbossでは「特定のライトニングノード」についての情報を検索するのは非常に有益だと感じていますが、「ライトニングネットワーク全体」についてのデータはそれほどでもありません。

昔から言われていることですが、パブリックなライトニングネットワークのキャパシティは必ずしも決済利用量の成長を反映していません。発生している送金は第三者の目に触れることはありませ#んし、エンドユーザーがノードを持っていてもプライベートチャネルしか持っていなければ統計には現れません。また、カストディ型ウォレットのユーザーについてもデータは希少です。(同じカストディ型ウォレットのユーザー同士の送金をライトニングの送金と数えるべきかについても、意見が分かれるでしょう)

以前の記事で分析したデータは、自分のライトニングノードから取得したものです。例えば自分のライトニングノードが今までに見たすべてのチャネルやノードについてのデータはlncli describegraphで取得できますし、APIを活用すればリアルタイムで流れてくるデータを扱うこともできます。そして資金を投じて中継ノードをやれば、実際にネットワークを流れる送金の量や金額感にも触れられるでしょう。かなり真剣にやる必要はありますが。

つまるところ、ライトニングに関してはその性質上、一次情報の重要性が非常に高いので、真剣に分析するのであればなんらかのサービスを提供したり、中継ノードをやる必要があります。

技術だけでなく、市場についての情報も重要である

私は技術面にばかり注目しがちなところがありますが、市場についての情報もビットコインに対する一般的な理解の現状を把握するのに重要です。近年でいえばETFに関連するデータ、ビットコイントレジャリー企業に関するデータ、「ビットコインL2ブーム」に関するデータなどでしょうか。

先述したCryptoQuantなどのダッシュボードにあるので、ついでに確かめるのがいいと思います。とはいえ、解釈するのにある程度の背景知識もいるのでニュースはある程度追っておきましょう。それを言い出すと、UTXOセットのデータを理解するのにもOrdinal InscriptionsやStampsなど、流行りのメタプロトコルの存在を認識する必要があったここ数年ですが…。

Ordinalsは全satsに通し番号を振るフルオンチェーンNFTプロトコル
ここ数日で話題になっているビットコイン上のプロジェクトに、OrdinalsというフルオンチェーンNFTプロトコルがあります。 個人的には直接ブロックチェーンを利用するNFT自体が無駄という意見なので、フルオンチェーン(紐づけるファイルのデータを全てブロックチェーン上に記録する)は愚かとさえ感じますが、もちろん対価となる手数料さえ払えば何を記録するのもユーザーの自由なので今日はそこを議論するつもりはありません。 Ordinalsがどういう仕組みなのか、特にCounterpartyやRGBなどビットコイン上でNFTを扱うことのできる他のプロトコルとどう違うかに焦点を当てていきます。 Ordinals Ordinal Theoryとは Ordinal Numbersとは序数、つまり順番の番号(何番目)を指す言葉で、Ordinal Theoryは「ビットコイン上で発行された全てのsatoshi (sats)に固有番号を振るシステム」というような意味を持ちます。具体的にどういうことでしょうか。 例えばビットコインの最初のブロックで50BTC、すなわち50億satsが発行されたとき、

Ordinals関連は本稿がおそらく日本で最初に取り上げました

まとめ

・オンチェーンデータに関しては優秀なサイトやダッシュボードが多数存在するため、必要に応じて取捨選択して見ると良い

・ライトニングに関しては、特定のノードについてのデータはともかく、ネットワーク全体のデータは乏しい上に現実をあまり反映しないため、中継ノードやライトニング上のサービス運営などで一次情報の取得から頑張る必要がある

・データを取得しても、解釈できなかったら意味がないので、様々な背景知識を深めていく必要がある