Vol.196 崩落の前兆はインサイダーの財布に聞く(2023年2月21日)--- 2023年2月28日改訂
【お詫び】当レポート内利用しましたデータの一部に間違いがありました。「家賃」と記述した部分、正しくは「住宅価格」となります。心から、お詫び申し上げます。以下、本文を修正させていただきます(修正部分はイタリック書体で記述しています)
中国が動けば暗号通貨も動く
ビットコインは力強い上昇を見せていますね。この原因は、2月16日(木)に出た香港で個人に解放された暗号資産の売買規制の緩和(6月1日実施)報道によるものでしょう。
香港は中国本土の意図に強く左右される場所であり、市場としては「香港で許可される=中国でも許可される」と認識をすることになります。
米株指数が景気後退懸念から冴えない動きに終始するのとは、対照的な動きとなりました。
↑香港での暗号通貨許可報道で急騰するビットコイン&売られるSP500米株指数
香港での売買が許可される23年6月先物が急騰していることからも、影響の大きさが半端でないことを物語っています。
報道された日時も、ファンド解約45日ルールの締め日である2月15日の翌日。売り圧力が減るタイミングに(奇遇にも)重なり、タイムリーな上昇へとつながりました。
中国が動けば暗号通貨も動く。ビットコイン黎明期から繰り返されてきた鉄の法則は、鈍い光を放ち再度の降臨を果たしたようです。
Tether経由の資金流入も活発になっており、しばらくはビットコインにも「上昇トレンド」を続けてもらいたいところです。
米インフレは「終わらないフリして終わりかけ」
さて香港の動向に限らず、耐インフレ資産の性格を持つビットコインの動きは、米国中銀の動向に強く影響を受けます。
そして米中銀の行動指針を決める最大のデータがCPI、消費者物価指数です。
2月14日には最新の数字が発表されたのですが、なかなかインフレは沈静化からほど遠そうな内容となっています。
特に顕著なのは、住居費(Shelter)の項目です。この項目はCPI指数内で1/3を超える影響力を持っています。2022年12月のNYでは、所得に対する家賃支払い比率が68.5%(!)だと言いますから、そりゃ住居費は超重要ですね。
https://www.nytimes.com/2023/01/25/realestate/rent-burdened-american-households.html
さてこの超重要指標のShelterは継続的に底上げされています。他の指標は月によって上下に振れるのですが、この指数だけは前月比で0.7%±0.1%の上昇率。
↑ 前月比で0.7%±0.1%で上昇を続ける住居費(Shelter)
年間に換算したインフレ率も7.9%。歴史的に証明された人類のインフレ率をここでも再現しています。
参考:Vol.192 インフレーション8.0 ~ Fiat通貨が人類にバブル経済をもたらした(2023年1月25日)
た・だ・し、CPIの”Shelter”項目は、家賃の支払額を単純に集計している訳ではありません。持ち家住居に対しても「仮に賃貸したら○○ドル」と置き換え計算しています。
平たくいえば、本来の賃貸相場よりも変化が遅れて現れるということですね。このあたりは、米国の不動産情報を提供しているZillowが記事にしてくれています。
Why do the official indexes measuring rent inflation always lag behind ZORI?
