先週末のビットコイナー反省会「Lightning Network 4倍祭り」は見ていただけたでしょうか。コアな話が多かったので見る人を選ぶ放送だったとは思いますが、私はLNにクレジットベースの「仮想チャネル」を統合することで手数料削減や効率化が可能なのではないか、という内容の話をしました。この話のインスピレーションは色々あるのですが、ビットコイナーは良くも悪くもトラストレスにこだわりすぎていたり、ビジネスに疎いという指摘が中心です。私が好きなライトニング開発者に、トラストレス性にこだわりすぎず、使いやすさや「今よりはマシ」という"Good Enough"な妥協案のようなものをたくさん提案して実装しているfiatjafがいるのもあります。

fiatjafは本コラムでも過去に紹介しているLNURL規格群や中央集権スマートコントラクトプラットフォームのEtleneum、Lntxbotなどを作っています。

ビットコイナーはレンディングや債務というものを嫌がる人が多いですが、これらが必要な状況は必ずあり、どうしても出てくるものだと思います。実際にレンディングやBTC建てローンは既に存在していますよね。何なら、ライトニングネットワークはその構造上、クレジットと相性が良いと感じています。そこで今日はHosted Channelsベースのマイクロレンディングの仕組みを考えてみます。

HOSTED CHANNELSってなんだっけ?

ビットコイナー反省会でも触れましたが、Hosted Channelsとはホストとなるノード上に存在する仮想的なチャネルです。クライアント (ユーザー)はこのチャネルを介してホスト経由でのみLightning Networkに繋がっており、このチャネルはオンチェーンに決済することができません。メリットとしては、チャネル開設のコストがゼロであること、チャネルのキャパシティが事実上無制限であることと、クライアント自身が支払い経路を選定するので送金先をホストに知られることがなく、プライバシーが改善されます。BLW、Breezなど一部のモバイルウォレットで採用されています。当たり前ですが、Hosted Channelsを通して受け取ったお金はIOU (預り証)であり、送金することでホストから本物のビットコインを受け取る必要があります。この決済方法はライトニングを使って出金するのでもいいし、オンチェーン決済や銀行送金など他の方法で決済しても構いません。(ここの柔軟性は意外と活路がありそうな気がしますよね)

HOSTED CHANNELSでマイクロレンディング

さて、上記でHosted Channelsで受け取った金額はIOUであると述べました。すなわち、ホストがクライアントにIOUを付与することでビットコインを貸すことも考えられます。クライアントから見れば、Hosted Channelで送金を受け取ったように見えます。そしてその資金をホスト経由で送ることができます。IOUをLN上のどこでも支払いに使えるのです。(IOUはホストを経由するときに本物のsatsに交換される)

銀行と同じく、信用創造が可能ということもわかりますね。ホストの実際のアウトバウンドキャパシティより、ホステッドチャネルのクライアント側の残高の和が大きくなれば信用創造です。ただし、通常のLN上に出ていける金額はホストのアウトバウンドキャパシティに限定されるので、信用創造してもトラストベースの世界でしかフル活用はできません。
ここでいうトラストベースな世界というのは、ビットコイナー反省会で言ったような「仮想チャネル (広義)」のみで繋がっているネットワークです。

マイクロレンディングは労働効率が悪いため、一般的に金利が20%以上と高いです。一昔前の闇金や、ウシジマくんに出てくる闇金を想像していただければ大体イメージがつかめるでしょう。彼らは普通なら誰も貸したくない相手に少額を貸すことでリスクを限定し、暴利を取ることで資本効率を高め、暴力で信用力の低さを補います。そして、金額を限定し、高い利息を貸し、暴力 (契約法、回収機関)で信用力を補うのは、カードローンやメルカリの分割払いなども同じような原理なわけです。したがって、貸金業者が顧客に日本円を貸すのと同様に、ビットコインを貸すこともできるわけです。なぜなら、契約に則って回収することができるからです。(不特定多数相手に貸して確実に返済してもらうには担保などを用いたDefiのような仕組みが必要かもしれません。後述)

HOSTED CHANNELSを用いた返済

では、Hosted Channelsを用いたビットコインローンの価値はなんでしょう。それは手軽にLN払いすることができたり、支払いをクレジットカードのように一ヶ月ごとにまとめられる利便性でしょう。クレジットカードと比較して、プライバシーも遥かに高いです。返済方法も簡単で、Hosted Channelに繋がっている自分のノードに送金することで返済する方法や、ホストのノードに送金して返済する方法が考えられます。IOUを使って、本物のsatsで返すという流れです。金利の計算方法も色々考えられ、いずれにせよ金額の調整やHosted Channelに手数料を設定することなどによって金利の徴収もできるでしょう。

担保を使ってCEDEFI化する

Hosted Channelsはあくまで中央集権的なホストによるノード運営が必要なため、純粋なDefiを構成することができません。つまり、不特定多数のクライアント相手に、法的な契約など外部の制約なしに貸すことは非現実的です。これは比較的大きな制約に感じられるかもしれません。しかしながら、いわゆるDefi業界を見ていると、事実上の「CeDefi (Defiのフリをした中央集権的な金融)」の需要が非常に大きいです。徹底した非中央集権化には大きなコストが伴うので、潜在市場に関しては数百倍違っても驚きません。冒頭で述べたように、Good Enoughなものも需要があるのではないでしょうか。ということで、個別の顧客に対してマルチシグアドレス、もしくはシングルシグアドレスでも良いので、担保となる暗号資産をデポジットしてもらい、BTC建てのレートに対して掛け目を設定して貸すということも考えられます。なんでも良いので、アルトコイン、ステーブルコイン、NFTでも可能です。ただし持ち逃げを完全に防ぐには過剰担保にしないといけないので資金効率が悪く、長期的に利用されるかはわかりません。スマートコントラクトを上手く作れば、金利を稼いでくるNFTを預けてもらって、その金利で勝手にクレジットを返済するということもできそうです。

おわりに

信用力は資産です。国境のない、ビットコインの経済がより発展していく段階で、信用力や契約に基づく業務提携のようなものも増えていくと考えられますし、その段階でクレジットのようなものも発展するでしょう。現在のレンディング、ビットコインローンの広まりはその走りですが、まだ非常に初歩的なものだと感じています。ビットコイン・ブロックチェーンはトラストレスな決済レイヤーとして最高のものですが、私はライトニングネットワークはいずれ信用やクレジットで成長していくものだと考えています。好き嫌い以前に、資金効率が良いからです。

今回の話は規制などは無視しましたが、中央集権的なので普通に貸金業などに当てはまるようになっていくと思います。長期的には規制下の業者のほうが信用され、競争力が高くなるので、規制下の業者が相手にしない顧客は無認可の業者を頼るという、どこかで見たような仕組みになっていくでしょう。