Bitfinex&Tether社CTOに聞く、Tetherの現状と今後
先日「On the Brink」というポッドキャストで、BitfinexとTether社のCTOのPaolo Ardoinoさんへのインタビューがありました。(ちなみにこのポッドキャストのホストはCoinmetricsのFounderとしても有名なNic Carterさんです)

Tetherに関してはトレーダーにとってもお馴染みですし、ここ数か月でさらに発行量も増加し、市場規模もXRPを抜いて第3位までつけています。
ただし、Tetherの発行主体視点からの話を聞くことは今までほとんどなかったと思うので、BitfinexやTether社として現状をどう見ているのか、というインタビューの内容で面白かった部分を今回は紹介します。
最近Bitfinexからビットコインが流出してEtherが流入しているがなぜ?
ビットコインに関しては大口のOTC取引があり大量のビットコインを売ったこと。また、アルトコインへの需要が増加し、ビットコインを他の取引所に送ってアルトコインを買ったりするパターンが増えているのでは?Etherの流入はEthereum2.0への準備?の可能性があるが、細かいことはわからない(言えない)
Bitfinex上でのEthereum2.0のFork先物取引について
17年のビットコインハードフォーク論争の時に提供されたSegWit2xコインの先物取引市場と似たようなもの。SegWit2xフォーク危機の時もこの先物市場が支持率などを測る一つの予測市場となっていた。
Ethereum2.0コインの先物市場が立つことで、どれくらいの保有者がEthereum2.0に資金をロックアップする意思があるかを測ることが出来る。この数値なども参考にし、Bitfinex本体もEthereum2.0へのEtherのStaking量の意思決定などが行えるようになるため、重要。
BitfinexはStakingとユーザーの投票権などについてどういうポリシーを持っているか?
EOSのStakingに関してはすでにポリシーを作っていて、取引所にEOSを預けているユーザーも匿名で投票できるように配慮している。ただし、本当はユーザーにもっと積極的に投票してもらいたいが、実際にこの機能を利用している人たちはあまりいない。
Ethereum2.0でEthereumのStakingが始まったとしても、基本的には取引所ユーザーが自分自身で選択できるようにして欲しいし、その為のテクノロジーとツールの提供はしていく。特に重要な意思決定についてはコインを預かっている取引所ではなく、ユーザーが投票して決めるべきだと思う。
最近のTetherの発行量の爆発について。何が起きている?
3月に仮想通貨価格全般の急落があった。この時に仮想通貨購入への需要が増したが、素早く動かすことが出来ない銀行口座で死んでしまっている資金(Fiat)がかなりあったようだ。この問題を解決するために、Tetherの新規発行にさらにお金が集まった形になったのでは?最近はEthereum TetherとTron Tetherの利用が増えてきており、トレード目的以外での利用も出てきている(ペイメント利用やマイナーがTetherでオペレーションコストを払ったり)
なぜTetherがここまで人気になったのか?既存金融と比べた利点は?
2015年くらいから存在すること。クリプトネイティブであること。先行者利益と複数チェーンでの発行スキームにより信頼がさらに増していっている。
ビットコインなどの仮想通貨を同じスピードでトレードするためのベース通貨が必要で、伝統的な銀行送金では遅すぎる。Tetherはこの需要を満たしている。また、秘密鍵で自分の資産を管理できる、という強みもある。特に銀行を信頼できない国では、コロナの市場混乱で銀行から資金の引き出しが制限されるのでは?などの不安もある。
Tetherを一般レベルにアダプションするのは簡単ではないが、少しづつそれが起きている。給料や支払いをTetherで済ましたりなどだ。
Tetherの複数チェーン発行戦略について。チェーン中立性が重要だということを示したと言える?
ビットコイン以外にも他にもたくさんのコミュニティが存在する。それらのコミュニティはStablecoinに大きな関心を示しており、その要望に対してTetherを提供している。
ビットコインの手数料の高騰などをうけて実はTetherのイーサリアムへの移行を17年末には検討、準備していた。結局その後18年の市場クラッシュで需要がしばらく落ちた(のですぐにEthereumへは移行しなかった)
Tronでの現象は興味深い。Tronはマーケティングに力を入れている。Tronはトレーダーを引き付けるのが上手く、Tetherを使う合理性があった。また、TronでのTether利用が進んで、Ethereumの混雑が若干解消されている部分がある。一つのチェーンに依存するのはあまりいいことではない。
Liquid Tetherのアトミックスワップは興味深い。DeFiでのTether利用。Tronは安い手数料など、複数チェーンでTetherを発行することで、複数コミュニティに届けつつ、多様なトレードオフや機能を提供できる。
TetherはEthereumへ悪影響を与えている、という指摘についてはどう考えるか?
Tetherの利用増加に伴いEthereumは手数料が高騰している。これはユーザーにとっては問題だが、マイナーにとっては嬉しいこと。
TetherはEthereumのスケーラビリティーの早急な改善の必要性を露呈したとも言える。Ethereumの設計では元々Tetherのような多くのトークンが発行され、価値が載っていくというモデルであり、Tetherの利用が進むのは悪いことではないはず。(手数料高騰などで)Tetherを問題視するのは筋違いだと思う。
Tetherは現状の約1兆円から10兆円規模までスケールすることは出来るか?何か障壁になる部分はあるか?
これは面白い質問だが、規模が大きくなればなるほど問題も大きくなっていく。特に既存金融(銀行)とのやりとりの部分がネックになる。現状6~7の銀行を使っているが、さらにTetherの規模を大きくしていくには、銀行との関係を拡大しなくてはいけない。10兆円を目指すとしたらTier1の銀行の協力が必要となるだろう。(それが出来るかどうかについては明確な言及なし)
マイナス金利状態でTetherのビジネスモデルは維持できるのか?
すでに考えいて、これは可能である。マイナス金利時代でもロックされている10兆円の資金の安全な投資、運用を通して金利を得ることが出来る。また、Tether発行と償還時の手数料収入もある。Tetherチームは非常にリーンで決まったオフィスもない。収益性を保つことはそんなに難しくない。
---
などです。このような表のインタビューで言えることは実際限られているので、若干ポジトークというかあまり突っ込んだ回答をしていない部分もありますが、中々面白いインタビューだったと思います。今回のインタビューを聞いて自分が改めて感じたことは、Tetherは批判も多いですし、これから厳しい規制にさらされ突然閉鎖されたりするリスクも常に存在しますが、実際に存在するトレーダーや投資家の需要を巧みに取り入れつつ、複数チェーンにまたがる発行スキームを確立したり、クリプト関連技術に精通しつつ、マーケット需要を見極めてサービスを提供出来ている数少ない事例の一つであることです。ある意味最強のクリプトFintechサービスですよね。
界隈では今はLightning NetworkやDeFiなどが盛り上がっているトレンドとしてありますが、果たして本当に持続的で合理的な需要が存在するのか、どの属性のユーザーに何のベネフィットがあるのか、などのマーケットからの視点はまだ乏しく、まだまだこの圧倒的な実需利用という点ではTetherが先行しているな、と思います。
次の記事
読者になる
一緒に新しい世界を探求していきましょう。

ディスカッション