Nostrasia参加インプレッション
11月1日からの3日間、東京・渋谷の会議場で開催されたNostrカンファレンス「Nostrasia Freedom Conference」に参加してきました。あくまでBitcoinカンファレンスではなくNostrカンファレンスだったので、発表やパネルディスカッションの内容の大半はNostrについてのものであり、主に開発者やユーザーが現在の課題や展望を語る会場は毎日熱気に包まれていました。
私にとって特に興味深かったのは参加者数の3割ほどと思われる日本のNostrユーザーたちと、それ以外のビットコイナーや海外Nostrユーザーとの共通点や違いでした。権威に対する反骨精神などに関して海外からの参加者と表面的には意見が合わなさそうなときがあっても、日本のユーザーがNostrに魅力を感じている理由の根底にはビットコイナーに通ずるものがあり、仲間内でも激論を交わしがちなビットコイナーに似ているような印象を受けました。
3日間のカンファレンスをさっと振り返ってみたいと思います。
・技術的なフォーカスは「自由」
・Nostrから入ったユーザーとBitcoinから入ったユーザーの違い
・アットホームで非ビジネス的な雰囲気
・ユーザー獲得が鍵となる
技術的なフォーカスは「自由」
Nostrasia Freedom Conferenceという表題のとおり、カンファレンスの企画者たちはNostrを「自由」を実現するためのツールと位置づけているようです。確かにNostrは本来は検閲耐性を得ることを目的に開発された仕組みです。(ただしカンファレンスの名前にいろんな表記があり、これがどれくらい正式な名称なのかは自分にはわかっていません。)
以前にも本稿で触れたことがあるかと思いますが、Nostrにビットコイナーが多いのはビットコイナーでありライトニング系の開発者であるfiatjaf氏による発案や、大手の分散SNSプロトコルであるMastodonでのビットコイナーサーバーの弾圧といった歴史的経緯からです。
ビットコイン自体が「個人主義的な自由主義」と親和性が高いことからアメリカでは「保守派」に人気な傾向があります。言論の自由に対するこだわりが強く、検閲というものに強い嫌悪感を有します。
このため、ビットコイン系のMastodonサーバーにはモデレーションを行わないものが多数あり、見る人によっては不快になるような投稿がされていました。このためそのサーバーは他のMastodonサーバーが多数所属するフェデレーションから切り離されてしまい、使い勝手が悪くなりました。(Mastodonには積極的なモデレーションを好む管理者が多く、Twitterよりも検閲が厳しいサーバーが多いようです。)
その文脈で、少なくとも現時点のNostrはビットコイナーにとって居心地の良い分散SNSを提供していることがビットコイナー割合の高さにつながっています。実際、Nostrasiaも海外からの参加者の多くはビットコインカンファレンスで見る顔ぶれだったり、ライトニング系の開発者でした。
ところが日本は少し特殊で、Nostrを始めるまでビットコインとほとんど接点がなかったユーザーが少なくないようです。
Nostrから入ったユーザーとBitcoinから入ったユーザーの違い
日本のNostrヘビーユーザーの多くはどちらかというとSNS愛好家という雰囲気で、Nostr以外にもMastodonやBluesky、Misskeyなどを一通り試しているユーザーがいる印象があります。最近ではDystopiaというChatGPTを使った国産SNSが話題になっていたこともありました。個人的な印象としては10年以上前のツイッターの雰囲気が好きな人達で、Nostrのシンプルでオープンなところに惹かれているのかと思います。
海外のNostr民との温度差はジャック・ドーシー氏とエドワード・スノーデン氏が対談した際に特に強く感じました。対談(ほぼスノーデン氏の独壇場でしたが)を聞きながら皆さん感想を投稿していたのですが、思いの外スノーデン氏に対しては冷ややかな目線の方がいました。確かに米国ではスノーデンを国賊と考える人もいて意見が分かれますが、ビットコイナーの大多数の間では権力の暴走を暴いたという意味で敬意を抱かれている印象があったので驚きました。日本のNostrユーザーはSNSの運営会社の横暴は気になっても、政府のことはまだ特に意識していないのかもしれません。
とはいえ、日本の「村民」がTwitter (X)に対して持つ不満は自由のなさに起因するものが多いです。カンファレンス会場で聞いたものではAPIの改悪によってbotやクライアントの自由な開発や運営が難しくなったこと、X社にアカウントを凍結・没収されることへの恐怖、クリエイターなどによっては二次元の作品で検閲のリスクなどです。どれも「自由」や「所有」というビットコインの存在意義と同じ問題であり、日本のNostrユーザーもビットコイナーの卵なのかもしれないと感じた3日間でした。
アットホームで非ビジネス的な雰囲気
さて、私はWeb3系のイベントに顔を出すことが基本的にありませんが、日本でも多く開催されるそのようなカンファレンスと違って「ビジネス的な雰囲気」がなくて居心地が良いことを指摘する日本人参加者が数人いました。確かにBitcoin系のカンファレンスはビジネス色が薄いものが多く、名刺交換などもあまり盛んではない印象があります。今回のNostrカンファレンスはそれに近い雰囲気でした。
あくまで私の意見ですが、BitcoinやNostrは「ミッションドリブン」なオープンソースプロジェクトであり、「利益ドリブン」な事業体が(特にプロトコルレベルの話には)あまり積極的に参加していないことが理由なのではないかと思います。
ただ同時にビジネスドリブンではない側面が盛り上がりにくい理由の1つではあると思うので、NostrやBitcoinを絡めた事業が将来的に出てくるかというのは重要なトピックであることは間違いないでしょう。Diamond Hands主催のサイドイベントでもNostrで成り立つビジネスについての議論がありました。
ユーザー獲得が鍵となる
今回のカンファレンスはNostrの日本オフ会の様相もあり、開発者のみならずユーザーも訪れていて非常にいい雰囲気でした。みんな真剣にNostrの将来を考えている中で浮かんだ共通の課題は「いかにユーザー獲得をするか」です。
現在は伸び悩んでいるユーザーを増やす方法がコンテンツなのか、地道なアピールなのか、飛び道具なのか。果たして流入するときはどれくらいのペースで流入するのか、新規ユーザーの体験が悪すぎて離脱を招かないか…など、皆意見を持っていて正解のない問題に取り組んでいく気持ちを感じました。
ちなみに自分は悲観的な意見と楽観的な視点を持っていて、「検閲耐性への需要は現時点ではそれほど大きくない」けれども「時間とともに存在意義が増していっており、そのうち自然と見直される」という意見です。
開発者がプロダクト開発でNostrをよくしていけるとしたら、非開発者にもできることの最たる例がユーザー獲得でしょう。いかに面白そうな場、面白そうな機能などをアピールしていくかというのはユーザー層、そして将来的にNostrがどのように使われていくかに大きく影響します。そしてこれはビットコインにも全く同じことが言えるんじゃないかな、という感想で締めさせていただきます。
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