ICOが数々の問題をはらんでいることはみなさんも承知かとおもいます。

それに対する解決策として、かなり前にヴィタリックが、DAO-ICOという構想を発表したことがあります。これは、開発者たちにいきなりお金を渡すのではなくプロジェクトの進捗に応じて資金が手渡されるように、一定のコントラクトに資金をプールして、トークンホルダーの投票によってどの時期に資金をリリースするかを決めるといったガバナンス機能をとりいれたICO形式です。

これに近いかたちの、リバーシブルICO(rICO)というのが開発されて最初のICO(LUSKO)が計画されているようです。rICOの概要を説明しながら、これがICOの諸問題の解決策になるのかを簡潔に評価します。

rICOの概要

まず、rICOでは、コミットフェーズ(1ヶ月)と、バイイングフェーズ(8ヶ月)に分かれています。

コミットフェーズでは通常のICOとおなじくETHを送金しますが、直ぐにトークンに転換されるわけではありません。

次のバイイングフェーズの8ヶ月では、ICO参加者は、ETHをトークンに転換するか、転換せずに払い戻しを要求するかを選ぶことができます。

プロジェクトの進捗がイマイチだとおもえば、トークンに転換せずに、ETHの払い戻しを要求することが出来るうになっています。

コントラクトがこれらを実行するのに、払い戻しを要求したが開発者がごねて払い戻されないということはありません。

そのあたりが、従来のICOと違う点で、投資家の保護になっているとのことです。トークンへの転換は、一度にすべてではなく、好きな時に好きなだけ行うことができます。上限は、最初のコミットフェーズでコミットした額です。つまり送金したETHの額が上限になります。

いつでも好きなときに転換できるとなると、8ヶ月のバイイングフェーズのあいだの最後になって転換するかどうかを決めればよいことになります。これでは開発者たちは資金を直ぐ得ることができなくなるので、トークンの転換価格を8ヶ月の間に徐々に上げていくということで傾斜をつけます。

8ヶ月の間にプロジェクトの進捗が見られないようであれば投資家は資金を引き上げるので、開発者のICO持ち逃げがある程度防げるとしています。

これがrICOの概要です。rICO方式はドイツの規制当局からOKが出たとブログにはかいてあります。

とりわけ、コミットフェーズの1ヶ月間は単なるコミットだけであり、実際にトークンへの転換がはじまらなければ規制を受けないという見解も示しています。

これが本当ならば、試しにコミットフェーズだけやってみて、それなりのコミットがあれば規制に準拠して次にすすめばよく、最初から規制対応するひつようがないので、気楽に募集だけはできるようになります。

(この法解釈が正しいかどうかは疑いがあります。プロジェクトは実際は違法でも勝手に有利に規制を解釈する癖があるので注意してください)

さて、これは上手く行くのでしょうか?

まずrICOの性質を投資家側から見てみます。これは従来の金融でいうと転換社債に近く見えます。予め決められた額で株式に転換でき、転換しなければ金利を得られるという商品です。ただrICOの場合は、金利は得られないので機会損失が発生するとになります。また転換社債と違って発行体のデフォルトリスクもありません。

すると、転換価格が変動するアメリカン型コールオプション※と見るのが正解でしょう。オプションのプレミアムは、ETHをロックしている間の機会損失であり、ETHの貸出金利に相当するということです。

(※期間中何時でも転換できるものをアメリカンオプションといいます)

投資家・プロジェクトの最適戦略

すると投資家のrICOへの最適戦略は何になるでしょうか?現在のようにETHの調達コストが低ければ、できるだけ多くのプロジェクトにコミットだけしておき、なるべく転換をおくらせて見極めるということになります。

プロジェクト側は、リスクがないという触れ込みでコミットメントを宣伝し、転換価格に強烈な傾斜をつけて、8ヶ月の間に、提携などのニュースや、素人を騙すだけの誰でも開発できる簡単な部分だけをリリースさせながら投資家を煽ることになります。ETHの資金調達コストが低い場合、投資家の最適戦略とあいまって、過大なコミットメント額を最初に集めようとするプロジェクトが続出します。

投資家もあとからキャンセルできるとなれば、多少過大でもとりあえずコミットしておこうと言うことになります。こうしてコミットバブルを引き起こし、最初の8ヶ月での見せかけのプロジェクトの成功を演出するインセンティブが高まり、最終的なICO詐欺の被害額はより大きくなる可能性もありかもしれません。

ICOのプロジェクトの殆どが実際のプロダクトをリリースできてないという統計は有名です。さらにいうとリリース出来たプロジェクトでも8ヶ月の間にリリース出来た事例は非常に少なく、多くが2−3年の期間を要しています。

ですので、8ヶ月の転換フェーズがあるから、プロジェクトの進捗が進むかというと大きなる疑問があります。投資家にとって8ヶ月はプロジェクトを見極めるには短すぎるかもしれません。(※当然8ヶ月より長く設定することもできますが・・)

批判的な立場から書きましたが、ICOをコントラクトで制御しようという方向性は基本的に賛成です。多くの取り組みがなされることによって、ICO市場が適正・健全化されることになることがプロジェクト・投資家の双方に最終的に多くの利益をもたらすでしょう。

rICO — The Reversible ICO
The Reversible ICO is a new form of an Initial Coin Offering (ICO). A “rICO” runs on a Blockchain to fund projects and (decentralized)…