悟コインの新作はマルチシグを使って物理ビットコインの欠点を克服している
悟コインは日本発の物理ビットコインで、2016年に1枚あたり0.001BTC(当時約40円)が封入された状態で500円で販売されていました。Casasciusなど海外の有名な金属製物理ビットコインと異なり、ポーカーチップ状のポップなデザインからbitFlyer社などとコラボしたモデルも配布され、累計で50500枚が発行されたそうです。
本日のWBSで紹介された当社オリジナルの bitFlyer悟コインをゲットしよう!
— bitFlyer(ビットフライヤー) (@bitFlyer) May 22, 2017
コインの中には0.001BTCが封入されています。ホログラムシールを剥がし、秘密鍵のQRコードを読み取ることでビットコインを取り出すことも可能です。https://t.co/wzWs08Yjj7 pic.twitter.com/ZsDF5Wl435
従来の悟コインについて、詳しくは以下のSpotlight記事をご覧ください。

交換業の規制ができたことによって日本で物理ビットコインを販売できなくなった悟コイン(の運営会社、来夢)は2018年に日本を撤退してしまいましたが、彼らの新作がなんとまもなくリリースされます。この記事のヘッダー画像にある、金属製の新・悟コインは以前の10倍となる0.01 BTCが封入されています。

変わったのはデザインだけではありません。従来の物理ビットコインは、製造会社が生成した秘密鍵に紐づいたアドレスにビットコインが入金されていたので、製造会社が脆弱な秘密鍵を生成したり、秘密鍵を削除せず保持していたり、秘密鍵を流出させたりしていれば物理ビットコインに入ったBTCが流出するリスクがありました。新しい悟コインはここを改善する試みにもなっていますが、どういう仕組みなのでしょうか。今日はその試みを詳しくみていきましょう。
(詳細は公表されていないので、予想による部分もあります)
・「カストディ型ではない」と主張できる仕組み
・転売しにくくなるかもしれない
・技術革新は評価に値するが、物理ビットコインの新しいスタンダードにはならない
「カストディ型ではない」と主張できる仕組み
一般的に物理ビットコインは製造業者が秘密鍵とそれに紐づくアドレスを生成し、シールで隠した秘密鍵が本体に記載されているのですが、この仕組みだと製造過程や流通過程で秘密鍵が流出しているリスクが少なからずあります。
しかし今回新しくなった悟コインは違います。どうも出荷前に「製造者(悟コイン)と購入者の2-of-2マルチシグ」でアドレスを生成し、製造者の秘密鍵と2-of-2のアドレスを本体に記載するようです。
券面に数字として記載されている0.01 BTCをぴったり入金するのは購入者の仕事ということにもなるのかもしれません。
製造時・流通時の流出リスクのみならず、もしも流通時にトラブルがあった場合BTCを救出できるというメリットもあります。そのために悟コイン側で製造者の秘密鍵など必要な情報は保管しているようです。
ただ、もし購入者がビットコインを入金する仕組みだと、悟コインのアドレス一覧が公表される場合、プライバシー面で問題があります(入金元のアドレスを分析する人も出てくる)。そう考えると、入金は悟コイン側がしてくれるのかもしれません。
Satori Coin Gi uses a 2-of-2 multisig design. You generate one private key; we generate the other, and you fund it during the checkout process. We cannot move or access your Bitcoin without your key, which is known only to you.
— Satori Coin (@satoricoin) August 27, 2025
一応悟コイン側の説明としては、購入者が入金することになっている
転売しにくくなるかもしれない
2-of-2マルチシグの仕組みにより、二次市場で購入した人はそのままでは悟コインに入っているビットコインを動かすことができません。譲渡のときにマルチシグアドレスを作り直すなら、ビットコインが保管されているのは券面とは異なるアドレスになってしまいます。
そういう意味では、Casasciusなどの物理ビットコインの二次市場には「開封済み」「未開封」でそれぞれ相場がありますが、新しい悟コインの二次流通は基本的に「開封済み」になるのではないでしょうか。
同じ理由でコインとして気軽に手渡しで使うことができず、初代と比べて圧倒的に観賞用の性質が強いともいえます。そもそもの売り出し価格の違いからして手渡しで使うことは想定されていなさそうですが。(安価なポーカーチップ型のメリットとして、気軽にプレゼントできるという点が挙げられますが、新作は気軽なプレゼントには高価すぎます)
技術革新は評価に値するが、物理ビットコインの新しいスタンダードにはならない
物理ビットコインはこれまでペーパーウォレットと同じ、太古からある(製造者をトラストしないといけないという欠陥のある)技術で作られてきましたが、新しい悟コインはここに変革をもたらすという意味で評価に値します。
ただし、物理ビットコインの新しいスタンダードになるかというと、上記の理由からあまり既存の市場に馴染まないのではと感じます。「ビットコインを具体化」した取引にも使えるものというより、どちらかというとアート作品やコレクターズアイテムとしての性質が強まったことで「物理ビットコイン」のカテゴリから抜け出しつつあるような印象を持ちました。
めちゃくちゃかっこいいので、ちゃんと残高のある一次流通で1枚欲しいところです。
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