Vol.185 マグマをためる米ドル逃避 vs. それでも重たいビットコイン(2022年11月28日)
2022年も気がつけば残り1ヶ月ですね。振り返ってみれば地政学リスクに始まり、地政学リスクで終わるのか?というところでしょうか。
さて市場を見ていると、いたるところで米ドル逃避の準備が進んでいます。その一方、待避先の候補となるビットコイン自体は、引き続き上値が重たい情勢。
相反する二つではありますが、根っこは単純なところでつながっています。そして最後にはビットコインへと資金が逃げざるを得ない状況も見て取れます。が、それでも今は頭が重い。
師走を前にして、2022年のビットコインが立っている足下を確認しておきましょう。
地の利(とビットコイン)を取りに行く中国
さてビットコインと言えばエルサルバドル。2021年にブケレ大統領はビットコインを法定通貨に採用するとぶち上げ、一気に時の人となりました。Twitterのフォロワー数は445万人に上り、その発言は常に耳目を集めます。
11月23日には、ビットコインを裏付けとした「ボルケーノ債権」法案の整備を同国の議会に提案。火山エネルギーで採掘されるビットコインを裏付けに資金調達するという世界観が、今の時勢で受け入れられるのかに注目があつまります。
さてエルサルバドルは2021年からビットコインの購入を開始します。結果、2022年11月時点で60million (85億円ほど)の含み損が出ているようです。
泣きっ面に蜂とはよく言ったもので、2022年1月には667 million EURO の返済が迫っています。もともと「ビットコインから手を引かないと資金は入れない」とIMFに脅され資金源が絶たれている同国。そんな資金源に苦しむ同国に手を伸ばしたのが中国。
11月8日の報道では、中国がエルサルバドルの海外借金を全量買い取るオファーをしたとのこと。中国の外務省スポークスマンは、あずかり知らぬとBloombergは報道しています。
https://finance.yahoo.com/news/el-salvador-says-china-offered-141627040.html
どちらが本当かは分かりませんが、気になる報道ですね。エルサルバドルの位置を地図で確認しておきましょう。
出典:外務省
アメリカと南米を結ぶ真ん中に位置しています。13デイズの映画で取り上げられたキューバ危機の舞台はエルサルバドルの東。
なお、キューバと聞くとロシアと思いがちではありますが、同国に最も強い影響を2020年時点で与えているのは、中国です(下図矢印の赤い国がキューバ・・・赤色は中国の影響が最多とされる国)
https://www.axios.com/2021/06/17/china-global-influence-map-us-powerful
仮に中国がエルサルバドルの借金を肩代わりしたとして、支払いできなくなれば港湾やなどが、借金のカタに取られることとなります。
そしてエルサルバドルを中国が押さえたときには、結果的に米国の南側を囲い込むような形となります。
エルサルバドルがボルケーノ債権で資金調達に成功し、火山エネルギーで稼働するマイニング設備が準備されるようなら、それらも(借金返済のために)中国に取られることとなります。
ですがボルケーノ債権を議会に提示したタイミングを見ても、債権を本気でやりきるというより、中国からの借入金利を安くするために「俺らは自分で資金調達できるんやで」とアピールしているように見えなくもありません。
同国の対外債務は、2022年7月時点で21Billionドル。1年前から3Billionほど増えていますから、年2割近い増加率ですね。
もともと中国は、米国の制裁を警戒し、米国債の購入金額を2022年の真ん中以降は抑えています。そのため手元に現金が余っている状態でもあり、エルサルバドルから返済が無事に行われれば高金利獲得(レートは不明)、行われなければ米国の真下に拠点を作れる。
とりあえず「どっちに転んでもOK」な情勢とも言えます。
参考までに中国の米国債保有額は、2022年8月→9月で38.2Billionドル減少していますから、エルサルバドルの借金を全額肩代わりするのも楽勝ですね。
それにしても、、、米国債を売却しまくっているのは、ほかでもない日本(79.6 Billion)です。
中国は制裁回避、日本はドル売り介入の原資。目的は違えど結果としては売り。
端から見れば、米国債保有の2大巨頭が協調して米国債を売り込んだように映るでしょう。
中銀の含み損も跳ね上がる
さて米国債が売り込まれたことで、中央銀行の含み損も強めに推移をしています。下のチャートは、米中銀の金利余剰・不足分が米財務省とやりとりされているグラフです。
今日現在は、前例のないほどマイナスに突っ込んでいます。あまりに金利が急速に上がりすぎたため、FEDの支払い金利が受領金利を超過してしまっている図になっています。
などと書いていたらニュースで日銀の含み損が報道されていました。
”日銀保有国債が8749億円の含み損に転落、異次元緩和下で初-上期決算”
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6446065
○ 米制裁で資金凍結されたくない国は米債を売る → 米金利は上がる
○ 日本にも金利上昇圧力がかかる → 円が売られる → 米国債を売ってドルを作り円買い介入 → 米国債は大いに売られる → 米金利は上がる
何をどうやっても米国債が売られるように(今は)できています。
中央銀行は利益目的での運営ではないため、含み損が出たからといって「こける」こともなければ、税金で穴埋めされる類いのものでもありません。
ただ、含み損が大きくなりすぎれば、準備通貨を増やして穴埋めする必要ができるわけで、その代償は「インフレ」ということになります。
高金利なインフレ局面で買われるのは、本来はビットコイン。つまり中銀の損失が膨らめば、ビットコインに資金が入ってくることもあるのでしょうか?
