Peter ThielからThomas Jeffersonまでビットコイナー気質を感じさせる偉人たち①
【2021/10/22】【2021/11/05】の「サイファーパンクとデジタルキャッシュの歴史」では、監視国家の台頭を阻止すべくプライバシー保護の立場から、ビットコインに至るデジタルキャッシュ開発に邁進したサイファーパンクをご紹介しました。
本コラムでは、経済、国際秩序などの観点から貨幣制度に疑問を呈し、ビットコイン誕生のずっと前にビットコインを想起させる代替貨幣の必要性を訴えた著名人をご紹介します。
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PETER THIEL(1999年)
ご存知の通り、PayPal、Palantir Technologies、Founders Fundを創業したアメリカのシリアル起業家兼投資家です。同じくPayPalマフィアのElon Musk氏ほどではありませんが、過去、ビットコインに関する発言をしています。
「Jim Cramer(人気投資番組のホスト)の助言通りにFANG株を買っていれば、資産を8倍にできた。VCを出し抜けたのだ。今ならビットコイン。ポテンシャルはとてつもなく大きいが、あまりに馬鹿げているため、プロの投資家は躊躇して買えない。FANGの時と同じだ。」
(出典:https://www.csis.org/.../peter-thiel-its-us-make-future...)
上記は2014年の発言ですが、これだけではビットコインに肯定的なのか否定的なのか分かりませんね。
2017年半ばにThiel氏が創業パートナーのVC、Founders Fundは1,500〜2,000万ドル相当のビットコインを購入、翌2018年にはThiel氏個人として再生可能エネルギーを使ってビットコインマイニングを行うスタートアップLayer1 Technologiesのシードラウンドに投資しました。(出典:https://twitter.com/anilsaidso/status/1205226367308058625...)
こうした経緯もあり、Thiel氏ビットコイナー説が囁かれていましたが、これまで本人が公に認めたことはなかったと思います。
それが先月、カミングアウトと思えるような発言を連発します。(出典:https://youtu.be/jdCKNSMbJwE, https://www.zerohedge.com/.../its-most-honest-market-we... )
「私の最大の過ちはビットコインをもっと買っておかなかったこと。ビットコインは炭鉱のカナリア、危機を警告している。」
「Fedはエコチェンバー、問題を直視しておらず紙幣印刷で乗り切れると高を括っている。」
「ビットコインは最も公正な市場だ。その市場が旧体制は崩壊寸前だと言っている。」
さらに今月初めにカリフォルニアで開催されたAtlas Society Galaの来賓スピーチでもダメ押し。(出典:https://twitter.com/Wolfvon.../status/1456482898844872704...)
「ビットコインは、このご時世に希望を見出せる数少ないものの一つ」
余談ですが、イベント主催者のAtlas Societyは、ベストセラー小説「肩をすくめるアトラス」の著者Ayn Randが創始したObjectivism(客観主義)という哲学をプロモートする団体です。客観主義は理性、利己、成果、個人の自由を重んじる思想です。ビットコイナーの価値観に近いからか、私を含めビットコイナーには「肩をすくめるアトラス」のファンは多いです。哲学書のような堅苦しさのないフィクション小説で、アイアンマンを思わせるストーリーは読み始めると止まらない面白さです。まだ読んだことがない方は、ぜひ読んでみてください。
本題に戻ります。
実はThiel氏は遡ること1999年、ビットコイン誕生の10年前にある特徴を持つ代替貨幣の必要性を訴えています(出典:https://twitter.com/JonErlichman/status/1399054273036664833?s=20)。
貨幣制度の将来を語る中で、アメリカが国際準備通貨である自国通貨を武器として利用し他国の政治経済に介入している現状を問題視し、テクノロジーの進化でグローバルにドル依存が強まる未来に警笛を鳴らします。その上で、「価値があると政府が言ってるだけの紙切れ」(=法定通貨)を交換手段として使う代わりに、シニョリッジがなく、価値操作もできないprivate moneyを作って「価値と価値を直接交換する」ことを提案します。そして、そのprivate moneyには暗号技術が使われ、さらにワシントンDC(アメリカ政府)が止めようとしても止められないシステムだと述べています。
暗号、止められない、供給量を操作できない…。聞き覚えがある単語やフレーズですね。
Thiel氏は1997年出版の「The Sovereign Indivisuals」に推薦文を寄せているので、private moneyの着想はおそらくこの本から得たのだと思います。「The Sovereign Indivisuals」はハイパービットコイン化が実現した世界を描いた予言書のような、1997年に今まさに私たちが直面している問題を予測し、解決策まで提示した驚異的な本です。邦訳はされていませんが、読める方はぜひ読んでみてください。
FRIEDRICH HAYEK(1984年)
Thiel氏のスピーチから遡ること15年、ノーベル賞受賞経済学者Friedrich HayekはUniversity of Freiburgでのインタビューで以下のように述べています。
「私たちが健全な貨幣を再び手にするには、政府の手から貨幣を奪い返すしかない。暴力では奪えない。政府が停止できないものを気づかれないように密かに社会に広めるのだ。」
まさにビットコイン。無価値または価値が低く、コンピュータオタクが使うゲームアイテムくらいに政府が気にも留めていなかった間に、じわじわとゆっくりでも確実に社会に浸透します。そのうち政府がことの重大さに気づき、慌てて禁止令を出しますが時すでに遅し。
オーストリア学派のHayekにとって、貨幣とは貨幣適性に基づき市場競争を勝ち抜いた財を意味します。こうして選ばれた健全な貨幣が価値尺度ならば価格シグナルが正常に働くため、市場原理に任せておけば経済は自律的に上手く回るという考えです。インフレや景気循環などの経済問題は、政府が供給量と金利を任意に操作できる不健全な貨幣が市場の調整機能を無効にしたことが原因なのだから、政府が貨幣への介入を止めて、貨幣の選択を市場に再任すれば経済問題は自然と解消するという考えが上記の発言の背後にはあります。
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今回はここまで。次回はさらに数十年、数百年遡ってビットコイナー候補を探してみます。
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