東「今回は新しいコンテンツということで、加藤さんにお越しいただきました。Q&A形式で説明や解説をしていただこうかと思います。それでは、さっそく始めていきましょう。」

マイナーとマイニングプールの関係

東「まず最初にマイニングプールについて質問させていただきます。マイニングプールの集権化が懸念されることが多いと思いますが、これは大きな問題だと思いますか?」

加藤「マイニングプールの集権化が問題視される理由の一つは、トップのマイニングプールの力ですね。トップ2、3のマイニングプールを合わせると、ビットコインのハッシュレートの半分を超えます。もし、これらのマイニングプールが共謀すれば、51パーセント攻撃を仕掛けられるのではないかという意見が多いのです。」

加藤「ただし、この問題を理解するためには、マイナーとマイニングプールの違いを理解する必要があります。マイナーとは一般的には、マイニング機材と電力を用意して実際にマイニングを行っている人々のことを指します。ビットコインのマイニングは大規模化しており、一人のマイナーがその規模に対抗するのは困難です。収益が安定しないという問題もあります。」

加藤「例えば、ビットコインでは1日に平均して144ブロックが生成されます。仮に1日に1ブロック生成するためには、ネットワーク全体の144分の1のハッシュレートが必要です。しかし、実際にはマイナー個々のハッシュレートはもっと小さく、ある月は全くブロックが見つからず、ある月は5ブロック見つかるという不安定な状況が続きます。これでは事業計画を立てるのが難しいです。」

加藤「そこでマイニングプールが登場します。多くの小さなマイナーが集まり、収益を分け合う形をとるわけです。重要なのは、マイナーがマイニングプールを自由に選べるということです。例えば、接続の遅延が少ないものを選ぶとか、マイニングプール側がカスタムのファームウェアを提供しているとか、様々な要素によりマイナーはマイニングプールを選びます。また、マイニングプール側も、多くのハッシュレートを集めて手数料を稼ぐために、様々な施策を打っています。」

マイニングプールの集権化はそれほど深刻ではない?

東「肝心な集権化の問題について詳しく教えてください。」

加藤「仮に集権化が発生したなら、マイナーは2つの選択肢があります。攻撃に加担し続けるか、攻撃を行っていないマイニングプールに切り替えるかです。51パーセント攻撃が成功したとしても、実際にできることはユーザーのトランザクションを一切含めないようにする、つまり送金を拒否する程度です。しかし、これはマイナーにとって収益につながらない行動です。新規に発行されるビットコインは得られますが、手数料は得られないため、合理的なマイナーは攻撃に加担するよりも、手数料を得られる攻撃していないマイニングプールに切り替えるでしょう。これが一般的な予想で、それゆえに集権化の問題はそれほど深刻には捉えられていません。」

東「それならば、1つのマイニングプールが大量のハッシュレートを持つことになった場合、どのような影響があるのでしょうか?」

加藤「もし1つのマイニングプールがハッシュレートの半分程度を持つ、あるいはそれ以下でも2割や3割を持つことになったら、確かにそれは問題です。しかし、たとえそうなったとしても、マイニングプールがユーザーの資金を奪うことはできません。せいぜい、送金が一時的にできなくなる、あるいは拒否されてしまう程度です。また、マイニング以外にも秘密鍵などのセキュリティ要素が存在しており、マイニングからの攻撃でできることは限られています。」

東「理解しました。しかし、51パーセント攻撃が可能だという懸念はありますよね?」

加藤「確かに51パーセント攻撃というリスクは存在します。しかしながら、経済的インセンティブから考えて、マイナーが攻撃を続けるメリットはあまりありません。特に、トランザクションの手数料が報酬の大部分を占めるようになると、51パーセント攻撃をする経済的インセンティブはさらに減少します。これは注目すべきポイントです。ただし、ハッシュレートが特定のマイニングプールに集中するのは、あまり好ましい現象ではありません。」

特定のプールへの集中化を防ぐ対策とは

東「ハッシュレートの特定のプールへの集中を防ぐ対策や技術、トレンドはありますか?」

加藤「まず、マイニングプールのセットアップを簡単にできるようにするのが大きな対策の一つだと思います。その上で、マイナーが簡単にマイニングプールを切り替えて、大きな不利を負わないという状況を目指すべきだと思います。」

加藤「その前提が保たれるためには、マイニングプールが複雑化しすぎたり、スケールメリットが大きくなりすぎて、大きいプールが有利になりすぎることを防ぐことが大切ですね。個人的にも、その防止が重要だと感じています。また、マイナーがブロック生成を提案できるようにするという、Stratum v2という技術があります。」

東「Stratumというのは、マイニングの機材、ASICとマイニングプールのサーバーを結ぶ通信のプロトコルですよね。」

加藤「はい、その通りです。古くから使われてきたStratumにはいくつか問題があり、その一つとして、中間者攻撃で報酬の割り当て先が書き換えられる可能性があります。そのため、バグ修正を含むStratum v2への更新が始まっています。」

マイニングプールによる検閲耐性を上げる試みとは?

