Vol.304 ビットコインで原油取引:米ドル覇権に挑むロシア(2025年3月31日)
こんにちは!
米ドルが徐々に覇権通貨の地位を失うための外堀が埋まり始め、ビットコインへの資金流入が市場で認められるのも時間の問題になりつつあります。
本記事では、原油取引における暗号通貨の利用拡大とその背景について詳しく解説してみたいと思います!
ロシア起点で原油決済に暗号通貨が使われ始める
2025年3月14日にロイターが報じたところによると、ロシアが、中国やインドとの原油取引において、西側諸国の制裁を回避するために暗号資産(仮想通貨)を利用しているとのこと。
具体的な仕組みは次の通りです:
1. 輸入国(中国・インド)が人民元で支払い
2. 仲介業者がビットコインに変換
3. ロシアがルーブルで受け取り
参考:ロシア、中国やインドとの原油取引に暗号資産利用か、西側諸国の制裁回避で(Yahooニュースより)
もともとロシアは2024年7月に、対外貿易の決済に自国で採掘したビットコインを使えるように法整備を整えています。
ですから今回の報道は、ロシアが粛々と準備を進めてきた「米ドル脱却」の一つが形になって現れたものと解釈することもできます。
2024年にはベネズエラも原油と燃料の輸出決済においてUSDTテザー1の利用を増やしていましたが、こちらはあくまでも米ドルの派生品です。
ところが今回のロシアは、ビットコインという、明らかに米ドルとは切り離された決済手段を中心に据えており、次元が違ってきたな・・・という感じでしょうか。
記事によれば、買い手は人民元支払い、売り手はルーブルで受け取り、その中間送金をビットコインを使った仲介業者が担うことになるそうです。
「結局、出口と入り口は法定通貨じゃん」となりそうですが、、、
最大のポイントは、「原油取引の出口と入り口を今まで接続していた米ドルがビットコインに置き換わり始めた」点にあります。
なんでペトロダラー契約を結んだ?
ここで少しだけドルの歴史を振り返っておきましょう。
1971年に米国のニクソン大統領は、それまで市場に約束していたドルと金との固定比率を取りやめることを宣言しました。
いわゆるニクソンショック(※それまでの金本位制を実質的に終わらせた政策転換)です。
金の裏付けを失った米ドルは、その信頼を維持するために1974年、サウジアラビアとの密約を結びます。
合意した内容は、サウジアラビアが石油をドル建てで販売し、そこで得た利益分のドル(ペトロダラー)を米国債に投資する「ペトロダラー・リサイクリング」システムです。
この巧妙な仕組みは:
1. サウジアラビアが石油をドル建てで販売
2. 獲得ドルを米国債に投資する
3. 米国が(国際資金をもとに)軍事支援を提供
という三角形で成り立っていました。
とはいえ、この合意の背景は少し複雑です。当時のサウジが現実的に脅威を感じていた相手はイスラエルだったんですね。
なぜなら合意前年の1973年、イスラエルは第4次中東戦争で、圧倒的な軍事力を見せつけていました。
そしてその軍事力は、800機の作戦機や600輌の戦車を供与した、他ならぬ米国の支援によって成し遂げられたものでした。
これに対抗するサウジは戦争の真っ最中、イスラエルに奇襲を仕掛けたエジプトとシリアを支援する形で、OPEC(※石油輸出国機構、主要産油国の連合体)を使った石油の生産削減と禁輸を実行します。
いわゆるオイルショックですね。
日本でも店頭からトイレットペーパーが消えたりと大騒ぎになったアレです。
これで世界中が「原油がなくなったら大変なことになる」と実感するきっかけとなりました。
結果、オイルショックで石油の戦略的な価値が上がり、その上昇した価値を見込んだ米国はサウジとのペトロダラー契約でドルの優位性を確保することに成功したのです。
ロシアとウクライナの停戦はすぐには実現しない・・・
ここまでは以下の振り返りをしてきました。
・ビットコインがロシア産の原油取引に使われ始めたこと
・米ドルはペトロダラー契約でニクソンショック後も価値を維持してきた
ただ「ロシアがビットコイン使うのも一時的じゃない?」という考え方もあると思います。
これに関しては、本年3月25日に発行された「2025年 米国情報機関 年次脅威評価」が参考になりそうです。
2025 Annual Threat Assessment of the U.S. Intelligence Community
この文章内19ページにはプーチン氏とウクライナのゼレンスキー大統領を指し、「しかし、現時点で両指導者はおそらく、長期化する戦争のリスクは満足のいかない和解案よりも小さいと見ている」とのコメントがあります。
プーチン氏の権力基盤は強く、選挙戦サイクルに縛られる米国と比較して「長引かせた方が有利」な構造になっています。
ロシアの米ドル迂回戦略は、この長期戦を見据えたものであり、腰を据えてやり切る覚悟でいると考えた方が現実的かもしれません。(参考にAIまとめを貼っておきますね)

↑ 図1、ロシアを中心とした2025年米国情報機関脅威評価のインフォグラフィック(Claude作成)
ロシア起点でペトロダラーは弱体化する
こうなってくると、金本位制が崩壊した後に米ドルの価値を担保してきたペトロダラー体制も、弱体化を始めることになります。
もちろん、ロシア一国の変化だけで全部変わるってこともないでしょう。
でもロシアの石油生産量は、1,108万バレルに上り、世界シェアで11.5%あるんですね(図2参照)
そして世界シェア2位はペトロダラー密約を米国と結んだサウジアラビアなわけですが、財務相は非ドル通貨での取引に「オープン」と発言(2023年)しています。
推計ではありますが、JPモルガンは2023年、世界の石油取引の約20%が非ドル通貨で行われたと述べているようです。
参考:Exploring the Options: Arab Oil Exporters and the US Dollar
こうしてみると、原油の決済を米ドル以外へとシフトする動きは長期的かつ本腰を入れて模索をされていることがわかります。
ビットコインでの決済は、その「脱ドル」活動の一つと位置付けることができそうですね。

まとめ:
今回は、従来のペトロダラー体制に変化の兆しが見え始めていることを書いてみました。
ビットコインが原油取引に進出した現象は、単なる技術的進化ではなく、次の時代の兆候と言えそうです。
簡単にポイントをまとめておきますね。
- ドル離れの加速:原油取引の非ドル化は一過性の現象ではなく、すでに約20%が非ドル通貨で行われている
- ビットコインの役割拡大:ビットコインが国際決済の媒介通貨としての地位を確立しつつあり、原油取引という最も重要な国際商品取引にも活用され始めている
- 長期的な展望:ロシアのような資源大国が本格的に脱ドル戦略を推進することで、ドル基軸の国際通貨体制に徐々に変化が生じることが予想される
原油市場におけるビットコインの活用は、まだ始まったばかりですが、今後この動きが拡大すれば、暗号資産市場に大きな資金流入をもたらす可能性を秘めています。
世界経済の根幹を支える通貨システムの変化は、一朝一夕には起こりませんが、確実に変化の兆しが見え始めています。
ビットコインへの長期的な投資の覚悟を持つ上でも、こうした構造的な変化を把握しておくことは、有用だと考えます。
今週は以上です。
引き続き、、ハッピー・ビットコイン!
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