Vol.183 FTX発の信用不安は投機主導での売りへ ~ 先物市場の変化はビットコインETFへ資金を流入させるか?(2022年11月14日)
トレーダーによる、トレーダーのための取引所・・・それがFTXです。
FTX is a cryptocurrency exchange built by traders, for traders.
高邁な理想を掲げるとともに、ボラティリティ先物や自動取引ツールの提供など、ユニークな施策を次々に打ち出した同社は急速に利用者を獲得。
2020年からは競合他社が規制の網に勢いをそがれる中、新興勢力の強みを生かしBinaceに次ぐ2番手にまで上り詰めました。(BitMexは米国法逃れで創業者が告発され、また中国大手OKExは公安に逮捕され出金停止措置。いずれもFTXへ利用者が流出)
そんな上昇著しいFTXの破産ショックは、市場に計り知れないダメージを与えています。
FTX破綻で取引所からの出金が過去最大規模に
FTTトークンの下落に端を発したFTX破綻劇は、坂を転がるように進みました。
Binanceによる救済可能性は24時間で消失。他の取引所へも買収の打診が行われるも素通りし、最終的には米国でチャプター11の適用を申請済み。
この影響で同社に資産を預けていたレンディングのBlockFiも出金を停止。
今後もファンドや取引所などFTX社で運用していた会社が連鎖的に引き出しを停止する恐れを市場は警戒。一気に取引所からの出金が加速をしています。
以下はCryptoQuant社の統計。取引所からの出金量を7日平均した数字をみると、同社履歴の中で過去最大となっています。
https://cryptoquant.com より
今までは「取引所からの出金=現物の長期保有=ポジティブ」というのが一般的な評価でした。
それが今は「取引所からの出金=市場の連鎖倒産警戒=取り付け騒ぎの可能性上昇」となっています。
米国の中間選挙が終わり、金利上昇も一段落との期待感が市場に漂い始めた鼻先で炸裂したFTX事件。
涼しい顔で上昇する米株指数を眺めつつ急増する出庫は、ふたたびビットコインを下落専用機へとたたき落としてしまうのでしょうか?
まずは状況だけ確認しておきましょう。
FTX日本法人の預かり残高からみるXRP支持率の高さ
日本のFTX法人公式ツイートによれば、顧客資産は十分な金額が分別管理されているとのこと。
すでに日本円での返金は実行をされているとの報も見聞きします。ここから暗号通貨の返金も実行に移されるなら、顧客資金の分離を徹底した金融庁の評価は、一気にうなぎ登り確定でしょう。
もともとビットコインは、中央集権から離脱するための選択肢を原点としています。もし日本の顧客資金が中央集権たる金融庁の施策で救われるのなら、それは喜ぶべきこと。
ですがビットコインの成り立ちとは相反するのも事実。そう考えれば、まだ今の人類に本当の暗号通貨は早すぎるということなのでしょうか?
さてFTX社が公開した顧客預かり資産リスト。なかなか取引所がコイン別の預かり残高を公開することは無いので、1つの貴重な情報として数字を分析してみました。
参考にしたデータ:FTX日本 ~ 暗号資産の管理状況について(2022年11月11日現在)
https://help-jp.ftx.com/hc/ja/articles/12458835958681
表は左から順に、FTX日本のコイン別預かり残高・同コールドウォレット残高・余剰残高・余剰残高比率・各コインの円価格(2022年11月14日現在)、円建ての預かり残高額、預かり残高に占める占有率(残高比率)となります。
注目すべきは残高比率でしょうか。試しに残高比率の高いBTC/ETH/XRPに関して、市場全体のドミナンス(コインマーケットキャップ調べ)と比較してみました。
世界市場と比較すると、XRP残高が突出しているようですね。
先物主導で売り込まれるビットコイン
さてここからは、少しビットコインの市況を確認しておきましょう。
今の市場を見渡してみると、ビットコインは投機主導で売り込まれていることが分かります。
たとえばCMEビットコイン先物市場は、2017年12月に上場されてから初の事態に陥っています。
これまでのビットコイン先物では、将来価格の方が高い「コンタンゴ」が一般的でした。ところがビットコインが16,000ドルを割り込んだ11月9日以降、現在価格の方が高い「バックワーデーション」に切り替わっています。
カーソルを置いているのは11月11日は、ビットコインの期近が期先より160ドルほど高くなっています。
理由の1つは、ハイレバレッジな売り手の存在が挙げられそうです。下の図は代表的なハイレバ取引所であるByBit社の調達金利です。
マイナス金利、つまり売りポジションを保有する側が高金利を支払っている状態となっています。どのくらい高金利かというと、2020年3月17日に新型コロナでビットコインが4,000ドルを突き破って下落したときに次ぐレベルです。
ビットコインETFが現物より好まれることになる
さて仮に投機組のビットコイン売りが継続される場合、何が起こるのでしょうか?
一つ目の可能性は、単純に「売られすぎ」の解消で強烈な「買い戻し」が発生するというもの。
11月のFOMCを終えてから、米国の株価指数は上昇の一手となっています。
ビットコインと相関しやすい半導体指数も絶好調。もしもFTX事件に端を発した取り付け騒ぎが起きていなければ(たらればですが)、ビットコインは普通に買われる地合いへと移っていても、何の違和感もない環境となっています。
仮にどこかが破綻したFTXを救済するサプライズを持ち込むなら、反転上昇という選択肢も残っているのでしょうか?こちらは、たられば次第ですね。
もう一つの可能性は、SEC認可の北米ビットコインETFが現物より買われやすくなる・・・ということでしょうか。
北米でSECに認可されているビットコインのETFは、CME先物市場の期近ポジションを持ち続ける、いわゆる「仮想CME期近先物ロング限定保有ポジション」とも言い換えられる商品です。
仮にもし(IFの話です)、CMEの期近限月が期先より高い逆ざや状態が続くのであれば、現物よりビットコインETFの方が投資家に好まれる可能性があります。
たとえば11月11日のCMEでは、以下の値段でビットコイン先物が取引されています。https://www.cmegroup.com/markets/cryptocurrencies/bitcoin/bitcoin.settlements.html
- 22年11月限月 16,050ドル
- 22年12月限月 15,795ドル
仮にこの日、11月限月→12月限月へと買いを乗り換える(ロールオーバーといいます)場合は、以下の売買をすることになります。
○ 16,050ドルで11月限月1枚を売る
○ (同時に)15,795ドルで12月限月を買う
すると、高い11月を売って安い12月を買うわけですから、ビットコイン先物を1枚保有し続けるだけで、限月間の差額(この場合は255ドル)が手元に残ることになります。
もちろん、CMEのビットコイン先物でバックワーデーションが続くという(明日には消えるかもしれない)前提条件付きの話でもあり、税務コストもまったく考慮をしない机上の話です。
それでも、仮に逆ざやが延々と10ヶ月も続くことになるのであれば、ロングを保有するだけで2,500ドル以上のロール差益が手に入ることになります。
ポンコツ認定されていたはずのSEC推しビットコインETF。それが気づかない間に輝く人気商品へ変わるという珍事さえ起こりえます。
先物市場に変化が起きると、それくらい市場の力学が変わってしまう1つの事例として挙げてみました。以上、参考になりましたら幸いです。
引き続き、ハッピー・ビットコイン!
ココスタ
佐々木徹
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