中銀が買いまくる無国籍通貨(ゴールド)
さて中国の米債離れが原因か、それとも米国一国主義にもほころびが見えてくると思われたのか、今は無国籍通貨のゴールドが買われています。
中銀の金購入量、第3四半期は過去最多を記録(REUTERS)
https://jp.reuters.com/article/gold-demand-wgc-idJPKBN2RR276
”世界の中央銀行による第3・四半期の金購入量は399トン(約200億ドル相当)と過去最多だった”
直前の第2四半期に何があったのでしょう?はい、制裁で正解です。
ロシア資産の凍結額計45兆円に 米欧や日本、侵攻停止へ経済圧力(Forbes 7月3日)
https://forbesjapan.com/articles/detail/48583
○ 制裁からの待避資金
○ 高金利・高インフレ
こう来れば、今までならビットコインに資金が流入しにきていました。ところが今のビットコインは頭が重たいままとなっています。
この背景はシンプルにまとめられそうですね。
中銀のバックアップ有無で分かれたクレディスイスとFTX
11月7日以降の暗号通貨市場低迷は、FTX破綻によるもの。同時期に危ういと言われていた投資銀行がクレディ・スイスです。
このクレディ・スイスは投資家からの資金返還要請に応えきれず、追加の資金注入が必要な情勢となりました。
この資金を獲得するために高金利債券を発行。その金利、なんと11年物で9%に達し、3Billionに対して7.5Billionの応札。
投資家としてみれば、「頼むからその高金利債券を買わせてください。3 Billionと言わず7.5Billionでも!」ということになります。
一方、破綻処理へ突き進むFTXの負債額は、およそ3.1 Billionと言われています。ほぼ同じ金額ですね。
Collapsed crypto exchange FTX owes top 50 creditors over $3 billion, new filing says(PUBLISHED MON, NOV 21 2022) https://www.cnbc.com/2022/11/21/collapsed-crypto-exchange-ftx-owes-top-50-creditors-3-billion-filing.html
では、クレディ・スイスとFTXの差が何かと言えば、最後には中銀が救済するか否かに付きたでしょう。
リーマンショックからのド不景気を経験した今の中銀が、クレディスイスを破綻させるわけがない。だから買い手がいなくても、政府が資金を出す。
そんな中銀が資金の出し手になる「安心感」が決定打となり、民間の投資家が殺到したということでしょう。
それでも重たいビットコイン
今のビットコインは、17,000上をマイナーの処分売りで押さえられ、下は15,000台でのショートが買い戻し・・・という展開を続けています。
こちらはハッシュレート。ビットコインが17,000を切ったところから急落を始めています。
17,000を下回れば、電気代もマイナスになるということでしょう。それにしても2022年のビットコインは、入り口からずっと「VIX20以下で売り」が続いています。
現在の足下も、微妙にVIX指数の直上を揺れています。
これで「下げ」が来なければ、今までと違う力学が働いてきているということになります。
期待して待ちたいところですが、頭の重さが続きそうでもあります。はやく独歩な上昇を見せてもらいたいものですね。
今週は以上です。引き続き、ハッピー・ビットコイン!
ココスタ
佐々木徹
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