ライトニングのキラーアプリは「ビットコインを稼ぐ」か?
ビットコインについて話していると、ライトニングが普及するきっかけは何になるかという話題がたびたび上がります。ここ数年間でライトニングの使いやすさや安定性は大きく改善し、利用者・送金数ともに順調に増えているとされています。Riverが先月発表したレポートによると、この2年間でライトニング上のトランザクション数は少なくとも12倍に増加したそうです。
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— River (@River) October 18, 2023
Our new Lightning report has been out for a week. What do you think of it?
Much like you, we love charts.
So, we built a thread with the highlights you're going to want to see 👇 pic.twitter.com/ZmyiBGieut
しかし、利用者数や対応するアプリ・店舗・ウェブサイト数などはまだまだ少なく、読者の皆様もご存知の通りいわゆるマスアダプションには程遠い状況です。
ライトニングがマスアダプションするのに必要な起爆剤は何なのでしょうか?私の意見ではいくつかのステップを経る必要があります。
①ビットコインを保有することへの抵抗がなくなる
②既存の送金サービスでは実現できない便利なUXを体験する
③対応するサービスが増加し、ネットワーク効果が大きくなる
特に①は心理的な側面が大きく、新しいことを試すのに抵抗がない人にしか難しい現状があります。Block社が最近公開したレポート「Bitcoin Knowledge and Perceptions: Chapter II」でも、日本は「新しいテクノロジーへの興味・好奇心」が非常に薄いという内容がありました。また②と③は鶏が先か卵が先かという問題でもあります。
今日は上の仮説に沿ってビットコインがマスアダプションしていく中で「ビットコインを稼ぐ」ユースケースが果たせる役割を考えてみます。
・ビットコインへの抵抗の根強さは少額で試せることで軽減できる?
・ライトニングこそがInternet of Moneyを実現する
・まずは少額稼ぐユースケースから?
ビットコインへの抵抗の根強さは少額で試せることで軽減できる?
「ビットコインは怪しい」、そういった空気を日本ではよく感じます。実際に詐欺のネタに使われることが多いので一般人が警戒心を持っていることは悪いことではありませんが、この雰囲気がどうも普及の障害になっていそうです。ユーザーが買ったり受け取ったりして自身の資産として保有するのであれば、少なくとも信用されることが前提でしょう。
しかし、「新しい物好き」や「ビットコインに対する警戒心が低め」という性質のユーザーであれば、数百円レベルのビットコインであれば全然抵抗なく保有してくれそうなデータもあります。Nostrを通して初めてビットコインに触れたユーザーが数百円~数万円程度のビットコインをウォレットで保管していたり、メルコインのユーザー数がサービス開始からわずか7ヶ月で100万人を突破したことなどです。
取引所に登録して身分証を提出し、銀行から入金して…というフローより圧倒的に手軽なメルコインのビットコイン購入フローはカジュアルユーザーの入口として非常に優秀なものとなってくれそうです。しかし、残念ながら現時点ではライトニング対応はおろか入出金自体ができません。国内の取引所も軒並み最低出庫額が高いなど、数百円レベルのユーザーを育む土壌には到底なりそうにありません。
仮にメルコインからライトニング出金できるようになったとしたら、ライトニングが使えるサイトへと送金するユーザーにとって格好の入り口となるでしょう。
ライトニングこそがInternet of Moneyを実現する
ライトニングの普及にあたっては、使用できるサービスがたくさん出てくることが必要になります。既存のサービスへのLNの統合がキラーアプリという意見と、マイクロペイメントやパーミッションレス性を活用した革新的なLapps (ライトニングアプリ)の登場がキラーアプリになるという意見があり、どちらも一理あります。
ビットコインはオープンなプロトコルであり、誰でも自社サービスにビットコイン入出金の機能を追加しようと思えばできてしまいます。これまで一度銀行口座を経由する都合で数日かかったり間接的で面倒だった資金のサービス間の振替を共通の規格を通して直接できるのは非常に便利です。
例えば証券口座から出金して交通系ICカードをチャージする流れは現状ではけっこう複雑ですが、直接送金できたら一瞬で完了します。国内の証券口座から海外の証券口座など、国をまたぐ取引に関してはなおさら銀行送金が不便なのでインパクトが大きいことは皆様も理解されていることでしょう。
ビットコインがInternet of Moneyであるという指摘はかねてからのものですが、ライトニングはスケーラビリティの向上によってビットコインへのアクセスを民主化する1つのステップとして、既存サービスに統合されていくことでユーザーに価値を提供していくでしょう。
その上で、革新的なLappsは主に「ユーザーが稼ぐ」場を提供していくと私は考えています。
まずは少額稼ぐユースケースから?
