Vol.286 米ビットコイン準備金戦略はマイクロストラテジー買収で完遂される(2024年11月18日)
通貨発行権を最大限に活用し国益を確保する
アメリカの選挙が終わり、トランプ大統領の当選後、暗号資産市場は大きな転換点を迎えています。
トランプ氏は米国を「世界の暗号資産の中心」にすることを約束し、ビットコインの「戦略的準備金」の設立を提案。
これを受けて11月6日にはルミス上院議員がビットコイン準備構想を発表しました。
米国が保有する金の一部を売却し、財務省が5年間で100万ビットコインを取得するという内容(こちら)です。
当記事では、市場の動きを分析していくと、「この構想がMicroストラテジー社の買収という形で実現される可能性が浮かび上がってくるよね」という一つの考え方を書いてみたいと思います。
市場は米国のビットコイン備蓄戦略が実現すると織り込んでいる
まず、この構想に対する市場の実際の反応を確認してみましょう。11月6日の発表以降、かなり衝撃的な値動きが観測されています。

11月6日以降、ゴールドのビットコインに対する比率が急速に低下。直近では2024年入りしてからの最低水準を割り込んでいます。
この動きは、市場参加者が(ゴールドを売って資金調達するという)ビットコイン準備構想を現実として捉えているとも言えそうです。
さらに注目すべきは、ETFの資金フローです。

11月6日以降の累計では、ゴールドETFから約14.5億ドルが流出する一方、ビットコインETFには約41億ドルの資金が流入しています。
つまり、表面的な価格変動だけでなく、実際の資金移動においても、ゴールドからビットコインへのシフトが確認できるのです。
Polymarketが示す手堅い市場予測
今回の米国選挙でトランプ大統領勝利の可能性を最も早く示していたのは、Polymarketのベッティング市場でした。
現在、同市場はトランプ大統領による国家ビットコイン備蓄の実現可能性について21%という予測を示しています。

この21%(記事を書いている間に25%へ変わりました...)という数字から、単純計算で期待値としての購入量を算出すると、約210,000ビットコインとなります。
1,000,000 BTC × 0.21 = 210,000 BTC
これは「期待値」の考え方で、例えば「100万円が当たる宝くじで、当選確率が10%の場合の期待値は10万円」という計算と同じ原理です。
つまり市場参加者は、ビットコイン備蓄戦略が21万ビットコインくらいから段階的に始まっていくと考えていることになります。
ですが、現実的にこれだけの数量を市場で調達しようとすると、ビットコインの値段は跳ね上がってしまい、当初の予算では収まらなくなってしまいます。
どうすれば購入予算を抑制しつつビットコインを確保できるでしょう?この21万という数字を見てピンときた人もいるかも知れません。
この数字、現在のMicroストラテジー社の保有量279,420ビットコインに近似しているんですね。
米政府によるMicroストラテジー買収という現実解
2024年11月10日現在、Microストラテジー社の時価総額は約664億ドルです。これはFRBの総資産69,670億ドルの1%にも満たない規模です。
政府による民間企業の買収は、実は前例のない話ではありません。
2008年の金融危機時には、世界最大級の保険・金融サービス企業でありながらサブプライム関連の保険で巨額損失を抱え経営危機に陥ったAIGの79.9%を政府が保有したことがあります。
また2009年には自動車産業危機でGMを一時国有化(政府出資比率60%)した実績があります。一時期はGMをもじって、Government Motor(政府自動車)などと言われてましたね。
つまり、米政府によるMicroストラテジー買収という選択肢も、あり得なくはないということですね。
興味深いのは、マイクロストラテジーの株価に含まれる大きな「プレミアム」です。
同社の保有するビットコインを時価評価すると約251.5億ドル。しかし、実際の時価総額は664億ドルと、約412.5億ドル(164%)ものプレミアムが付いています。
もちろん、この理由は同社が転換社債などでレバレッジを使ったビットコイン調達を行っているからですね。
ですが、このプレミアムの一部は、米国政府による買収の可能性を織り込んでいるとか、、、どうなんでしょうね?
アメリカは通貨発行権という優位性を行使して逃げ切りを図れる
さてここまではマイクロストラテジー社の買収による米国のビットコイン準備金戦略という、少し斬新な可能性について見てきました。
もちろん、上記のような荒唐無稽なプランが現実になるかは誰にも分かりません。
ですが、この構想の実現可能性を高めているのは、アメリカが持つ独自の優位性です。
それはほかでもなく、米国が世界基軸通貨であるドルの発行権を握っているという点です。
この機能は、米国の競合である中国やロシアには持ち得ない、アメリカ固有の強みとなっています。
例えば、特殊な債権を発行して、日本などの同盟国(米再保有額No.1!)に購入してもらうという選択肢も取ることができます。
日本は米国国債の最大保有国ですが、国内ではビットコインに対する見解は定まっていません。
そこで日本に対し、ビットコイン購入のための債券を発行し、値上がり益の一部を金利として還付するような商品設計をすることも米国なら可能でしょう。
過去の歴史を振り返っても、通貨発行益を握る国は移り変わっています。
米国も歴史の流れからは逃げられないことは認識しているでしょう。
ならば通貨発行権が使える間に使い、ビットコイン準備金を作り、逃げ切りで国益を確保する選択肢を残しておくのも、悪くはない考えでしょう。
つまり、米ビットコイン準備金戦略はアメリカの国益に合致する戦略になるということですね。
このように考えていくと、米国はビットコイン準備戦略を段階的かつ徐々に進めていくと考えておいたほうが現実的かもしれませんね。
まとめ
ここまで、米国のビットコイン準備構想とその実現手段としてのMicroストラテジー買収という可能性について見てきました。市場の反応を見る限り、この構想には一定の実現可能性が織り込まれているとも言えそうです。
最後に一つの懸念を書いておくなら、Microストラテジーの株価に含まれる164%という大きなプレミアムです。
このプレミアムには政府による買収期待も含まれているかもしれません。つまり、この期待が外れた場合、プレミアムの剥落により株価が大きく下落するリスクも考えられます。
では、私たちの立場でこの状況をどう活かすべきでしょうか?
答えはシンプルです。政府の動きに関係なく、ビットコインを直接保有し続けることでしょう。なぜなら:
- Microストラテジー株のプレミアムを支払うことがない
- 企業リスクや政策リスクを取る必要がない
- 「より儲かる方法」より「より不確実性を排除する」ほうが投資の本筋
着実にビットコインを積み立てていく戦略に、一部のゆらぎも必要ありませんね。
今週は以上です。引き続き、ハッピー・ビットコイン!
ココスタ
佐々木徹
次の記事
読者になる
一緒に新しい世界を探求していきましょう。
ディスカッション