バイナンスやコインベースが取引所口座でステーキングサービスを始めているのはご存知の通りです。

これは、対象のコインを取引所の口座に置いておくだけで、毎月ステーキング報酬が振り込まれるという形になっています。

おもな銘柄に、TEZOSや、EOS、ATOM、KAVAなどがあります。

はたして、これは顧客からみて収益がえられるのでしょうか。自分でステークする場合とくらべてどうでしょうか?

代表的なATOMの事例を元に実態を分析してみます。

バイナンスで4割の手数料が抜かれていた

まず、バイナンス口座においておくと幾らの報酬がもらえるのか。

ATOMの場合、サイトでは5-7%(年)(変動する)がありました。

実際に私がATOMを預けてみたところ、実測値で、およそ6%の報酬(年換算)が毎月1回振り込まれるという形になりました。

これと、自分のウォレットからステーキングをした場合の報酬をくらべてみます。バイナンス口座にいれず、自分でステーキング行った場合の報酬ですが、

現在では、約10%の報酬になっています。これが本来のステーク報酬です。

一方でバイナンス口座の場合6%しかもらえないのですから、4割の手数料が抜かれているかたちになります。4割の手数料というのは、感覚的には非常に高いと感じますね。

これは妥当なのでしょうか?

機会費用のオプションプレミアムとして考える

まず、この40%の手数料を、オプションだと考えるとどうでしょうか。

オプションというのは、ATOMの場合は自分でステーキングしてしまうと、直ぐに取引することができません。ステーキングを解除してから21日間はコインをうごかせない「アンボンド」の期間が生じ、この間はコインが動かせないことにくわえて、ステーク報酬も貰うことができません。

一方で、バイナンスの場合は、4割中抜きされるものの、いつでも売買可能になります。

この機会費用を、一種のオプションと考えて、バイナンスの手数料をプレミアムと考えましょう。

短期ではむしろバイナンス口座のほうが得

現在ATOMの価格はおよそ3ドルです。この場合、毎月得られるはずの本来のステーク報酬は、2.5セント。バイナンス口座に預けた場合このうち1セントをオプションプレミアムとして支払うという計算になります。

もしATOMを短期で売買する場合は、プレミアムを払ったほうが得です。もし、ウォレットでステークしてしまうと、21日のアンボンド期間は報酬を得られません。

たとえばウォレットで、1ヶ月ステークして、その後アンボンドして21日後に売る場合、

ステーク報酬(1ヶ月分) 2.5セント

アンボンド期間(21日間無報酬)

たいして、バイナンス口座に入れて、1ヶ月と21日後に売る場合

報酬(1ヶ月と21日) 2.625セント

ということで、バイナンス口座においたほうが報酬も増え、さらにトレード機会も失わないということになります。

つまり、1ヶ月と21日以下のトレードであれば無条件でバイナンス。

それ以上の期間預ける場合は、バイナンスの手数料が機会損失に対するオプションプレミアムとして妥当かどうかを判断することになります。

取引所のビジネスの視点からステーキングサービスの収益性を検証する

さて、ここまでは顧客側の視点でかんがえました。

次は、取引所のビジネスとしての視点で考えてみます。このステーキングですが、バイナンスからみて収益はあがっているのでしょうか?

バイナンスが運営しているバリデータとして、「バイナンスステーキング」というホストが存在します。

現在、atom全発行量の5.8%(10,516,434)がバイナンスステーキングにステークされています。

おそらくバイナンスはコールド保管分のATOMをすべて、これにステーキングして、年10%の報酬を得ているはずです。

その数ですが、一般ユーザーの中にもこのホストにステーキングしているひとがいるため、それを省いてみると、

バイナンスのコールド分のステークは、

9,056,970 ATOMになります。

一方で、バイナンスのATOMのホットウォレットの残高をみてみます。

2,873,570 ATOM

です。これは顧客の入手金のために常時ホットとしておくものであり、ステーキングに回すことができないものです。しかしながらバイナンスはこのホットウォレット分にたいしてもステーク報酬を支払う必要が有ります。

ホットとコールド(ステーク)の比率は、31%ということになりました。

取引所の手数料分というのは、ホットウォレットへの引当分だった

つまり、バイナンスとしては、コールドとしてステーク出来ない、つまりステーキング報酬が入らない31%分のホットウォレットに対してもステーク報酬を支払うということになり、つまり、この分の穴埋めを、顧客への手数料として差し引いているということになるのでしょう。

ホット・コールド比率の31%と、実測値の40%手数料というのは、非常に近いものがあります。これを考えるとバイナンスガ実際に得ている本当の手数料は、差額分の9%ということになります。

現時点では収益へのインパクトは限定的

9%の収益を実際に計算してみると、

81000 ATOM 年で、

1ATOM 3ドルとしても240,000 ドルという収益になります。

今後、ATOMの預入が増えて、コールド比率が上がり、ホット部分をもっと少なくすることができば、バイナンス側の取り分が増えるか、もしくは顧客への手数料を少なくすることもできそうです。

いずれにしても、年に24万ドルでは、たいした商売にはなっていないということのようです。

つまり、完全に顧客サービスであり、取引所の保管中も顧客にステーク報酬を分けますよということで、預かり残高を増やしていくというための補完的なサービスである、というのが今のところの結論です。

まとめ

・ATOMのステーク報酬は自分でやる場合年10%

・バイナンスの取引所口座でのステーキングの手数料は約4割を手数料として取られる。

・高いか安いかは、機会費用にたいするオプションプレミアムと考えて判断する

・単純に考えても1ヶ月と21日以下のトレードあれば、バイナンスに預けておくほうが良い

・バイナンス側のステーキングによる収益性は高くなく、得られた報酬の殆どを顧客に配分している。

・4割の手数料は、ホットウォレット維持分とみてよい

・取引所口座におけるステーキングは、預かり高を増やすための顧客サービスという位置づけとみるのが妥当

(大石)