Vol.252 金本位制最後の砦、鯛生金山に見た日本の執念(2024年3月25日)
日々の報道などで目にする莫大なカネの流れは、現実味がなくゲーム通貨のようだと感じる人もいるのではないでしょうか。
いくらスプレッドシートで数字が積みあがっても、もはやリアリティを感じられないのは、筆者だけではないと思います。
ならば現場を見に行くという選択肢も大切かもしれません。
今の通貨制度の前、日本では金本位制が採用されていました。その時代、もっとも大量の金を生み出していた現場とは、どのようなものだったのでしょう?
筆者はその足跡を見ることで、人間が財の確保に狂気じみた力を発揮できるということを感じることができました。
今回の記事では、日本が金本位制度から管理通貨制度に移行する期間中、最大の産金量を誇っていた鉱山の様子を、皆さんとシェアさせていただきたいと思います。
第2次世界大戦に向けて産金量はフルスロットル
まず最初に、日本がどのように金本位制と関わってきたかを軽く振り返っておきましょう。
日本の金本位制は1897年(明治30年)に始まり、第2次世界大戦の敗戦を経た1946年の新円切り替えで、その制度を完全に放棄することとなります。
この期間中、日本で最大の産金を行っていたのが「鯛生金山(たいおきんざん)」です。
※筆者は現地に行くまで「たいよう金山」だと思っていました。日本語は正しく使いたいですね。
さて以下は、日本のトップ産金鉱山と年間の推定産金量を年代ごとにまとめたものです。
1890年代:佐渡金山(新潟県)- 約300kg
1900年代:鯛生金山(大分県)- 約1,000kg
1910年代:鯛生金山(大分県)- 約1,200kg
1920年代:鯛生金山(大分県)- 約1,000kg
1930年代:鯛生金山(大分県)- 約800kg
最大の産金量は1938年(昭和13年)で 2,327トンとなっています。以下は現地に掲示してあったパネルです。
日本が第二次世界大戦へ本格的に参入したのは1941年(昭和16年)ですから、まさに戦争に向けてフルスロットルで金を採掘していたことが感じられます。
だだし、日本は1931年(昭和6年)には世界恐慌の影響で金の輸出を禁止し、金本位制も有名無実化されています。
それでも外部の世界は金本位制で動いていますから、どうにか世界と渡り合うために産金量の拡大を模索していたことがよくわかります。
ここからは、その産金現場の狂気を見ていきたいと思います。
狂気のマイニング現場を体感できる鯛生金山
鯛生金山は複数の鉱脈を抱えており、その中でも金を多く含んでいる鉱脈は、地下500メートル下から地上に向け、斜めに切りあがるように位置しています。
それを採掘するために、鉱脈の近くでめっちゃ地下深くまで縦穴を掘り、そこから横穴を異なる高さで何本も掘り進み、金の含有された原石を掘り出し、地中に引っ張り上げて製錬するマイニング活動が必要になります。
これを可能にするためには、「異様に深い縦穴」と、「大量の重たい岩石を地上へ運び出す強力なエンジン」が必要になるわけです。
その「異様に深い縦穴」を上から撮影した画像がこちらです。
この立坑、粋なことに中を覗き込むことが出来ます。しかも上部は目の粗い格子状のワイヤーで蓋をされているだけです。
スマホで上から写真を撮ったのですが、間違って落として格子をすり抜けたら、地下500メートルまで一直線です。穴から吹き上げてくる冷たい風の影響もあってか、大変に下腹が冷たくなることを感じることができました。
涼しい坑内で冷や汗をかくことができる、貴重な現場です。
穴の中の木枠を修理するときに命綱だけで降りていくことを想像したりしましたが、筆者の体は完全に拒否でした。マジ怖いです。
さらに、この立坑を通じて採掘した原石を地上まで引っ張り上げるマシンが必要になります。
井戸から水をくみ上げる「つるべ」を想像すると分かりやすいのですが、引っ張り上げるワイヤーは穴の真上から吊り下げる必要があります。
以下の画像うち、赤い矢印部分にご注目ください。
これが原石を引っ張り上げるためのワイヤーですね。「つるべ」を固定してあるローラーは、巻き上げマシンより上部に位置していることが分かります。
これがまた狂気の沙汰で。。。
以下の画像は、その巻き上げを担当する200馬力の巻き上げ機です。
↑ 立坑から原石を引き上げる巻き上げ機(200馬力!)
いや、もう無理無理。
これが排気をガンガン出しながら爆音の超高速でワイヤーを巻き上げるんですよ。まかり間違ってローターの中に服でも引っ張り込まれようものなら、一瞬で終りです。怖すぎます。
しかも、この巻き上げ機から立坑上部までワイヤーを通す巨大な穴を開ける必要があります。
以下はその画像です。
頭上に開けられた巨大な穴は、狭い行動の中で、上下の感覚を失わせるようなインパクトがありました。
もうすこし分かりやすい画像がないだろうかと探していたら、Google Mapで360度の画面がありました。以下は、そのスクリーンショットです。
↑ 巨大な穴を通じて巻き上げ機に接続されるワイヤー(GoogleMapより)
書きながら、涼しいのに手に汗を握った現場を思い出しました。鯛生金山、おすすめです!
まとめ
以上、金本位制最後の砦、鯛生金山に見た日本の執念をお送りしました。
鯛生金山は、まさに金本位制から今の通貨制度への過渡期に、日本の経済を金の力で支えていた最後の砦だったとも言えます。
訪れた際には、採掘現場の雰囲気に浸りながら、時代の転換点に立ち会った人々の思いに想いを馳せてみてはいかがでしょうか。
もし現場を感じたいと思われましたら、ちょっと不便な場所にありますが、訪れられることをお勧めいたします。
鯛生金山地底博物館オフィシャルサイト
https://taiokinzan.jp/
GoogleMap(鉱山内を歩けます)
今週は以上です。
引き続き、ハッピー・ビットコイン!
ココスタ
佐々木徹
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