Vol.214 ビットコインはETF化で現物がプレミアム化する~後編(2023年6月26日)
ロシアの民間軍事会社ワグネルがモスクワ攻撃を始めるかと思いきや,電撃の手打ち。今朝はワグネル代表のプリゴジン氏が、「ショイグ国防相や大富豪が自身の利益のために戦争を始めた」とコメントしたとか。
流転する情勢を見ながら、歴史を学んでいる人に聞いた「歴史学は文献史だ」というコメントを思い出しました。過去の歴史現場に立ち会った人々は生存していないため、私たちは残された文献を通じて歴史を理解するしかないという意味です。
ロシアの話題は現在進行形ですが、世の中で語られているストーリー(虚像)とリアルとが一致している保証がない点で、歴史と同じだなと感じました。
虚像とリアルが連続するという意味では、相場もまったく同じですね。数字の裏付けが虚像かリアルかなんてポジションを持ってしまえば何も関係ありません。
それでも自分の損益だけはリアルに動き続ける。ある意味で虚像の中のあるリアル。このあたりに相場が人を惹きつけるヒントがあるのでしょう。
さて前編ではBlackRockのETFが承認される前提で考えてきました。後編では逆に、SECがBlackRockの現物ETFを却下するかもしれない理由を考えてみたいと思います。そして最終的にはビットコインの現物にプレアムが付く可能性を考えてみます。
SECが現物型ビットコインETFを許可しない理由は信用創造できないから
もしSECはビットコインの現物型ETFを承認しないとすれば何が理由なのでしょう?おそらく可能性の一つは、信用創造ができないからです。
以下は信用創造の定義です(ご存じの方はスキップしてください)
信用創造は、金融システムにおいて信用や貸し出しを通じて新しい資金を創出する過程を指します。具体的には、銀行や金融機関が預金を受け入れ、その預金を元に融資や投資を行うこと。
銀行は預金の一部しか準備金として保持せず、預金以上の金額を貸し出しや投資の形で供給することができます。
ETFと信用創造に何の関係が?
現在の米国で許可されているビットコインETFうち、最大の資産残高を持つ銘柄は、2023年6月26日現在ProShares Bitcoin Strategy ETFとなります。ティッカー名はBito。
同社保有のETF資産残高は、6月23日時点で以下のとおりです。

CME先物市場で建てているポジションの評価額が1.07 Billion USD(a)となっています。
ビットコインCME先物市場のレバレッジは4倍ですから、必要な証拠金はポジション評価額の1/4。ざっくり0.25 Billion USDです。
一方、ETFを購入した顧客からは満額の資金を預かっています。となると余剰資金が出てくる…
結果、証拠金に入りきらなかった資金は、米国債の保有に回ることとなります(b)。金額にして0.45 Billion USD。
つまり、BITO(仮想通貨関連のETF)を購入した顧客の資金のほぼ半分は、実際には米国債の購入に使用されていることになります。
これは先物型のETFだからこそ可能な仕組みです。もしSEC(米国証券取引委員会)が米国債の買い手を探す圧力を受けていると仮定すると、SECがこれまで先物型のETFしか許可していなかった理由とも整合性が取れます。
6月24日にはSECが2倍レバレッジのビットコイン先物型ETFを許可しています。もうこれで決まりじゃないですかね?
今は中国が米国債の保有を怒濤の勢いで減らしています。新たな買い手が見つかるなら、TETHER だろうと暗号通貨先物ETFだろうと大歓迎。チリツモですね。
もちろん、米国債に資金が行くことはBITOの目論見書にすべて書かれています。でも、どれだけの客が実際に目論見書を読み、どれだけのコストが発生しているかを把握しているのでしょう?
実際は、ビットコイン現物をETF経由で買ったつもりが、知らない間にCME先物市場での買いポジションと米国債の購入に割り当てられているということではないでしょうか?
信用創造の定義は 「銀行は預金の一部しか準備金として保持せず、預金以上の金額を貸し出しや投資の形で供給することができます」でした。
これをETFに置き換えるなら、「ビットコイン先物ETF運用社は顧客預かり資金の一部しか証拠金として保持せず、証拠金を越える預かり資金を米国債の購入にあてることができる」となります。
しかし、現物保有型のビットコインETFでは米国債の購入はできません。顧客資産はすべてビットコインの購入や管理費用に充てられ、信用創造ができないのです。
もしもSECが現物保有型のビットコインETFを認めないとなれば、その理由は「米国債の買い手を作り出す」という信用創造ができないからかもしれません。
ビットコインの現物はプレミアムが付くことになる
さてビットコインのETFが先物・現物型に関係なく次々乱立し始めると、どうなるのでしょう?
たとえばGrayScale社のビットコインETFであるGBTCは、現物に対して激しく割安に取引をされています。
理由は以下のとおりです。(Bardまとめ+DeepL翻訳)
GBTCはビットコインを保有する投資信託だが、管理手数料やその他の経費もかかる。つまり、GBTC株式の価格は、GBTCが保有するビットコインの価値と常に等しいわけではない。
GBTCは流動性が低い。GBTCの取引量はビットコインほど多くありません。つまり、GBTC株の売買が難しく、ディスカウントにつながる可能性がある。
投資家はGBTCの将来について不透明だ。SECはまだビットコインETFを承認していないため、GBTCが現在の形態で運営を継続できるかどうかには不確実性がある。この不確実性もディスカウントにつながる可能性がある。
GBTCは現在、ビットコインの先物価格に基づいて価格設定されており、通常、スポット価格よりもわずかに低くなっています。この差により、GBTCとビットコインの間にディスカウントが生じる可能性があります。
償還リスク。多くの投資家がGBTC株を償還した場合、供給ショックが発生し、GBTC株の価格が下落する可能性がある。このリスクもGBTCとビットコインのディスカウントの一因となる。
もし将来的にビットコイン現物の購入規制が強化される場合、一部の人々には仮想ポジションを持つためにETFなどが唯一の選択肢となることが考えられます。
現状でもETFがディスカウントで取引されている以上、もしETFのみが選択肢となった場合、ビットコインの現物取引はETFと比較して高値で取引されることになるでしょう。
買えるうちにビットコイン現物を買っておく。値段の将来予測など出来るはずもないのだから、最初から定期で買う。なんならAndGoさんが提供している「つみたてとこ」など、取引所で自動的に買うツールを使う。
こういう自衛策も、必要になっていくのではないでしょうか。
今週は以上です。引き続き、ハッピー・ビットコイン!
ココスタ
佐々木徹
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