現在、ユーザーがお金を稼げるウェブサイトというのはどのようなものがあるでしょうか?
クラウドソーシングサイトを経由した労働、アフィリエイトブログの運営、ポイ活、フリマサイトでの不用品の売却、SNSや動画サイトでのインフルエンサー稼業などが思い浮かびます。(アダルト系の配信など、他にも探せばあるでしょう。)
しかしどれも最低出金額を稼ぐのに必要なスキルや素質、努力が少なくありません。一番手軽なポイ活サイトもコツコツとポイントを貯めて出金までたどり着けるユーザーは一握りでしょう。
はるか昔、一度登録したことがありましたが無意味さと手数料の高さに絶望した記憶があります。あれは出金したいユーザーと出金させたくないサイト運営者(アフィリエイター)の利益相反なので仕方ありませんね。
ところがライトニングの登場によって実質的な出金手数料が非常に安くなり、これまでは1000円や2000円は稼がないと出金すらままならなかったものが、例えば50円や100円稼げば出金できるレベルになります。するとその報酬の対価として求められるサービスのレベルも低下し、敷居が下がると考えられます。
例えばGPUTopiaというLappsは計算力のマーケットプレイスで、AIを利用したいユーザーにパソコンのリソースを提供する見返りにsatsを支払ってもらうというものです。まだ誕生したばかりでGPUTopia自体のビジネスモデルが果たしてうまくいくのかは不明ですが、「これまで売却するほどのリソースではなかった」少量の計算量が6 satsになるだけでその6 satsはどこかで使えるのです。
同じように「ちょっとした話し相手をするサービス」やAmazon Mechanical Turkのような単純作業提供サービスなど、ライトニングは従来の出金手数料などに足を引っ張られてきた少額稼ぐユースケースとめっぽう相性が良いです。このようなサービス提供を通してなるべく多くのユーザーの手元に少額のBTCを渡すことで、それを使える場所への需要は増やすことができるのではないかと考えています。
これから必要になるもの
上記の仮説に基づくと、これから必要になるものは以下の通りです:
・簡単に少額のBTCを交換・出金できる取引所
例えばメルコインがライトニング出金に対応した場合が該当します。
・誰でも少額のBTCを稼ぐことができるようなサービス
提供するのは単純労働でも、計算資源でも、アフィリエイトを踏むことでも、何でも良いです。サイト運営者がマージンを取って儲かるビジネスモデルが存在すれば自然発生するでしょう。
・多数の人が手にしたBTCを使ってみたくなる面白いサービス
ここが工夫の見せどころで、以前だとPollofeedを始めとする変わり種Lappsが担っていたようなポジションです。(Pollofeedは最近は運営に飽きたのかあまり配信されていません)
アイデア勝負なところがあるので、一番大事なのはアイデアを思いついた人が開発しやすいように使いやすいツールやフレームワーク、サービスなどを用意しておくことでしょうか。
すでに100万人がメルコインを使用していくらかのsatsを保有していることを考えると(実際に何割のユーザーが1 satsでも購入しているかはわかりませんが)、いつか出金が可能になった後のステップを真剣に考えるべき段階に来ているのではないでしょうか。
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