L402プロトコルの解説:既存ペイウォールとの違いとインターネット決済へのポテンシャル
こちらの記事は、下記の動画を元に書き起こした内容になっています。
L402プロトコルと既存のペイウォールとの違いやメリットとは?
東:最近、"L402プロトコル"というものが公開されていて、どういうものなのか解説していただけますか?
加藤:はい、この"L402プロトコル"は、実は2年ぐらい前に発表されたプロトコルなんです。名前の"L402"とは、HTTPレスポンスコードの一つで、たとえば404だと「ページがありません」、501だと「サーバーエラー」を示すようなものですね。その中に、"402"という「Payment Required(支払いが必要)」というコードがあります。これは90年代後半から存在しているんですが、これまでブラウザやクライアントが自動で処理する方法がなく、カード決済などを自動化することはあまりできていなかったんです。
東:なるほど、もう少し詳しく聞きたいんですけど、いわゆる、ペイウォール(有料閲覧)みたいなものは、日本だと、noteなどのサービスがありますよね。そういうタイプのペイウォールとL402プロトコルの主な違いやメリットはどうなんでしょう?
加藤:既存のサービスで、たとえばnoteなどでクレジットカード決済をするとなると、サービスの方でカード情報とユーザーを紐付ける必要があります。それには、まず最初にアカウント登録が必要で、その後カードを登録して、毎回支払いをするたびに、ユーザーとカード情報を確認する必要があります。
東:アカウント登録が必要なんですね。
加藤:そうです。そして、サービス側でアカウントやカード決済の管理をするために、色々なルールを満たす必要があります。それはセキュリティ上の問題をクリアするだけでなく、ユーザーデータベースや決済のデータベースを用意する大掛かりな作業が必要です。それに、有料記事を買ったユーザーがその記事を閲覧するたびに、「このユーザーはこの記事を買っていたか」を確認する必要があります。それは結構冗長な作業で、各サービスごとにそれを用意しなければならないのです。
東:なるほど、それは大変そうですね。
加藤:そうなんです。しかし、L402プロトコルを使うと、アクセストークンが発行されます。そのアクセストークンに支払いの証明情報を添えることで、サービス側は決済サイドと全く接続することなく、「このトークンは有効だ」と確認できます。その結果、ユーザーアカウントは不要で、このトークン自体がアクセス権限を表すことになります。
東:それならアカウントを作らなくてもいいのですね。
加藤:そうです。だから、非常にシンプルに実装できるというのがL402プロトコルの大きなメリットなんです。
東:理解しました。ありがとうございます。
デメリットはある?データの保存とリコメンドエンジンの制約
東:ちなみに、そのアクセストークンはどこに保存されてるんですか?
加藤:それは、クライアント側で保存する必要が出てくるんです。
東:データをなくしたりとかはあるのかな?
加藤:はい、確かにデータをなくすこともあります。例えば、キャッシュを全部クリアしちゃったというような場合ですね。
東:そうすると、アクセスできなくなっちゃったっていう、別の問題が発生する可能性はあるってことですか?
加藤:そうですね。それはちゃんとバックアップを取るとか、何らかの対処が必要だと思います。また、デメリットにもなるんですけど、例えばユーザーデータを収集してサービスを良くしたいとか、そういう時にアカウントがあった方がユーザーデータを紐付けやすいとか。
加藤:例えばnoteでおすすめの記事を表示するのに、あ、このユーザーはこれとこれを買ってるから、これも好きかなっていうのは、 アカウントがあるとやりやすいけど、L402だとそれぞれの関連性がわからないから、できない。
東:なるほど。プライバシー的な観点で利用者からするとメリットになるかもしれないですけど、サービス提供者からすると、どんなものを特定の人が買ってるかっていうヒューリスティクスがないんで、レコメンドがうまくできない。もっと買ってほしいんだけど、提案ができなくて収益性が下がってしまうというデメリットもあるかもしれないってことですね。
加藤:そうですね。だから、リコメンドエンジンみたいなのが重要な場面では、あまりメリットがないかもしれない。
東:なるほど。なので、L402が既存のペイウォールの仕組みと比べて、完全な上位互換では必ずしもなくて、適するユースケースとそうでないもの、みたいなのがあり得るってことですね。
L402のポテンシャル:インターネットの決済体験がどう変わるか
東:最後の質問なんですけど、このL402プロトコルがより普及した時に、最終的にはどういうポテンシャルがあって、インターネットの決済だったり使い方にどういう影響を及ぼしうると思いますか?
加藤:それはビットコインやライトニング関連サービスのアダプションがどう進んでいくかを予測するのと同じだと思います。例えば、L402が適してるサービスと考えるところから始まるんですけど、Nostrのリレーの支払いには可能で、支払いと認証に別々で検証できるというのはメリットと言えますね。また、Nostr経由で広がっていくビットコイン関連のサービスや、ウォレットとかでの支払いなども考えられます。
加藤:あとは、データ系のAPIとかDeFiとか。プライバシーを保ちながら、欲しいデータを取ってくるというのは意外と需要があると思います。
東:インターネット全体が大きく変わるという段階ではまだないと思いますか?
加藤:そうですね、必ずしも大きなポテンシャルがあるわけではないとは思います。
東:ただ、最近話題になっているAI×ライトニングなどの話と絡めると、このプロトコルを使ってボット同士がデータの売買をしたりとか、ペイウォールを使っていくとなると、重要なプロトコルになり得ると個人的に思います。
加藤:ブラウザがL402に対応するまではエンドユーザーが使うというよりは、ボット、あるいはアプリ内から使う感じになると思います。
東:Chromeなどが対応しないと普及の壁になりそうですね。なので、必ずしも人間がこれを使ってペイウォールに支払うというユースケースが出てくるわけではなさそうってことですね。
加藤:来て欲しいですけどね(笑)。ただ、Chromeのエクステンションを使って支払うような方法もあるので、それを使うとシームレスにペイウォールに支払って閲覧できるという可能性もあります。
東:そういう試みがあるのは興味深いですね。ただ、まだまだブラウザネイティブの話ではないので使いづらさはあるでしょうね。
東:まだまだ発展途上ですが、ChatGPTのデータマーケットなどの話が盛り上がってきて、このライトニング使ったペイウォール的な話に注目が集まってるというのは重要なトレンドだと思います。L402プロトコルに関する解説、ありがとうございました。
次の記事
読者になる
一緒に新しい世界を探求していきましょう。
ディスカッション