6/16の記事でWeb5がどのような構想なのかについて説明させていただきました。

ジャック・ドーシーらが提唱する「Web5.0」とは
Web5構想を解説 先月、Jack Dorsey率いるTBDが”Web5”という構想をスライドにまとめ、物議を醸しました。その挑発的なネーミングやWeb3に批判的なJack Dorseyのスタンスからイーサリアム周辺の反発を招いたり、あるいは逆に「何のことかさっぱりわからん」という反応も少なくありませんでした。 出典:TBD 本稿では”Web5”がどのような目的をもった構想で、どのような仕組みなのかを具体例を交えて解説します。 現在のWEBの問題 Web3にしろWeb5にしろ、ウェブを変えるという主張は「現在のWebに問題がある」という批判でもあります。 Web3の定義があまりはっきりしない問題はありますが、Gavin WoodがWeb3.0を提唱した2014年当時はスノーデン氏によって米諜報機関NSAの世界的な大規模盗聴が暴露された直後ということもあり、データを1箇所に集めないこと、仮名的なIDを使ってプライバシーを守れること、分散的なネットワーク構造によって簡単に検閲できないことなど、中央集権的なウェブの有様が監視や検閲につながっていることに対する反発という側面が強い

ウェブ上のアイデンティティ(人格)をユーザーが取り戻し、アプリとのデータのやり取りを規格化するWeb5で実現を期待したいこのと1つに、異なるWebアプリケーションやサービス間のComposabilityが挙げられます。

今日はWebのComposabilityがどういうことか、そしてどのように実現するとインパクトがあるのか、いくつかの例を考えてみましょう。

WEBのCOMPOSABILITYとは?

単純な英単語としてのComposabilityは「Compose(構成)+ability(可能性」から「複数のものを組み合わせることができる性質」というものでが、仮想通貨業界でComposabilityという単語を聞く機会は主にDefi界隈にあります。

オンチェーンのスマートコントラクトに基づくDefiでは、スマートコントラクトから別のスマートコントラクトを呼び出すことによって異なるアプリケーションが連動し、その組み合わせによって新しい機能を実現したり、ユーザー体験を簡略化することができます。これを指してComposabilityという言葉が使われます。

では、WebのComposabilityとは何を指すものでしょうか?1つの例としては、多くのサイトが対応している「SNSアカウントによるログイン」や「パブリックAPI機能」なんかもWebのComposabilityと言えると思います。認証機能を他のサービスにアウトソーシングする以外にも当該サービスで所有しているデータを参照する許可を得ることができる場合は様々な二次的なサービスを作ることができます。

個人開発者レベルで作るアプリなんかは特にこういう機能をフル活用してニッチなものを少ない労力で実現している印象です。

しかし、現在のWebではアプリケーションや規格ごとにAPIやデータ構造が異なるため、1つ1つへの対応に骨が折れたり、そもそも実現したい機能に必要な情報が得られない場合があります。例えば、ツイッターの「いいね」をメモ代わりに使うことがありますが、自分のツイッターの「いいね」を便利に管理するサービスを作るのは少し難しいのです。

Web5では、各サービスで使用するデータの大部分をそもそも自己保有していたり、あるいは利用履歴等について各サービスからVC (検証可能な証明書)を取得することができることによって、異なるサービスから構成される新しいサービスを作ることがより簡単になると考えられます。

無論、構成される側のサービスがある程度のWeb5対応を済ませないと不可能なので、ネットワーク効果が大きくなる段階まで進むことができないというリスクはあります。

応用例1:オンライン広告代理店とユーザーの力関係の変化

現在のウェブを代表するものの1つがターゲティング広告とトラッキングです。トラッキング(特にプロファイリング)に関してはプライバシーの侵害であると指摘される一方で、ターゲティング広告自体は広告主・ユーザーどちらにとっても利益を生んでいると考えられます。

広告を嫌悪する意見の多くは適切にターゲティングされていない広告や、邪魔な位置に挿入されるものについてという印象があります。少なくとも自分は好奇心などから広告を意図的にクリックすることが案外あります。

Googleなどウェブの広告代理店にとって、ターゲティングに使用するユーザーデータが重要な資源なのは間違いありません。Web5ではユーザーデータをトラッキングに使用するのに明示的に許可を求め、それに対価を払うモデルがより簡単に実現します。広告代理店がユーザーデータについて仕入れをするイメージで、ターゲティングの精度向上によって広告の単価が向上すればユーザーへの金銭的インセンティブを含めて成り立ちます。

例えば現在もGoogle Opinion Rewardsというアプリがあって、Googleに位置情報や検索履歴とアクティビティ、ユーザー属性等を関連付けるためのアンケートに回答する対価としてPlayストアの残高がもらえますが、これがより一般的になる世界観です。広告はウェブでのマネタイズ方法としてなくならないでしょうが、よりWin-Winな状態に近づけるかもしれません。

応用例2:様々なサービスの利用実績が1つのアイデンティティの下に収まり、マーケティングや信用に活用される

さて、現在のWebでは原則的に各アプリケーション内でのユーザーの行動履歴などは分断されており、外部から参照できません。例えばとあるゲームで世界トップレベルの実力であってもツイッターからその実績を参照することができなかったり、Q&Aサイトで多くの回答が評価されていても、それを根拠に優遇されることはありません。

Web5ではそうとは限りません。例えばYouTubeの登録者数が1万人以上いる人には無料でプロダクトを提供するとか、いくつかのサービスのうちどれかでアーリーアダプターであった人限定でベータ版に参加できるなど、他のサービスの利用実績を元にアクセス制御や優遇を行うことが簡単にできます。

アフィリエイトなんかもVCと組み合わせやすそうですね。

アクセス制御や優遇の発展形として、様々なサイトでの活動を元にその人の人格や行動パターンが読み取れることで、その「人格」を元に信用力を測るというユースケースも実現するかもしれません。

実際の人格に関連付けることなく、オンラインの匿名の人格ですべて完結するのが理想ですが、これはすべてのユースケースに求めるには厳しい条件でしょう。ただ、実人格への関連付けが濫用・悪用されると怖いので、ユーザーや開発者のリテラシー向上を含め、実現には非常に時間がかかりそうです。

まとめ

このようにWeb5のComposabilityには強いネットワーク効果が働いてくる可能性が秘められています。上記の応用例以外にも、複数のチャットサービスをまとめたインターフェースや管理ツールのようなもの、ホームページやダッシュボードのようなものがたくさん出てくると考えられます。

ビジネス上の旨味の観点から囲い込みが発生する以上、囲い込みからユーザーを解放するWeb5の普及にはユーザー側に訴求する必要があると感じています。メジャーなウェブアプリが数社でも対応してComposabilityがもたらす利便性がユーザーに提示できれば普及が進むことに期待したいです。