貨幣創造シミュレーション(1)物々交換市場
今回からのシリーズは、貨幣のはじまりについてです。とはいっても歴史のテキストのように追っても面白くないかと思いまして、人間集団からなる社会を仮想的に考えて、アイテムを物々交換させていくことを考えます。そして、自然と貨幣のような役割ができていく過程をシミュレーションして、神の目視点で考察したいと考えております。
目標としては、次のような感じです。何人かの人間で構成されている社会を考えて、人々が様々なアイテムを生産したり消費したりしている状況を設定します。アイテム毎に生産のしやすさや、保存のしやすさなどの属性を設定し、その中で人々が合理的な決定をしていくなかで貨幣がでてくる、というのが理想です。どのような社会状況であれば貨幣が必要とされるのかということについてシミュレーションを通じて学べるかもしれないと考えています。試行錯誤しながら作り上げていくので、うまくできるかわかりませんが、少しずつ進めていきます。神様も大変です。
まず1回目コラムとしては、2つのアイテムを生産・消費する社会を考え、2つの物々交換市場を創ります。いずれは3アイテム以上へと拡張したいのですが、今回は2つの品物に限定しましょう。
この社会では、アイテムAとアイテムBが存在しています。神(筆者)が創造しました。これら2種類のアイテムを全ての人が生産しています。全ての人はAとBを生産していますが、生産量は人によって違うとしましょう。例えば、海の魚を捕まえると考えると人によって能力が違うので、同じ品物でも生産量(この場合は漁獲量?)には差があるのは自然な仮定だと思います。
全ての人はAとBを消費することもしています。あらかじめ1日の必要な消費量が決まっていて、それを満たすことができれば、満足するということにしましょうか。かなり単純化していますが、これが需要を生み出すことになります。
それで余ったものはその日のうちにされてしまいます。保存可能期間1日といった感じです。これもいずれは長い期間保存できるようにしたいのですが、今回は簡単にするため、1日で全て廃棄されるアイテムという仮定を入れます。
例として次のような人がいたとしましょう。
A 生産7、消費5、余剰2
B 生産7、消費10、不足3
7つのAを生産し、5消費するので、あまり2というわけですね。Bについても同様です。生産量や消費量は人によって変えてもよいことにします。今回は簡単にするために、生産量については神の手によってランダムにバラつかせます。ただし、Aの生産は平均5、Bの生産は平均10として置き、消費量はA:5,B:10として固定します。社会全体では生産と消費の均衡がある程度取れているような設定にしておきます。
そうすると、各人についてAが余剰・不足の2通り、Bが余剰・不足の2通りということで、2*2=4パターンがあることになります。Aが余剰で、Bが不足の人がいる場合、Aが不足でBが余剰の人と交換することで、お互いの満足度を高めることができるはずです。この場合において物々交換する意志が生じると考えられます。A,Bいずれも余剰の場合は、他人にタダで譲渡して、寄付行為しても良いですが、これは何かを見返りに期待しているのかがはっきりしなくなってしまいますので、考えないことにしましょう。こういう仮定はゲーム理論的にも普通にあるものだと思います。
上で上げた例の人の場合、Aの余剰2ユニットを誰か他の人のBの余剰3ユニットと交換することができれば、必要消費量を満たすことができます。この時交換レートが1B=0.666Aということになり、Aの価値の方が高くなっています。本当にこれが妥当なのかどうかはわかりません。もし、他の人たちが全体としてBの価値がもっと高いと判断するのであれば、この人は2ユニットのAを3ユニットと交換できず、もっと少なくなるはずでしょう。実際、この人はAとBの生産量は7で同じです。1日の生産量が同じということは、生産するための仕事量が同じということです。もし生産物の価値が仕事量に比例するのであれば、レートはB=1.000Aになるはずで、A2ユニットを交換しても、このレートでは不足量を2ユニットしか満たせず、依然としてBが1ユニット不足します。
この注文する際のレートの決定方法はかなり複雑なのだろうと思います。実際は過去の経験や相場感覚と言ったものもあり、本来はNNを用いた人工知能で判断させた方がより現実的かもしれません。ただし、今回は簡単にしようと思いますので、次のような手順で計算しようと思います。
まず各人に対して、次を計算します。
*(仕事量から算出したレート)= (生産量A)/(生産量B)
上式は、生産量の比と仕事量の比が逆になることに注目して、個人にとっての価値からレートを決めています。さらに、市場の相場情報を加味します。例えば、Aを売る場合であれば、Bを買うことになりますので、Bのレートが安くなるものを探したいです。すべてのB売り注文の中で、最も安いレートを提示している人がいれば、それを狙いたい。すなわち、*の値が最小を「最も有利なレート」と仮定します。ただしそのレートがはっきり分かるわけではないので、個々人は適当にうまくやるというわけです。そこで神である私は、注文者に対してレートを次式で計算させ決定させることにしました。
(注文レート)=p*(仕事量から算出したレート)+(1-p)*(最も有利なレート)
ここでpは0〜1までの値をとるパラメーターですが、この値は適当に0.5あたりで調整いたします(神として)。
そうすると注文ができるはずです。
もし、次のようなA売りの注文
Order: buyB, volume: 2, ex_rate: B=1.5A
と、B売りの注文
Order: sellB, volume: 2, ex_rate: B=1.5A
が出ていた時に、約定するといった具合です。このあたりの仕組みは細かくやれば色々な注文が物々交換市場でもできるかもしれませんが、面倒なので、1日1回、板寄せで約定させるだけという市場にします。とりあえず、これで交換レートが決定できます。
図では試しに実行してみた結果です。この社会には5000人いて、nameが0~4999の番号でつけられています。

今回はここまでとして、次回に続けていこうと思います。
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