こちらの記事は、下記の動画を元に書き起こし・一部校正した内容になっています。

MEVとは一体何?ビットコインとの関係性は?

東:MEVについての話題が出ており、これはイーサリアムやスマートコントラクト系のチェーンで問題となっているようです。MEVとは一体何であり、ビットコインとの関係性について教えていただけますか?

加藤:はい、そうですね。イーサリアムや他のスマートコントラクトチェーンでは、MEV(マイナー・エクストラクティブ・バリュー)と呼ばれる問題が存在します。MEVは、マイナーがブロック内のトランザクションから送金手数料とは別に収益を得ることを指します。

具体的には、トランザクションの順番を決めるという採掘されたノードしかできない特権的な能力を用います。もし採掘された場合、そのマイナーがトランザクションの順番を決定したブロックを生成できます。

これにより、金融取引などの内容が変わる場合、特にスマートコントラクトチェーンでは、不正な取引が行われる可能性があります。この差額が、マイナーの収入となるため、フロントランニングと呼ばれる問題が生じます。

: ユーザーにとって、これは警戒すべき問題ですね。隠れた手数料のように感じられる考えもあるし、ネットワーク全体ではMEVを抽出するスキルを持つマイナーが強力になってします。

ビットコインでMEVが関わってきたケース①Ordinals

: ビットコインにおいても、最近MEVに関連する話題が出ているとのことですが、具体的にどのようなケースがありましたか?

加藤:ビットコインにおいてMEVについての話題はそれほど一般的ではありませんでしたが、今年に入って2つのケースが注目されました。

一つはオーディナルズというプロトコルを使用したもので、オンチェーンNFTの制作に関連しています。

このケースでは、MEV自体が主要な問題ではなく、単純に高額のトランザクション手数料が発生していました。オーディナルズはBRC20というトークン規格を採用し、トークン発行は早い者勝ちの仕組みを持っていました。早い者勝ちっていうのは、トランザクションの順番の話ですね。

つまり、マイナーはトランザクションの順番で、みんなより前にいっぱいトークン発行して売りさばくってことができるし、なんならその場合は、 最大発行量に到達した後のトランザクションは何の意味もないのに、マイナーに手数料を払ってるからそれも儲かるみたいな感じで、 MEVのポテンシャルが大きいプロトコルだったんですね。

: 中国や香港のカンファレンスで、中国のマイナーたちがオーディナルズを支持していたんですが、マイナーからしたらオーディナルズって、MEV的なアドバンテージもあるし、その点でもすごく都合のいいものなんだろうなというのは、改めて思いましたね。

加藤: また、BRC20というプロトコルが登場し、MEVのポテンシャルが大きいことも考慮されていましたが、実装が進む前に盛り下がってしまった印象もあります。しかし、もし継続されていた場合、かなり影響を及ぼしていた可能性があるでしょう。

ビットコインでMEVが関わってきたケース②Stacks

加藤: それから、もう1つの例として、Stacksというサイドチェーンについて。これはビットコイントランザクションでStacksブロックチェーンの競争が行われていたものですね。競争の目的はStacksトークンをマイナーに購入させることでしたが、他のマイニングプールのトランザクションを検閲することで、唯一の入札者になることができる。

つまり、最低価格で落札できるということにマイナーが気づいちゃってスタックス側の人たちを困らせてしまいました。

: まあ要は、 具体的にマイナー視点で他のマイニングプールのトランザクションを検討するという事例が、もう既に出てきてるってことですね。

加藤: そうですね。入札ベースのアルゴリズムは作りが甘く、マイニングプールの特有の事情を考慮していなかったようです。

: ただ、これは改善できそうですが...

加藤: トランザクションの内容を隠すことができれば、検閲は難しくなりますが、その方法を見つけるのは難しいでしょう。不可能ではないと思うけど、結局そういう MEVのポテンシャルが あるプロトコルっていうのが生まれると、どうしてもマイニングのゲームがちょっと複雑になって、特別儲かるみたいなところが出てきやすいっていう特徴があります。

ビットコインはMEVの問題が意識的に起きない設計ではないのか?

: でも、今までそういう話ってあんまりなかったじゃないですか。

自分の理解だとその理由の1つが、スマートフォントラクト系のチェーンと比較して、ビットコインはオンチェーンでの操作があまりなく、オフチェーンのプロトコルに機能を集約させていること、そしてオンチェーントランザクションの均質化に取り組んでいることだったはずです。

例えば、タップルートやライトニングの開設トランザクションと通常のトランザクションが外部からは区別しにくいですよね。

また、RGBなどのクライアントサイドバリデーション型のプロトコルも、トランザクションが普通の送金と同じように見えるが、実際にはオフチェーンで情報がリンクされている方法を採用しています。したがって、ビットコインはMEVの問題が意図的に起きないように設計されているという認識でいいですか?

加藤: そうですね。

スマートコントラクトチェーンって、グローバルステートがあって、トランザクションの順番によってグローバルステートを操作する内容が変わってしまうっていう特徴があります。

一方、UTXOベースだとグローバルステートがないので、トランザクションの順番を入れ替えても、相互に依存関係がないトランザクションだったらあんまり関係ありません。それで今まで問題になって来なかった。

ただ、みんな色んなものをビットコイン上で作りたいという方たちがいて、グローバルステートみたいなものを導入してしまう。そのため、クライアントサイドバリデーション型であったとしても、どのトランザクションが何の操作っていうのが分かってしまうのであれば、 MEVのポテンシャルがあるっていう話ですね。

:まあ、これはオンチェーンプライバシーの話とかに通ずるところありますよね。

加藤: はい、プライバシーの問題です。

:個人的にはそんな大きい問題にはならないという感覚ではあるんですけど。スマートコントラクト的な機能も、できるだけレイヤー2とかレイヤー3とかでやろうみたいな方向性にいってるので。

イーサリアムやスマコン系のチェーンで改善策は考えられているのか?

:イーサリアムとかって、こういう問題って根本的な改善提案とかってあるんですか?

加藤: あんまり聞かないですね。ブロックの作成とステーキングを分けようとか。 あと、アプリケーションレベルで、例えばフロントランニングされる限度を設ける。

さっきの例だと、この金額分買いますって言ってるけど、1パーセント以上値段が変わるんだったら買いませんみたいにすることで、MEVを1パーセントに限ることができるといったアプリケーション層での対策は結構されてる気がします。

ただ、それってコスト増にはなるんで...。

:そうよね、どんどん複雑化するからね。なるほど、理解しました。ありがとうございます。

改善策みたいなのもあるし、そこまでは自分は気にしてはないですね。スマートコントラクト系のブロックチェーンの設計だと、より大きな問題になりやすいという認識です。 ありがとうございます。