https://www.zillow.com/research/rent-inflation-31602/
↑ CPIのシェルター項目は実際の賃貸相場から遅れて推移する(Zillowリサーチ)
上グラフ内のZORIは、Zillowが独自に算出した指標。こちらは賃貸のスポット市場なので、賃貸相場が下がれば数字も下がる、よりリアルタイムな指標ということができそうです。
もちろんCPI指標は長年の比較に耐えることを目的としているため、設計思想が別だということですね。
このZORI指数は以下のURLでデータを公開してくれています。https://www.zillow.com/research/data/
ページ下の方に行くと、グラフを選択することができます。「ZORI」のタブを選択し、Year over year に指定すれば、都市別の賃料前年同期比が出てきます。
本来は、このZORI指数で賃貸動向を分析したいのですが、こちらは歴史が新しく2015年3月以降の数字しかありません。
そこで当レポートでは、ビットコインと比較できる長期間のデータ(2001年以降)が利用できる指標として、Zillowの住宅物件指標を使い分析をしていきたいと思います。
州ごとの物件価格前年比を計算し、その前年比が月次でどのように推移しているかを確認。ぼーっと眺めていたとき、ハタと目に入ってきたことがあります。
それは、特定都市の物件価格動向が米株の天底とリンクしている・・・ということでした。もちろんバックテストしたところで将来の保証には何もならないのですが、都市の特性を考えると、「あー、なるほど~」と思ったことも事実。
ということで、ここからは「米株の動向がビットコインにも影響を与える」という前提が続くと仮定し、不動産市場から米株市場の変化を捉える考え方を追ってみたいと思います。
ドン下げ相場はインサイダーの財布に聞く
2001年以降の米株相場で、いわゆる「ドン下げ」と呼べそうな第一の候補は、2007年後半から始まったサブプライムな下落ではないでしょうか。
住宅市場の低格付けローンを投資家に分からないようミンチにして売りつけ、そしてめでたく住宅ローンの変動金利が上がったところで返済不可物件が増大しバブル崩壊。
最後はリーマン・ブラザーズの破綻で株価を地の底までたたき落とした歴史は、ビッグ・ショート(日本名では『マネー・ショート 華麗なる大逆転』)で映画化されマイケル・バリーを有名人へと押し上げました。
今ではツイ消し名人とされるバリー氏ですが、"売り”の腕には定評ありですね。
さて当時のSP500米株指数のチャートはこんな感じでした。
↑ ビッグショートの舞台となったサブプライムなSP500指数 https://finance.yahoo.com/
2007年5月が天井になっています。同時期、都市別の物件価格前年同期比を主要都市ごとに羅列したシートが以下。
前年同期比の物件価格(株価天井)
米株が天井を付けた2007年5月、NYとCAは2001年以降で初めて前年比物件価格マイナスへと転落をしていました。
ただ、もっと目を引いたのがワシントンDCの物件価格です。こちらは株価天井の2ヶ月前、2007年3月にはいち早く物件価格が前年比でマイナスへと転落しています。
では逆に株価が底打ちした2009年2月のシートを確認してみましょう。
前年同期比の都市別物件価格(株価底値)
オレンジ色は、2009年2月前後で物件価格前年比が最もマイナスを深掘りした月。赤のアンダーライン点線は、マイナス度合いが前月比より改善した月を表しています。
これを見ると、2009年3月以降の株価急回復に一番早く反応していたのは、ヒューストンテキサス。次がワシントンDCとなります。
あくまでビッグショートの舞台だけではありますが、どうもワシントンDCの物件価格前年同期比は、大きなヒントになりそうです。
ワシントンDCと言えば、いわずもがな米国の首都。米議会の本拠地。米国FRBの本部拠点です。
他地域よりもインサイダーな情報が手に入りやすい立地であることは間違いなく、従ってワシントンDC物件価格相場は、米株市場に先行するのかもしれません。
ワシントンDCの現在地
最後はワシントンDCの物件価格前年同期比をグラフにして貼っておきます。
2023年1月の前年同期比はプラス3.3%。マイナスではないものの、ずいぶん弱いですね。このまま推移すれば、3~5ヶ月ほどでマイナス圏へと転落しそうな気配もあります。
FEDウォッチャーでは、米金利も23年6月までは上がり続けるとの予測。DCの物件価格前年比が、23年6月でマイナスに転落するなら、ちょっと株価も冷や水がかけられるようになるかもしれません。
米株が押し下げられることになれば、さすがのビットコインも頭上は重たくなってきます。それまでに、さっさと高騰してほしいものですね。
ビットコインのスナップショット
最後はビットコインのオプション市場が織り込んでいる値幅の確認だけしておきましょう。
- BTC高値は26,500、安値は22,000
- ETH高値は1,800、安値は1,550
ビットコインには、まず26,000を突き抜けてもらいたいですね。
引き続き今週も、ハッピー・ビットコイン!
ココスタ
佐々木徹
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2023年2月28日の修正部分につきましては、以下のドキュメント内にハイライト記述しております。本文での修正が分かりづらいようでしたら、こちらも参照されてみてください(Google Documentにジャンプします)
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