昨年はOrdinals Inscriptionsの誕生に端を発してビットコイン・ブロックチェーン上での投機熱が盛り上がりました。NFTから始まったブームは草コインへと移行しましたが、Ordinalsに対応していれば同じウォレットで取引できることで一つのエコシステムとしてまとまっている感覚はあります。

ところがNFTの文脈であればある程度理解できた「ビットコイン上にデータを保存している」という特徴は草コインに関してはあまり意味をなしていないように感じます。実際のところ大半のトランザクションはトークンの一次取得(Mint)や送金であり、実際にトークンの性質などをオンチェーンに記録する「発行」のトランザクションを圧倒的に凌駕しているためです。

逆に言えば、ユーザーが増加して手数料が問題視されるほどこれらの取引をわざわざ非効率的な形でビットコイン上で行う必要性が見直され、「ビットコイン上」という建前を保ちつつ、より効率的(低コスト)な手段に人気が出るかもしれません。まさにLightning Labsが開発するトークンプロトコル「Taproot Assets (旧称Taro)」はその未来に期待しているようです。

今日はTaproot Assetsの現状とTiramisu Walletについて軽く触れ、今年がTaproot Assetsの年になる可能性を考えてみましょう。

・Taproot Assetsの秘技「Pocket Universe」は究極の低コスト化を支える

・Tiramisu Walletは発行機能も持ち合わせたカストディアルウォレット

・Lndに連携するTapdが成熟すればエコシステムの急成長が望める?

Taproot Assetsの秘技「Pocket Universe」は究極の低コスト化を支える

冒頭で述べたとおり、私の意見としては仮想通貨取引がまた流行したときにBRC20の人気が継続していた場合、その非効率性が(取引コストや純粋な処理能力の限界により)新規ユーザーの門戸を狭めてしまうことが草コイン投機としては資金流入を制限してしまい非常にもったいないため、より効率的なプロトコルが見直されると予想しています。そしてビットコイン上にはトークン発行プロトコルがいくつもありますが、その中でも実利用できる段階に比較的近いもののうち効率性を追究できるものがTaproot Assetsなのです。

過去の記事でTaproot Assetsの切り札の1つである「Pocket Universe」というスケーリング方法(※)を解説しました。※…スケーリングというよりはカストディ型のサイドチェーンに近いです。詳しくは記事を読んでください。

Taroが用意するトランザクション集約方法“Pocket Universe”にみえる自己矛盾
最近ビットコイン上でステーブルコインを発行してライトニングネットワーク上で送金できるようにしたいというプロジェクトが増えてきています。その中でも最大手ライトニングノード実装であるLndの開発元のLightning Labs社がTaroというプロトコルを推していて、存在感を示しています。 日本のライトニングノード運営者コミュニティであるDiamond Handsから近日中に発表するビットコイン上のトークン発行に関するレポートの執筆を通して興味深かったトピックの1つに、Taroが想定している“Pocket Universe”というライトニングネットワークとは別のアプローチでトランザクションを集約する方法がありました。 今日はTaroについて軽く説明した後にPocket Universeを紹介し、Taroチャネルとの特性の違いを解説します。最後にその特性を踏まえて、ビットコイン上のトークン発行の目的化を指摘します。 Taroとは TaroとはLightning Labs社が春に発表したトークン発行プロトコルで、Taptree内でTaroアセットの残高情報にコミットするTaproot

事実上大半のユーザーが同一のPocket Universeを利用していて、かつ完全なるセルフカストディに出金するユーザーが少なければTaproot AssetsはBRC-20より格段に多くのユーザーを抱えることができるでしょう。

Tiramisu Walletは発行機能も持ち合わせたカストディアルウォレット

さて、現状でTaproot Assetsが利用できるウォレットは非常に限られており、ライトニングノード実装のLndと組み合わせて利用できるTapd(旧Tarod)というウォレットのほかだと有名なのはTiramisu Walletというカストディアルウォレットになります。

What is Taproot Assets Protocol? - Tiramisu wallet docs
A simple explanation of Taproot Assets Protocol (TAP) for non-developers

こちらのウォレットの特徴として、カストディアルウォレットにもかかわらずしっかりとトークンやNFTを発行する機能が搭載されている点が挙げられ、取引機能などもあります。このあたりは完全に投機需要を見据えていてしっかりやっているなという印象を受けます。

もちろんですが自身のビットコインウォレットやライトニングウォレット、Tapdノードなどへとアセットを出金することもできます。つまり保管はノンカストディアルに行うこともできますが、現時点だと交換機能などはTiramisu Wallet内のものを利用するイメージですね。

Lndに連携するTapdが成熟すればエコシステムの急成長が望める?

先程も軽く触れたTapdはいわゆる「公式」のTaproot Assetsノード実装で、クライアントサイドバリデーションに使用する各種データの保管ややり取りも行います。仕組み上、鍵の自前での保管だけではなくTapdの利用をもってやっとTaproot Assetsのセルフカストディとなります。

このTapd、まだα版として提供されている段階なのであまり幅広く利用されてはいません。Lnd自体に同梱されているわけでもなく、Litdというまた別のLightning Labs製のツールに同梱されています。

BRC-20が加熱した1つのきっかけがバイナンス等の取引所への上場であるとすれば、Taproot Assetsで同様のことが起こる前提条件としてTapdの成熟が挙げられるでしょう。取引所が自前でトラブルなくTapdを実行できる段階になればエコシステムが一気に盛り上がる可能性があります。(まずその前に需要を示す段階も必要だと思いますが。)

したがって2024年にTaproot Assetsが流行るシナリオを以下のように想像しています:

・BRC-20の取引コストが一般のビットコインユーザーのみならず、「BRC-20を使ってみたいが高くて使えないユーザー」の誕生によって既存のBRC-20ユーザーにも問題視されるようになる

・Tiramisu Walletのような「トークン発行側も、トレーダーも使いやすい」ウォレットの存在がエコシステムの急成長を促す

・Tapdの成熟によって取引所もTaproot Assetsに対応し、ユーザー数の増加に拍車がかかる

ただし、BRC-20の早い物勝ちで一次取得(Mint)できるという特徴は別の方法で実装する必要があり、そこの魅力が一番大事だったという可能性も全然ありそうです。いずれにせよ、ビットコイン上のトークン発行エコシステムの今後を占う上で、Tiramisu Walletの成長は気になるところです。