Vol.253 政府のインフレ政策に乗っかろう!ハイエク流の資産防衛術(2024年4月1日)
このところ、岸田首相の「デフレからの脱却」を耳にすることが増えてきました。モノの値段が下がるデフレとの逆は、値が上がり続ける「インフレ」です。
「政策に売りなし」というように、国が決めた路線に沿う形で資産を運用しておけば、それほどハズレを引かずにすむという考え方もあります。
そこで今回の記事では、資産形成を有利に進めるうえでも、インフレ政策に「乗っかる」ことは大事だよね・・・ということを書いてみたいと思います。
政府の・政府による・政府のためのインフレ
まず最初に、なぜどの国でも政府はインフレ政策を取ろうとするのでしょうか?
ここではオーストリア出身の経済学者、ハイエク博士の著書「貨幣の脱国営化」にヒントを求めてみたいと思います。
歴史は大部分がインフレの歴史であり、通常それらのインフレは、政府の利益のために、政府によって仕組まれたものである(筆者訳)
"History is largely a history of inflation, and usually of inflations engineered by governments and for the gain of governments."
フリードリヒ・A・ハイエク、「民間通貨と公的通貨」(1976年)

まさに「政府の・政府による・政府のためのインフレ」じゃないですか!
では、なぜインフレーションは政府の利益を拡大させるのでしょう?
その答えは、「富の再配分という隠れた税金」と「政治的な反対を受けない資金調達手段」にありそうです。これに関して、ハイエク博士の考えを紹介してみます。
① 富の再配分という隠れた税金
まず一つ目は、インフレが隠れた税金として機能するという点です。モノの値段が上がるということは、現金の価値が弱まることを意味します。
すると、預金を保有している人の購買力はさがり、同時に借金をしている人の返済負担(債務といいます)も目減りします。
預金をしている人の富が削られることから、隠れた税金と呼ばれるわけですね。
そして現金の預金者から削られた富は、債務者(借金をしている側)へと丸ごと移転されることになります。
日本最大の債務者は政府(2022年3末時点で1,241兆円)です。つまり、インフレーションを起こすことで、富が国民から政府へと再配分されることになるわけです。
ハイエク博士は、この再配分が政府による収奪の一形態であると述べています。
② 政治的な反対を受けない資金調達手段
政府は、お金を新規に発行することで、赤字のプロジェクトにも資金を提供することができます。
たとえば消費税のように誰の目にも分かりやすい増税だと、あっちこっちから政治的な反発を受けることになります。
ところが、お金の発行による資金調達では、そのような「増税への反発」を受けることがありません。
それどころか、現金価値の減少で起きるインフレーションを通じ隠れ課税を実行しつつ、経済が拡大しているという錯覚を作り出すことができます。
この結果、ハイエク博士はお金の発行権限を持つところに権力が集中すると指摘します。
中央に権利が集まるにしたがい、地方の意思決定、個人の自律性、健全な民主主義に必要なチェックアンドバランスなどは浸食されていきます。
この過程でおきるインフレは、国民にお金の価値の不安を抱かせるため、社会不安が広がり、政治的な混乱も起きやすくなります。
そこで危機の解決策を持っていると主張する独裁的なリーダーが出てくると、その主張がなし崩し的に受け入れられやすくなる可能性もあるとハイエク博士は述べています。
政府のインフレ政策に乗っかろう
さて政府がインフレを通じて、国民に経済の拡大という錯覚をみせていると同時に、富を国に再移転させることを実質的に行っている・・・というハイエク博士の主張を確認してきました。
もちろん、これがすべて正しい主張ではないかもしれません。また米国をはじめとする主要国がインフレ政策を取るなか、日本が単独で健全財政政策を取ることも、現実としては無理でしょう。
では、私たちはどのようにして自分たちの財産を守っていけばよいのでしょう?筆者なりの答えは、シンプルです。
それは、政府が自らの利益を残すために行動を起こすのであれば、政府と同じポジションを取ってしまえばよい・・・というものです。
では日本国の政府が保有している財産の内訳は、どのようなものなのでしょうか?以下は内閣府が公表している、2022年末の国全体の正味資産(国富)の明細となります。

正味資産(国富)の欄を見ると、2022年時点で3999.1兆円(紫色でハイライトしています)。めっちゃ富裕層ですね!
ところで内訳をみていくと、金融資産は、ほぼ負債で相殺されていることが分かります。これは現金や証券の特性によるものです。
預け入れる側にとっての現金や証券は資産ですが、預け入れられる側、たとえば銀行側から見れば、それらは負債となります。
銀行の本質は、信用を無に近い状態から作り出せることにあります。
このバランスシートを見ると、「信用を作り出す」ということは、「資産と負債の両方に同額を計上して終わり」なのだなとよくわかります。
結局、差し引きしてしまえば無しか残りません。
こうして資産と負債が相殺されて消えるところを見ていると、お金って本当に幻想なのだなと感じることができます。まさに釈迦のいう「色即是空」ですね。
結局、計上されている3,999兆円のうち、国富の大部分は不動産で構成されています。
- 固定資産 2,173兆円(54%)
- 土地 1,309兆円(27%)
1の固定資産は、住宅の建物や道路・機械・設備などですね。2の土地は、そのまんま「土地」です。
あとは少額ですが、日本銀行が保有しているゴールド評価額も計上されています。
※「貨幣用金・SDR」項目の資産から負債を差し引いた金額になります(字数がたりず別の機会に!)
つまり、国がインフレ政策を進めたときに富が残るのは、これら「固定資産」と「土地」、あとはゴールド ということになります。
(ここにビットコインが計上されるようになれば、少しは税制も変わってくるのかもしれないですね)
最後に「無から有を生み出す方法」について書いておきますね。
仮に土地や固定資産を買うため、銀行などから借り入れを行った場合、負債である側の借金はインフレで実質の額が目減りしていきます。
事例として、1000万円を借りて1000万円の不動産を買ったときを考えてみましょう。購入直後は、物件価格から借入金を差し引けば、純資産は0円です。
ところがインフレで不動産の価格が倍になれば(仮定の話です)、借入金は1,000万円のままに対し、不動産の評価額は2,000万円に上昇します。すると差し引きした純資産は1,000万円!
これこそ無から有を生み出す方法であり、まさに政府のインフレ政策に乗っかる方法だと言えるでしょう。
もちろん、下手な不動産をつかんでしまうと、0円でも買い手が現れなくなることもあります。あくまで考え方として、参考にしてみていただけたら幸いです。
まとめ
今回の記事では、政府がインフレ政策を推し進める本当の理由をハイエク博士の著書から振り返ってみました。
そしてインフレが私たち国民から政府へと富が移転されていくツールなのであれば、我々も政府と同じポジションを取ることで、富を守れる可能性について言及しました。
具体的には、インフレに強い不動産や金などの実物資産を保有し、低金利の借り入れを活用した場合の簡単な試算などを挙げてみました。
以上、考え方の踏み台にしてみていただけましたら幸いです。今週は以上です。
引き続き、ハッピー・ビットコイン!
ココスタ
佐々木徹
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