ブロックチェーンのデータを元に、主に投資判断目的でビットコインがどのように分布していて、どのような傾向があるのかを判断する「オンチェーンデータ分析」とも呼べるものが、このようなデータを提供するサイトの増加もあって徐々に一般的になってきました。今回のコラムは、どのような種類の指標が見られているのか、どういう落とし穴があるのかなどについてご紹介させていただきます。

AMLなどのために特定のトランザクションを追うことが目的のブロックチェーン解析(Blockchain Analysis)とは異なり、オンチェーンデータ分析はブロックチェーン上の経済活動の全体像を把握するものです。
データの解釈に注意が必要

まず、自身でデータの収集と指標の作成を行う場合以外は様々なデータプロバイダーを信用することになりますが、ここに落とし穴がたくさんあります。ビットコイン・ブロックチェーン上のデータには、送金目的やアドレスの保有者などのメタデータが記録されているわけではないので、分析するにはこれを推定する必要がありますが、推定する方法が確率的なものや、そもそも安定して推定する方法がないものもありますので、データの集計段階で集計者の解釈・判断が入ってしまいます。無論、データの解釈段階でも解釈者の主観が入ってしまうことが多いです。すでに集計されたデータはどうしようもありませんが、データの解釈についてはなるべく疑い、自身で考えたほうが良いです。以上のことから、同じような指標でもデータから導かれる解釈がサイトごとに異なることもあるので、データ収集・集計の方法が公開されているのであれば、それも確認しておいたほうが良いでしょう。

これはオンチェーンデータのみならず、「マイニングの消費電力の○%が再生可能エネルギー、○%が化石燃料」みたいな推定についても言えます。データに基づく分析は、データ収集の手法が肝心です。
分布とその変化を解釈する

では、ポピュラーな指標をいくつか見ていきましょう。まずは、ビットコイン保有の分布や、時間経過によるその変化についての指標です:

取引所に置いてある割合 (Exchange Balance)

ビットコインが何枚ほど取引所に置いてあるかというのは、流動性を表す1つの指標です。売り手が殺到するときに増え、買い手が多いときには減るという傾向が見られます。様々な取引所のコールドウォレットやホットウォレットを追跡することで成り立つこの指標ですが、追跡されていない取引所や捕捉されていないウォレットなどもあるので、数字自体は大雑把な推定(過小評価)だということだけ気に留めておきましょう。また一般的にカストディ業者に預けられているビットコインはここには数えられていないため、GBTCやBlockfiのような場の売買傾向や存在感が捉えきれていません。

UTXOが作成されてからの期間の分布 (UTXO Age Distribution)

「何年以上動いていないコインが何割」という話の際に、nonceDataというサイトのこのグラフはよく見かけるかもしれません。UTXO Age Distributionという指標はまさにコインの何割が何ヶ月以上動いていない、というものを見る指標で、直近のコインの移動が増えると売買が活発 (長期保有者の中から売り手も出てきている)というふうに捉えられています。ちなみにUTXO.liveという、現在のUTXOそれぞれについて金額と発生日をプロットした美しいサイトがあります。左上にPatoshi (サトシと思われる主体)の採掘したコインが見えるなど、自分が好きなビットコインの可視化の1つです。

時価総額・実現価値比率 (MVRV Ratio)

UTXO Age Distributionに似た発想のこの指標は、時価総額に対して、全てのUTXOの最後に動いた時点での価値 (枚数×当時価格)の合計の比率を求めています。例えば現在はMVRV Ratioが3.1程度ですが、価格も3.1万ドルなので、逆算すると全てのUTXOの平均取得価額は約1万ドルということになります。わずか10年ほどしかない過去のデータと比較することになるのですが、ビットコイン保有者全体の平均としてどれくらいの未実現利益があるかを表し、短中期的な利益確定の起こりやすさを推定するのに使われています。特に過去の低迷期の底値付近では1を割り込んでいた(マーケット全体で含み損)のが興味深いですね。

トランザクションのデータを解釈する

取引所への入金量・出金量 (Exchange inflow / outflow)

さきほど紹介したExchange Balanceの変化を表す指標がExchange inflow / outflowです。基本的に取引所に入金するのは売るため、出金するのは長期間保有するため、という推定とセットで解釈されることが多い指標です。なお、取引所のウォレットが全てカバーされているわけではないので、データプロバイダーによって異なる数値が提示されています。なので、集計している取引所の内訳が見れるところ(Viewbaseなど)のほうが個人的には好きです。

消費ビットコイン日 (Bitcoin Days Destroyed)

勝手に訳語をあてましたが、例えば300日間動かされていなかった2BTCのUTXOが使用されると、2*300=600BDDというふうに、古い・大きい金額が動くほど増加する数値で、だいたい日毎に集計されます。これも注意点として、取引所がコールドウォレットを入れ替える際などに大きな影響を受けることがあるので、実際に動いたコインの性質と合わせて見る必要があり、少しハードルが高いです。

GBTCへのビットコイン流入

なんと言っても去年後半から話題のこの指標は、そのままGBTCの保管するビットコインの数量がどのように変化しているかをプロットしています。ただし、これは厳密にはオンチェーンデータではなく、Grayscaleの開示によると思われます。7月21日からの半年間で約26万BTCも増加しました。管理手数料で微減している日もあります。

サイト一覧

ごく一部に過ぎませんが、以下のサイトが広く使われています:

Woobull Charts - オンチェーン指標の第一人者Willy Wooによるサイトで、本人が考案したものを含め、比較的ポピュラーなものが解説や計算方法とともに掲載されています。限られた過去のデータとの比較が主になるので根拠に乏しいものもありますが、それぞれの指標の計算方法をちゃんと理解すれば自己流に解釈できます。

Glassnode - おそらく最大手のオンチェーンデータプロバイダーで、多くの種類のデータについてチャートを提供しています。ほとんどが有料ですが、トレーダーがマーケットの現況を把握するのに便利な指標もかなり揃っています。

Bybt - 最近になってGrayscaleのデータを掲載することで人気急上昇中のオンチェーンデータプロバイダーです。名前がとある取引所と紛らわしいですが、無関係です。データの種類は比較的少ないですが、無料でリアルタイムのものが見られるので重宝します。

まとめ

今回ご紹介させていただいた指標はごく一部に過ぎませんが、プロ投資家を含め広く参照されるようになってきています。よりマニアックな独自指標を作ったりできるのも魅力なので、腕に自信のある方はブロックチェーンデータ分析ツールを自作してみるのも手です!