日本のサンドボックス制度を考える(2) ~規制のバランス~
前回(2023/2/22記事)に引き続き、規制のサンドボックス制度について考えます。
グーグルトレンドを使って、”regulatory sandbox”というワードの検索トレンドを調べてみました。

国別でみると、過去5年間、過去12か月間のいずれもシンガポールが人気度1位に上がっています。アジアが高いように感じますが、中には大陸法国家もありますし、英米法国家もあります。シンガポール自体は英米法を主体とした国です。今回はシンガポールに注目します。
2023年3月11日~12日に河野太郎デジタル大臣がインドとタイへ出張し、インドで三極委員会のインド総会に出席したようです(デジタル庁記事)。
そこで、シンガポールのガン・キムヨン貿易産業大臣と、規制のサンドボックスやAIの社会実装における現状と課題について意見交換をしたそうです。規制のサンドボックスというのは前回の記事で説明したのでそちらをご覧ください。
なぜ、インドやシンガポールなのかということですが、これについても理由があると思います。元々はG20などの会合も今後予定されており、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)の推進という目的もあったのでしょう。それ以外にもデジタル大臣としてはサンドボックスについても興味があったのではないかと思います。
シンガポールには、MAS(Monetary Authority of Singapore)という組織があります。ここは通貨を発行しているので中央銀行としての機能を持ちます。
シンガポールはブロックチェーンの採用をリードする5カ国ともいわれていますが、2022年ごろからは規制を強める動きなどもあるといわれています。ただ、必ずしも規制が弱い・強いという単純化できるわけではなく、あくまでどの程度の規制があるのかという程度の問題であるように思います。
シンガポールには、3つのサンドボックス制度があります。
- Sandbox
- Sandbox Express
- Sandbox plus
2016年に開始した最初のsandbox制度では、応募があっても採択されるものが少なかったようです。それで2019年には、Sandbox Expressという、より使いやすい制度を用意し、採択が少し増えていったようです。リスクの低い事業や、複雑ではないもの、すでに市場で十分に理解されているものなどを、より素早い手続きで実現しようとするものでした。さらに、2022年に新しいSandbox plusが開始されました。実績が増えるようにサンドボックス制度自体も模索しているということだと思います。
しかしながら、少し俯瞰してみれば、結局のところMASは規制による調整を全部なくそうとしているわけではないとう点に注意する必要があります。
この仕組みは、英米法の国においては、適切なレベルの規制はどのくらいかなというような、当局の疑問を解決するという側面もあるように感じます。MAS自体が事業者申請者に対して、密に連絡を取ろうとしているそうです(記事引用)。自分たちの規制レベルを誤れば、それによる競争力低下を招きかねないということを危惧しているということもあるのではないかと思います。
一方で、日本においては、むしろ規制が強い中でどの程度なら社会に混乱を招くことなく、規制を緩和できるかを重要視しているように思います。したがって、企業と密に連絡を取るよりも、社会の反応などを見ているように感じます。
薄味のスープを味見しながら調味料を加えるのか、あるいは、濃いスープに少しずつ水を加えてちょうどよい味付けにするのか。方向性が違うように見えますが、結局は同じ目的に感じます。
例えば、非中央集権的な金融システムを目指す立場からしてみれば、結局のところ、あまり変わらないのかもしれません。中央がコントロールして、最適な状態にするということは従来と変わらないからです。
このような観点から考えると、これらの規制のサンドボックス制度は、CBDCを発行する中央銀行などには都合がよく、親和性が高いように感じます。実際に、国際間の決済システムにおいてCBDCを利用しても問題なく決済できるかどうかについて、実証試験をしています。次の記事であるように、シンガポールのMASを含め、各国の中央銀行などが参加しており、国際間におけるサンドボックス制度であります。
https://news.yahoo.co.jp/articles/cfe242f5462b54ed1c1ea87397086fdabf8da952
最後に、日本は金融に限らず幅広くサンドボックス制度の対象とし、運用しているようです。どこまで規制緩和が実現できるかについては、今後も注目していきたいです。
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