東「Stratum v2においては、マイナーからマイニングプールへ採掘するブロックを提案する機能が追加されているとのことですが、その意味するところは何でしょうか。」

加藤「これまではマイニングプール側がブロックを用意し、各マイナーに採掘指示を出していました。新機能により、マイニングプール側での不正が起こりにくくなると考えられます。ただ、このブロック提案機能が実際に効果的であるかについては疑問もあります。例えば、他のマイナーが空っぽのブロックを採掘しようと提案しても、それは収益性が下がるため迷惑となります。」

東「つまり、収益性が劣るブロックを採掘するためにマイニングプールのハッシュレートを振り分けられると、他のマイナーが不利になるというわけですね。」

加藤「その通りです。そして、最終的に報酬の払い出しはマイニングプールが行いますから、マイニングプールの指示に反した場合、報酬の払い出しが止められる可能性も考えられます。」

東「つまり、まだマイニングプールがかなり強いという状況は変わっていないということですね。」

加藤「そうですね、まだまだ。Stratum V2だけで、マイニングプールの権限をマイナーに移しましたというのは、ちょっと言い過ぎかなと思います。」

東「まとめると、Stratumのバージョン1では、マイナー側がこのトランザクションをブロックに入れてという意思表示や選択をすることすらできなかった。マイニングプールがブロックに入れるトランザクションを決めている。で、場合によってはそこが検閲の可能性になってしまう。バージョン2では、マイナーがこのトランザクションをこのブロックに入れてくださいと提案することができるようになるってことですよね。ただ、提案したものが最終的に受け入れられるかどうかは、マイニングプール側が結局決めるという認識なので、そこでブロックされてしまうと、やっぱりこの提案はダメ。あまり意味ないんじゃないかという風になってしまうかもしれないってことですよね。前進ではあるけど、根本的な解決になるかはわからない、みたいな感じですかね。」

加藤「そうですね。Stratum V2自体は、ブロックを提案する機能以外にもいっぱい改善点が含まれてるので、これから順調に普及していくと思います。けれどブロックを提案する機能っていうのが、そんなに効果的ではなくて、むしろ、新しいブロックが配信されてくる前に、自分の手元で通信の遅延の話なんですけど、その数秒間の間に採掘ができるみたいなメリットというイメージ。大事なのは、さっきも言ったように、マイニングプールを簡単に切り替えられるように、みんなが共通のルールに基づいてマイニングプールを運営することかなと思います。」

東「あと、個人マイナーの視点からすると、正直、特定のトランザクションを入れて、これは入れないという判断をしてるわけでは必ずしもないですからね。自動的に手数料が高いトランザクションをバンドルして入れたっていうくらいの話で、積極的にブロックの中身を決めたいという人は、多分、そんなにいないですよね。」

東「なるほど、わかりました。Stratum V2は、ブロック内のトランザクションを提案できる機能以外の改善も多いってことだったので、そういう改善を通して、少しずつ、マイニングプール周りの分散性だったり、セキュリティを改善する。そういうような試みがありますね。」

東「Stratumに関しては加藤さんが研究所の方で以前記事を書いているので、興味がある人はそちらを見てください。」

Stratum V2は本当にマイニングプールの検閲耐性を改善するのか?
マイニングの話題になると、少なくともここ数年は規制や検閲という部分に関する関心が高まっている実感があります。マイナーがマイニングプールに接続する現状ではプール側が検閲を行えるのではないか、いくつかの大手マイニングプールが検閲を行うと実質的にネットワーク全体が検閲をしているのと同じ状況にならないか、といった疑問です。 ビットコインの検閲耐性はマイニングプール間、マイナー間の競争によってこれまで守られてきました。経済合理性を欠く検閲行為は検閲をしないマイナーへの報酬増加に繋がり、マイナーは検閲を行わないプールへと移動することが予想できます。これ自体はかなり強力な理屈で、ビットコインにおけるPro…

今回の内容はビットコイナー反省会でも話しています。