以前Sphinx ChatというLightning Network上で稼働する分散暗号メッセンジャーサービスについて紹介、考察しました。

Sphinx ChatとLightningの無意識のマイクロペイメントの威力
今週はSphinx Chatを入れて色々実験していました。「ビットコイナー反省会」のPublicグループを作って遊んだりしていますが、大分アプリ自体も安定してきて、普通にチャットアプリとして機能するくらいにはなってきました(まだバグは多いですが)Sphinx Chatの仕組みや設定方法はLN開発者の小川さんが記事にもしてくれているのでこちらを読んで是非グループにも参加してみてくださいhttps://spotlight.soy/detail?article_id=6irykuocg&fbclid=IwAR1nHHchhRlDnGAU-D6HGlq7pceTOB40YQqjafaBj4aPZl…


ポイントとしては、


・Lightning Network上でPayment以外のデータをやり取りすることが可能で、チャットサービスなどがすでに出てきている・Lightning上でデータをやり取りすることで、データは暗号化されるだけでなく、中央サーバーが存在しない検閲耐性の高いチャットサービスが実現・グループチャットとマイクロペイメントがシームレスに融合することで、意識しないレベルのメッセージごとの小さな課金や受金が可能に
・特にこの「意識しないレベルの少額」というのが、今後Lightningを使ったサービス構築やウェブ上のユーザー行動の変化で鍵になる可能性を感じる

上記のようなものでした。

さて、LNを利用したチャットサービスとしてはSphinxは一番よく出来ていて、開発も以後継続して続けられていますが、分散チャット機能に追加して、アプリ内でマイクロ課金可能なポッドキャストを聞ける機能が先日公開されました。これをポッドキャストの新しい形、ということで「Podcast2.0」と呼んでいるようです。

主な問題意識として、YoutubeやTwitter、Facebookなどではコンテンツが一つの会社にロックアップされてしまっており、コンテンツが検閲されたり、勝手に削除されたりすることが多々ある、という部分のようです。それをLNのマイクロペイメントとポッドキャストを組み合わせることで、特定のプラットフォームに依存しない形で、コンテンツクリエイターが収益を持続的に上げられるようにしよう、という試みです。ただし、今のところ仕組みはかなり単純なもので、Anchorなどの外部でホストしたポッドキャストのRSSフィードをSphinx Chat上に取り込み、アプリの中から視聴可能にする、というだけといえばそれだけです。ただし、Sphinx Chat上で視聴しているユーザーはSphinx上のアカウントからシームレスにクリエイターにLNでビットコインの投げ銭が送れたり、またストリーミングの視聴時間に応じた細かい課金などが出来るようになります。こういうアイディアは当然前からあったのですが(もう5~6年以上前からビットコインと投げ銭、みたいな話はずっと言われてました)、ようやくそれがLightningを使って技術的にも実用的になってきているというところです。

コンテンツ X LIGHTNINGのポテンシャル

Podcast2.0と言っていますが、現状では正直そこまでまだものすごく画期的な部分はなく、コンテンツのフリーライドの問題もそのままですし(支払いは自主的なもので、無料でコンテンツだけ見ることが結局可能)、SpotifyやApple PodcastなどとUXの面でも比較にならないので、ユーザーが一気にめちゃくちゃ増えることもないでしょう。その一方、このような取り組みで面白いと感じる部分として、LNを利用してマイクロペイメントの自動的な割り振りが可能という点があります。


例えば、Podcast2.0のコンセプトでは、視聴者が支払ったお金は大部分はコンテンツクリエイターに支払われますが、自動的に1%くらいはPodcast2.0のオープンソース開発者への寄付、また共同ホストがいる場合は、ホスト間で事前に決めた割合で支払いが自動配分される、という機能があります。サロン運営やその他コンテンツ事業でも似たような感じで売上を運営者やライターと分け合う形になりますが、現状だと一旦プラットフォーム側(例えばDMMやYoutube)に集約し、その後分配される、というような仕組みです。

課金方法としてLNを利用した場合、一旦お金を中央に集める必要がないので、カウンターパーティリスクや手間を大幅に削減できる可能性があることと、企業や個人だけでなく、オープンソースプロジェクトへの一部自動的な寄付転送など、世界中どこにでも相手が匿名でも支払いを送れるのは一つの魅力だと思います。これも一種の「意識しない金額でのペイメント」の応用だと思っており、コンテンツへの支払い時などに、今後オープンソース開発やWikipediaのような公共的なサービスへ自動的に少額の寄付が送られるような機能が進化して、オープンソース開発運営などの持続性の改善に効果を発揮していくかもしれません。

また、ポッドキャストのRSSフィードのようにオープンな規格に対してLightningのマイクロペイメントを組み込む、という動きは今後さらに増えていくと思います。先日Filecoinではなく、IPFSにLightningを組み込むのはアリでは?というような話もしましたが、IPFSのような外部のプロトコルにLNを組み込んだり、ポッドキャスト以外でも例えばスプレッドシート規格にLNを組み込んだり、「勝手にLNを組み込めるオープン規格」にLNをどんどん対応させていく動きがあるでしょう。当然それらの全てが機能するわけではないですが、オープンスタンダードにオープンなマネーであるビットコインのマイクロペイメントを組み込むことで、何か新しいビジネスモデルや、お金の動きが実験的に進むかもしれません。

ここ2、3か月のLIGHTNINGアプリケーションの進展

Sphinx Chatなどの分散チャットアプリやPodcastへのLightning統合など、まだ普及には時間がかかると思いますが、ここ2~3か月くらいで実用的になりうるサービスが形になってきており、そのスピードが加速し始めているのを肌で感じています。それぞれ単体のサービスの機能性や使い勝手はまだまだな部分が多いですが、LNを利用したサービス間のお金の動きや横展開や相乗効果がいよいよ現れ始めました

例えばSphinxのようにチャットをベースにポッドキャストの利用を横展開したり、またBitcoin Bounceなどのゲームで稼いだSatoshiをLN上でSphinx Chatに送って、そのお金でポッドキャストを視聴する、もしくはLNに対応した取引所に即時送信して取引をする、など、「今までLightningで出来ることがあまりない!」という状況から、少しづつ使えるシーンや回遊性が増してきています。


その前提として、各種ウォレットの機能やUXが改善したり、先日紹介したLightning PoolなどのLiquidityの効率性を上げるインフラサービスなども出てきており、時間はかかりましたがLNに関して一通り重要な駒やパーツが揃い始めています。


その点では非常に面白い時期だとは思いますが、逆に言えばもしこれからLightning関連のサービスを作りたい、など考えている人や企業がいるとしたら、少しづつ競争のスピードや競争環境も変わりつつあり、半年~1年後くらいにスタートすると波乗りのチャンスを失ってしまうのではないか、くらいの個人的な感覚、印象です。というわけで、ポッドキャストとLightningを組み合わせる試みから、Lightningのアプリ開発の現状と今後の発展の方向性について考えさせられた、という話でした。