Jack Dorseyのビットコイン戦略
先日TwitterがLightning Networkを利用したチップサービスのローンチを計画している、という噂が流れていました。結局この話は公式の確認もなくガセネタの可能性もありますが、Twitter CEOのJack DorseyがLNにかなり積極的なのは周知の事実ですし、遅かれ早かれTwitterにも何かしらのLN機能が組み込まれるのは間違いないと思います。
特に海外ではJack Dorseyのビットコイン関連発言などは大きく注目されているのですが、実はあまりちゃんと紹介したことがなかったので今回改めて彼のビットコインの取り組みについて紹介してみます。
TWITTER&SQUARE CEOのビットコインへの取り組み
Jack Dorseyのビットコインの関与は主に下記の3つです。
Square Cash App
SquareのCash Appというアプリ内でビットコインの売買サービスを18年1月から提供しています。]The Blockの調査によれば、19年Q3までビットコインの売上高は順調に伸びてきており、19年Q3の売上は約150億円になっています。ただし、その他のアメリカの主要取引所と比べると必ずしもマーケットシェアは伸びておらず、Q2時点で売上高ベースではCoinbaseの1%以下にとどまっています(添付画像参照)


Square Crypto
こちらはSquareのビットコイン事業からスピンオフした形で、ビットコインのプロトコル開発やユーザー体験の向上の為の研究開発をする組織です。去年3月に発表されたばかりですが、すでに著名ビットコイン開発者を数人引き抜いており、ビットコイン開発エコシステム内での存在を高めつつあります。
また、Square CryptoではOSS開発を奨励するために奨励金を用意しており、OSSビットコイン支払いプラットフォームのBTCPayserverや個人開発者などをすでに支援しています。
ここら辺の支援先もいい意味で渋く、形式的なものではなく実際に意義がある、実のあるものをきちんと認識して支援している印象を受けます。「わかってるな~」という感じますね。
Lightning Labsへの投資
Jack Dorsey個人として主要Lightning企業であるLightning Labsへの投資を行っています。TwitterのLN組み込みが期待されているのも、このLightning Labsへの投資などの影響です。
また、前述のCash Appにも何かしらの形でLN機能を追加するとの発言はすでに1年ほど前に出ており、今年中にSquare、TwitterとLNの何かしらの連携が開始されると自分は見ています。
なぜDORSEYはビットコインに集中しているのか?
さて、上記を見るとわかる通りJack Dorseyは他のアルトコインやブロックチェーンには全く関与しておらず、100%ビットコインにコミットしています。
その効果もあり、Squareは人材の引き抜きやビットコインコミュニティからの支持の獲得に成功しており、ビットコインのエコシステム内でのプレゼンスや実力を確実に高めています。
これは、Libraで独自のブロックチェーンプラットフォームをぶち上げたFacebookや、イーサリアムやその他のスマートコントラクトチェーンを採用、研究しているその他多くの企業とは全く違う方向性です。
ではなぜJackはビットコインにコミットしているのでしょうか?要因として、
- 規制対応コストの軽減
DorseyのThe Next Webのインタビュー内での発言が端的に説明しています。
https://thenextweb.com/news/jack-dorsey-answers-our-questions-about-squares-plans-for-bitcoin?fbclid=IwAR0uVjFzuerYbH8n1W19cIJVefTmed_binnPVQn1RlwJPDnUz7In1TSOX2I
「インターネット会社はローンチしたものをすぐに世界中に公開できる。一方、支払いに関してはそれぞれの市場(国)に合わせて規制に注意をする必要がある。現地の銀行とのパートナーシップが必要になる。これは新しい市場で非常に時間のかかるプロセスだ。インターネットにネイティブな通貨が存在することで、(支払い領域でも)私たちはインターネット企業のようになることが出来る」(意訳)
シンプルなロジックですが、インターネットスタートアップのTwitterと、ペイメントサービスのSquareの両方を創業した経験のある彼だからこその発言、という気がします。 - ビットコインが最も成功確率の高いパブリックブロックチェーンであるから
ではなぜイーサリアムやその他のパブリックチェーンではなく、ビットコインなのか。
