ライトニングノードの8割以上がTorなのにキャパシティでは1割未満!?ノード運用とクラウドの関係
mempool.spaceというブロックエクスプローラーがライトニング関連の情報を見ることのできるダッシュボードをリリースしました。同じような情報は他のサイトでも見れるところがありますが、データをじっくり見ていくと色々と興味深いことに気づきます。
例えば2021年1月18日に外部からの接続にTorが必要なノード数がクリアネット(IPアドレスで識別される従来のネット)上のノード数を超え、今やクリアネット上のノード数の約5倍に達していること、その一方でキャパシティ(ライトニングチャネルで管理されているBTCの数量)ではクリアネットノードがTorノードに11倍以上の大差をつけていることなどです。
まだ個人レベルではTor経由でのみ接続を受け入れるノードを構築するというトレンドが継続していますが、最近はTorの安定性の問題もあり、改めてクリアネット上でノードを運用するメリットが評価され始めています。今日はクラウドを使ってライトニングノードをクリアネット運用する2つの方法に触れ、mempool.spaceで確認できるデータとの関連性を見ていきます。
LNでのクリアネットとTor
本稿で繰り返し紹介しているので詳細は省きますが、ライトニングノードは大別するとTorで公開されているノードとクリアネットで公開されているノードがあります。ライトニングノードがTorを利用する理由はいくつかあり、自宅のノードを世界に公開する際に煩雑なネットワーク設定を回避するため、ノードの所在を隠すため(IPアドレス等と関連付けないため)などです。
Torでは通信が世界中のTorノードをいくつか経由して行われるため、発信元や宛先を割り出すことが困難であり、プライバシーの保護を実現しています。その一方で、通信が非常に遠回りするためレスポンスが悪く、スピードが重要な通信にもデータサイズが大きい通信にも向きません。もし自分のノードがIPアドレスと紐づいてしまっても問題ないのであれば、クリアネットのほうが高速で使用感が良いでしょう。
ここ数ヶ月、Torの安定性がいつもより一層悪く、通信に必要な時間が伸びており、Torを利用するライトニングノードも影響を受けています。他のノードからの通信がタイムアウトしてしまいオフラインと判断され、送金を受け取れなかったり中継できないなど、特に手数料を受け取って他者の送金を中継するルーティングノードにとっては死活問題なので、クリアネット回帰の動きが強まっています。
クラウドにノードを立てる?
Torを選ぶ理由がプライバシーでないのであれば、いっそノードをクラウドに乗せてしまうというやや安直な選択肢が魅力的に見えてきます。
もちろんビットコインをクラウドで保管することに抵抗のある方が普通でしょう。非中央集権性や自己主権性へのこだわりからAWSやGCPなどにノードを立てるのが嫌であったり、使い慣れていないから間違ってデータが消し飛んでGOXするのが怖い、という理由の方までいます。
ところが、クラウドには柔軟性の他に信頼性、スケーリング、データの複製機能など、使い慣れている開発者からすると非常に魅力的な長所があります。特にハードウェアが壊れた、データが破損した、インターネットに繋がらなくなったなど、様々な理由でノードの資金を失うリスクのあるライトニングにおいて、ある程度のクラウド利用経験のあるエンジニアなどがクラウドに利用したくなるのは必然に近いです。
これを裏付けるように、mempool.spaceのデータではライトニングのキャパシティの約25%がGoogle Cloud上のノード、約24%がAmazon Web Services上のノードに属するそうです。LSPと呼ばれるウォレット事業者など、少数だが資金量の大きいノードがこのようなクラウドプラットフォームを利用する傾向が明らかにあります。
ただ、やはりクラウド上に多額のビットコインを置いておくのは安心できる状況ではないように感じます。LSPたちのように巨額とも呼べる額を扱う場合は尚更でしょう。実は、ノード自体や秘密鍵をクラウドに置かずに、クラウドをクリアネットからの入り口として使う方法もあります。
そしてこの方法も上記のデータに混じってしまっています。
クラウドにプロキシを立てる
そう、クラウドの難しい機能を使う必要がないのであれば、たとえノードが自宅にあっても、VPNで自宅とクラウド上のサーバーをつなぎ、特定のポートへの通信をすべてライトニングノードに転送すれば十分なのです。つまりプロキシです。
自前で上記のようにプロキシをセットアップできるユーザーには実際にそうして運用している者もいます。ライトニングはある程度技術力のあるユーザーが多く、ちょっと遊んだり調べてみると意外と先駆者がいることに気付かされます。
また、もう少しカジュアルなユーザーに有料でクラウドからのプロキシを提供するサービスとして6月に誕生したのがTunnelSatsです。
ライトニングノードを運用する者はTunnelSatsに料金を払うことでクラウド上のIPアドレスとポート番号を割り当てられ、ライトニングノードのアドレスとして公開することができます。非常にシンプルなサービスで、むしろ自分でも作ってみようかなと思ってしまいます。余談ですがこういう小規模なクラウド再販事業みたいなものは、No KYCでビットコインを手に入れる1つの方法だと思います。
さて、これを踏まえると、mempool.spaceの「ISP別のキャパシティ割合」図においてGCPやAWSが台頭しているのも、実態としてノードや秘密鍵がそこに載っているのか、あるいはただの踏み台で簡単に乗り換えられるものなのかが気になってしまいますが、それを区別しようとするなら通信の所要時間を調べてみるなど工夫が要りそうです。
まとめ
・LNノードのクリアネットでの運用が見直されている
・特に技術力があったり特定の機能を求める場合、クラウド上での運用も選択肢に入る
・クラウドにプロキシを立ててノード自体は自宅やオンプレミスというパターンも出てきている
・mempool.spaceのデータは見やすく斬新だが、この2パターンを区別することはできていない
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