ビットコインを定点観測するためのおすすめデータサイトや取得方法
今回は質問コーナーから頂いたお題です。
質問: 日常的に見ている統計データがあれば教えてほしいです。
>今のところ1億ほどしか存在しないUTXOセット
これは自分のノードから得た情報なのでしょうか。
おそらくダストリミットに関する記事を読んでいただいたことがきっかけのご質問です。記事内でUTXOセットの肥大について触れた部分を引用してくださっています。
確かに、ビットコインの状況を正しく理解するにはネットワークや市場のデータをある程度把握しておくに越したことはありません。ここ最近では、本稿で他にもデータをベースにした記事をいくつか掲載しています。例えばデータから見たライトニングネットワークの全体像です:
というわけで、今日はオンチェーン・ライトニング・市場の3つの観点から、定期的に確認すると状況が見えてきやすい信頼性の高いデータの手に入れ方について書かせていただきます。
・オンチェーンはデータサイトが充実している
・LNはデータと肌感覚が一致しにくく、一次情報の取得が望ましい
・技術だけでなく、市場についての情報も重要である
オンチェーンはデータサイトが充実している
ビットコインの長い歴史とオープンなP2Pネットワークという特徴から、オンチェーンデータについては探しにいけるサイトが非常に充実しています。
例えばブロックチェーンエクスプローラーという1つの用途をとっても何十というサイトが思い浮かびます。私は使いやすさから人気が高いmempool.spaceをメインで使用していますが、データの絞り込み検索が優秀なBlockchairもおすすめです。なんとデータベースのダンプも提供してくれたりします。(と思いつつBlockchairに行ったらエラーが出ていたのでリンクは外しました)
Walletexplorer.comのように、取引所など有名なウォレットを見ることができるサイトもありますが、ラベリングがあまり正確ではないことが多いです。ビットコインはアドレスを使い回さずに利用できるので、ある程度のプライバシーが実現できる証拠ですね。
当然ですが、ブロックチェーンエクスプローラーは「探したいものがすでにわかっている人」のためのツールで、ビットコインを俯瞰するためのツールではありません。ここからはその役割のツールを紹介します。
テキストベースのダッシュボード:Clark Moody Bitcoin
まず、一箇所にまとまっているサイトがほしければClark Moody Bitcoinというダッシュボードが至高です。様々なテーマについて、ビットコインの最新状況がすぐにわかります。冒頭の例でいえば、自分はUTXOセットの大きさをおよそ1億と記憶していましたが、Clark Moody Bitcoinによると1.66億ほどだそうです。

自分のノードで確かめることもできます。Bitcoin Coreであればbitcion-cli gettxoutsetinfoでUTXOセットについての情報を出力できます。実行には多少時間がかかりますが(デバイスにもよりますが、ミニPCで10分程度)、以下のような出力を得られます:

また、UTXOセットに限ればutxo.liveというサイトがきれいなビジュアリゼーションをしています:

なお、ビットコインノードは「ネットワーク全体のデータ」を把握するために作られてはおらず、むしろTXIDでしかトランザクションを検索できない(ブロック高やアドレスなどから検索できない)など、データ取得元としては使いにくいです。
時系列データ:Statoshi, CryptoQuant, Bitcoin Magazine Pro
時系列での変遷が見れるタイプのサイト、いわゆるダッシュボードですがStatoshiとCryptoQuantが優秀です。特に後者は有料版もありますが、かなり色んなデータを網羅しています。GlassnodeもCryptoQuant同様のサービスですが、最近は押されている気がします。そういえばBitcoin MagazineもLookintobitcoinというサービスを買収してBitcoin Magazine Proとしてダッシュボードを提供しています。
手数料:Johoe's Mempool Statistics、Mempool.observer
いまの手数料水準が知りたいだけならmempool.spaceで事足りますが、過去の変遷が知りたければJohoe's Mempool StatisticsやMempool.observerも選択肢に入ります。ただ、最近増えてきた1 sat/vbyte未満のトランザクションにはどちらも未対応なようで、過去データとして振り返れるように早急な対応が求められます。


マイニング:Braiins Bitcoin Mining Dashboard
Braiinsは前身がSlush Poolという世界初のマイニングプールで、今もカスタムのファームウェアを提供するなど様々な工夫をしています。彼らが提供しているBraiins Bitcoin Mining Dashbaordはマイニングの状況を見るのにうってつけです。また、Luxor社が提供するHashrate Indexというサイトも、中古ASICの相場やハッシュプライスなど、より実践的なデータが集まっています:

LNはデータと肌感覚が一致しにくく、一次情報の取得が望ましい
Amboss一強だが…
ライトニングについてデータを取得するときはAmboss.space一択に近い状況が続いています。しかし、注意が必要です。個人的にはAmbossでは「特定のライトニングノード」についての情報を検索するのは非常に有益だと感じていますが、「ライトニングネットワーク全体」についてのデータはそれほどでもありません。
昔から言われていることですが、パブリックなライトニングネットワークのキャパシティは必ずしも決済利用量の成長を反映していません。発生している送金は第三者の目に触れることはありませ#んし、エンドユーザーがノードを持っていてもプライベートチャネルしか持っていなければ統計には現れません。また、カストディ型ウォレットのユーザーについてもデータは希少です。(同じカストディ型ウォレットのユーザー同士の送金をライトニングの送金と数えるべきかについても、意見が分かれるでしょう)
以前の記事で分析したデータは、自分のライトニングノードから取得したものです。例えば自分のライトニングノードが今までに見たすべてのチャネルやノードについてのデータはlncli describegraphで取得できますし、APIを活用すればリアルタイムで流れてくるデータを扱うこともできます。そして資金を投じて中継ノードをやれば、実際にネットワークを流れる送金の量や金額感にも触れられるでしょう。かなり真剣にやる必要はありますが。
つまるところ、ライトニングに関してはその性質上、一次情報の重要性が非常に高いので、真剣に分析するのであればなんらかのサービスを提供したり、中継ノードをやる必要があります。
技術だけでなく、市場についての情報も重要である
私は技術面にばかり注目しがちなところがありますが、市場についての情報もビットコインに対する一般的な理解の現状を把握するのに重要です。近年でいえばETFに関連するデータ、ビットコイントレジャリー企業に関するデータ、「ビットコインL2ブーム」に関するデータなどでしょうか。
先述したCryptoQuantなどのダッシュボードにあるので、ついでに確かめるのがいいと思います。とはいえ、解釈するのにある程度の背景知識もいるのでニュースはある程度追っておきましょう。それを言い出すと、UTXOセットのデータを理解するのにもOrdinal InscriptionsやStampsなど、流行りのメタプロトコルの存在を認識する必要があったここ数年ですが…。
Ordinals関連は本稿がおそらく日本で最初に取り上げました
まとめ
・オンチェーンデータに関しては優秀なサイトやダッシュボードが多数存在するため、必要に応じて取捨選択して見ると良い
・ライトニングに関しては、特定のノードについてのデータはともかく、ネットワーク全体のデータは乏しい上に現実をあまり反映しないため、中継ノードやライトニング上のサービス運営などで一次情報の取得から頑張る必要がある
・データを取得しても、解釈できなかったら意味がないので、様々な背景知識を深めていく必要がある
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