サッカーのファントークンについては以前の記事(2022/9/7記事「サッカーとNFTについて(3)ファントークン」)で書きました。その際はクラブチームを中心に解説しましたが、2022/11/30現在いくつかの国家代表チームもファントークンを発行しています。

カタールワールドカップには32チームが出場しているのですが、そのうち5チームがオフィシャルのファントークン を発行しているようです。

スペインポルトガルアルゼンチンペルーブラジル

これらの他に今回大会に出場できなかったイタリア代表なども発行しています。これらはここ2年ぐらいで発行されたようですが、今後も増えていくかもしれません。これらのような「国」と紐づけられたトークンについて、特に他国のファンが購入することがあるのか、その意義について考えていきたいです。ただ単にお金を欲しいというだけであればそれまでなのでしょうが、それ以外の可能性についても考えたいです。

まずこれまで話題になっていますが、これらの国別ファントークンの価格は試合結果によって大きく変動されるそうです。

11月22日(日本時間19時試合開始)に、アルゼンチン対サウジアラビアの試合がありまして、1:2でサウジアラビアが勝利しました。この試合結果はセンセーショナルなものでした。このことはアルゼンチンのトークン価格に影響を与えていました。詳しくは下リンクの記事に書かれています。

(coindesk 記事 2022/11/23) https://www.coindeskjapan.com/166274/

この記事の内容の検証をしてみます。

まず結果の影響についてですが、確かに相当なインパクトがあったことはわかります。アルゼンチンがワールドカップで初戦で負けるのは1958年以来で、そのときの相手は西ドイツです。アルゼンチンが欧州以外の国のチームに負けるのは、1990年ワールドカップカメルーン戦以来。アジア勢がアルゼンチンとワールドカップで対戦したのは過去5回ありますが、そのうちサウジアラビアは初めてアルゼンチンに勝利したアジアの国ということになります。

それで、価格の動向を今の時点で今一度検証してみましょう。

アルゼンチン代表ファントークン(ARG)の価格 出典:CoinMarketCap

過去の価格を確認すると、全体のボラティリティかなり高いようにみえます。記事にあるような下落は、22日に発生しています。確かにVoumeは大きく、価格が急激に下がっているようにみえます。ただ全体にみるとそれほど大きな変化ではなさそうです。

第2戦(対メキシコ戦)の27日に再び取引量が増えています。この試合結果は2-0の快勝だったので、価格が上がっても良さそうになると思うのですが、そうでもなさそうです。

価格は試合結果に左右されているように見えて、実はそう単純でもなさそうなので、ギャンブルとはちょっと違うようにはみえます。もともとブックメーカーによる試合結果予想は行われているので、ギャンブル自体もサッカーでは普通のことではありますが、色々な違いがあるのかもしれません。

一方で、サウジアラビア代表のファントークンでオフィシャルのものは存在していません。そのかわり、The SaujisというNFTの価格が上がったとされています。上記事によればNFT売り上げが387%上昇したとあります。これについてopensea analyticsで確認してみました。

https://opensea.io/collection/thesaudis/analytics

どうやらNFTの販売数が多くなっているようです。平均の販売価格はむしろ試合後でもあまり変わっていません。多少は高くなっているようにはみえますが、販売数が多く、結果として売上金額が増えたということです。これをもって単純にARGトークンと比較はできないように感じます。高い金額を払ってまで欲しいというわけではないからです。

上のような現象は、単純に結果に対する反応であり連想ゲーム的なもののようにみえます。高いもの安いもの上がり下がりが生じて、そのボラテリティで儲けることができるというものです。ある意味でゲーム性があるようです。

それでは、国家代表チームのファントークンは誰が買う売るのでしょうか。

発行主体としては、サッカー協会がsocio.comなどと提携して発行しているようです。このような方法は、一般のクラブチームにおけるファントークンと同じです。

購入することができる人は必ずしも同じ国籍の人とは限らないと思われます。これまでトークンでなくても、自分の国籍と違うユニフォームや商品を買うことができます。日本でも他国のユニフォームを着ている人は子供に限らずたくさんいます。少なくともフットサルやサッカーであそんでいる人を見れば、かなりさまざまなユニフォームがみられるでしょう。

その国の国民性に基づいてサッカーにも個性があります。それにファンがついていると考えれば良いのではないかと思います。あとは、それに何らかの付加価値がファントークンにつけられると単純なギャンブルとの違いが出せるかもしれません。

かつて2002日韓大会の時にカメルーン代表がキャンプをしていた大分県の中津江村(現在は合併されている)ですが、住民がカメルーンを応援しているようです。2010南アフリカ大会の時ですが、日本対カメルーンの試合がありましたが、その際にも日本ではなくカメルーンを応援するという話がありました。今大会でも応援し続けているようです(カメルーンを応援する旧中津江村)。

彼らのような人たちは、もはやカメルーン人といってもよいのではないでしょうか。また、何らかの準市民権のようなものが与えられら面白いのではないでしょうか。カメルーンのファントークンは現時点でないとは思いますが、もし発行されたときにそれを保有している人に何か特権が与えられるなどの仕様です。

もちろん筆者はカメルーンの政治家ではないので、軽々に何かを言える立場ではないですが、国のファンというのは面白い概念かもしれません。国政や地方政治における選挙権というわけではないのですが、たとえば入国の際のファストトラック審査があるなど、実際のメリットがあるとさらに面白いと思います。

これはある種の準国籍のような市民権の付与にあたるのではないでしょうか。そのような新しい国籍の概念が生み出されるかもしれません。