それに関して、Dorseyは「Bitcoin is resilient. Bitcoin is principled. Bitcoin is native to internet ideals. And it’s a great brand」(ビットコインは頑強で、理念に基づいている。ビットコインはインターネットの理想に近い(意訳))という発言をしています。
これは個人的には「超わかる!」という感じですが、クリエイターであるSatoshiも消え、最も強固で分散化されているビットコインこそがインターネットのネイティブ通貨になる成功確率が高いと考えているようです。
(まあ後は事あるたびに「I love you, Bitcoin」みたいな濃密な?発言をしており、単純に個人としてビットコインの1ファンみたいな空気もありますね。)
- 競争が少ないから
もう一つ、このタイミングでビットコインにフルベットする理由の一つに競争が少ないからというのもあると思います。
他の企業は独自チェーンなどの開発に注目しており、その分ビットコインにベットしているメインストリーム企業は少ないです。ただし、ビットコインが今後大きく成功していくと考えると、今の時点でのコミュニティ貢献などの取り組みも投資対効果は他のブロックチェーンに張るよりむしろ高いかもしれません。
ちなみに同様の主張はIDEO CoLab VenturesのIan Leeも以下の記事で論考しています。(まとめは添付画像③を参照)

Enterprize blockchains1.0(トークンの否定と業務効率の改善)、Enterprize blockchains2.0(ICOや独自トークンプラットフォームの開発)
はすでに失敗が見えてきており、今後は
Enterprize blockchains3.0(パブリックブロックチェーン開発の企業によるスポンサーと共同開発)のトレンドが来るのではないか、と述べています。
JACK DORSEYのビットコイン戦略は正しいか?
「ブロックチェーン業界」全体のトレンドと比較すると、Dorseyのアプローチはむしろ少数派です。ビットコインですぐに収益化出来るタイミングでもまだないですし、TwitterやSquareなどの元々の規模や経済基盤があるからこそ出来る戦い方なので、このやり方が全ての企業に当てはまるわけでもありません。
結局このアプローチが正しいかどうかの答えはまだわからないですが、以下のようなトレンド、事実と比較してDorseyのアプローチを評価できると思います。
- Libra vs Square/Twitterの進捗
Libraにどれくらいの規制のプレッシャーや対応コストがかかるか、どれくらい時間がかかるか vs どれくらいSquareやTwitterがビットコインを軸としたサービスを開発、ローンチできるかのスピード感の勝負。
FacebookとSquare/Twitterは真逆のアプローチをとっているので、この二つのプロジェクトの進捗をベンチマーク出来ます。 - Coinbase vs Square(Cash App)のビットコイン売上
SquareのCash Appの売上は伸びてきてはいますが、Coinbaseなどと比べると売上高は微々たるものです(1%以下)今後SquareではLightningの組み込みや、積み立てサービスのようなものを追加することが想定されますが、アルトコイン全面的戦略をとっているCoinbaseと、ビットコインフォーカスのSquareとの差が縮んでいくか、それとも広がっていくかも一つ興味深いテストです。 - その他の企業の追随
Squareほどビットコインにコミットしている企業はほぼないですが、先日ローンチしたBakktやFidelityなどは比較的ビットコイン推しのようです。
ビットコインの市場占有率の回復、セカンドレイヤー技術の向上が進み、今年Squareに追随してビットコインフォーカス戦略をとる企業が増えてくるかどうか。
というわけでJack DorseyとSquareのビットコインに関する戦略を見てみました。
去年は価格的にはビットコインが独り勝ちで、これは市場全体のトレンドなどを理解すればある程度予測可能な動きでした。この動きは今年も続くと見ています。
一方、企業のビットコイン採用や支援、開発に関しては正直まだあまり進んでないです。Squareはいわゆるファーストペンギンとしてこのトレンドを推し進めており、どこかのタイミングで他の企業もガッと追随すると自分は考えているので、その点でもSquareの動向には今年も注視しておいて損はないでしょう。
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