Vol.302 政府が崩壊しても機能し続ける:ユタ州がBTCセルフカストディを認めた本当の理由(2025年3月17日)
2025年は3月に入ってからビットコインも冴えない動きが続いていますね。
このビットコインの弱気な動きに少し拍車をかけた可能性がある内容として、ユタ州議会で注目されていたビットコインの投資条項が削除されたこともあったのかもしれません。
参考:ユタ州でビットコインを準備資産とする法案(HB230)は、3月7日に上院で修正され、ビットコイン投資条項が削除された。財政リスクや規制懸念から反対派が優勢となり、市民の暗号資産利用保護に焦点を移した内容で可決。知事署名待ちで、準備金の夢は遠のいた。(Grokまとめ)
この出来事は一見、ネガティブに捉えられそうです。ただ筆者は逆にビットコインにとってはポジティブだったのではないかと考えました。
今回の記事では、その辺りを少し書いてみたいと思います。
ユタ州が認めたセルフカストディ法案は州の特性によるもの
さて今回、ユタ州で25年5月に施行される可能性が高くなった法案の内容を確認してみましょう。特に注目したいのは、セルフカストディを正式に認めている点です。
法案の「Section 2, Section 7-28-102」を見てみると、州や地方政府が以下のようなことは禁止できないって書いてあります:
- デジタル資産(つまりビットコインとか)を合法的な支払い手段として受け入れる自由
- 自分でウォレット(セルフホスティングやハードウェアウォレット)を使ってデジタル資産を保管する権利
つまり「ビットコインで払いたい」「自分で管理したい」という個人の自由を守る方向にシフトしたってことですね。
これ、すごくユタっぽいなって思うんです。
筆者は米国に駐在で4年ほどいたことがあるのですけれど、そのうち3年半はユタで過ごしたんですね。だから現地の特性が少しだけ分かるんです。
迫害から生まれた自立の精神
ユタ州を特徴づける大きな要因に、末日聖徒イエス・キリスト教会(LDS、通称モルモン教)との強い結びつきが挙げられます。
ユタ州の人口の約60~70%がモルモン教徒と言われており、特に州都のソルトレイクシティは末日聖徒イエス・キリスト教会の総本山として世界的に知られているんですね。
1830年にNY州で創設されたLDSは、当初から迫害されており、教徒は逃れ続け、現在のユタ州であるソルトレイク盆地(当時はメキシコ領)まで過酷な旅を経て辿り着いた経験があります。
その後も連邦政府とは緊張が続き、最終的にユタ州が米国に45番目の州として認められたのは、1896年になってからでした。
こうした時代背景があるため、ユタ州は「(米国からの)自立と自己依存」「政府からの独立性」といった自立の精神を持ちやすい特徴があるんですね。
それらは、教会の設計からも、如実に確認することができます。
モルモン教会の自立と「備え」の文化。
ユタ州にはたくさんのモルモン教会があります。そして、ほとんどの教会には巨大なパラボラアンテナが設置されています。

これらは通常時には教会の放送に使用されていますが、有事の際には独立した通信網として機能するように設計されています。
また教会は信者に対して、以下のようなアクションを推奨しています:
- 少なくとも3ヶ月分(理想的には1年分)の食糧と生活必需品の備蓄
- 緊急時に備えた財政的準備
- 実務的なスキルの習得
- 精神的・情緒的な自立
教会自体も巨大な食料保管施設(ビショップの倉庫)を所有し、危機に備えているんですね。
つまり、モルモン教会のネットワークは、仮に米国が破綻したり、通信網が遮断されたり、外部から攻撃を受けることがあったとしても、独立して機能し続けることを目指して設計されているのです。
迫害を受けて自立の精神が起動し、そして連邦政府が機能不全に陥ってもオペレーションが滞らない準備。。。
これ、まさにビットコインの「非中央集権」精神と同じルーツなんですね。
さらに記憶力の良い方は、世界で最初にビットコインをネット通販で取り入れた会社が Overstock.com だったことを覚えていらっしゃるかもしれません。
この会社も、ユタ州のソルトレイク創業なんです。
ビットコイン価値の中核である「非中央集権」という観点でみると、ユタ州は筋金入りなんです。
セルフカストディを法律で正式に認めるのは、ユタ州・オクラホマ州・エルサルバドル(国家)のみ
現時点で、ビットコインの自己保管権(セルフカストディ)を法律で明示的に認めている地域は非常に限られています。
米国のオクラホマ州とユタ州が最も明確にセルフカストディ権を法的に保護しており、国レベルではエルサルバドールがビットコインを法定通貨として認めることで間接的にセルフカストディを可能にしているだけなんですね。
多くの国では、暗号資産に関する法的枠組みは存在するものの、それらは主に取引所や暗号資産サービスプロバイダーを規制するものであり、個人のセルフカストディを明示的に保護する法律は整備されていない状況です。
世界的に見ると、セルフカストディは「禁止されていない」という消極的認識の段階にあるだけとも言えます。
そして積極的に権利として保護する法制度は、まだ始まったばかりといえるでしょう。
今後、ビットコインのセルフカストディへのニーズが高まってくることになれば、それを法律で明示的に保護する場所に資金が流れていくことは、容易に想像をすることができます。
そうした意味で、今後はセルフカストディを法案で認める州や国に注目が集まると考えられます。
私たちも、これらの情報にはアンテナを張っておく必要がありそうですね!
まとめ:非中央集権なユタに学ぶビットコインの本質
今回はユタ州の新しい法案を通じて、「セルフカストディ」が明示的に認められる重要性をお伝えしました。
ビットコイン投資条項は削除されましたが、個人が自分の意思でデジタル資産を保管・使用する権利が法的に認められたことは、実は大きな前進だと筆者は考えます。
ユタ州の歴史と文化を振り返ると、モルモン教会を中心とした「自立の精神」と「政府からの独立性」が根付いており、これがビットコインの「非中央集権」哲学と見事に共鳴していることがわかります。
「備え」の文化を持つユタ州がセルフカストディを法的に保護したことは、単なる偶然ではなく、本質的な価値観の一致だと言えるでしょう。
今週は以上です。引き続き、ハッピー・ビットコイン!
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